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Vol.9 サーキットの狼

少年ジャンプの全盛期

1975年から79年まで週刊少年ジャンプで連載されていた漫画作品です。
主人公の風吹裕矢が愛車ロータスヨーロッパを駆り、ライバルとの戦いを通して成長していくという物語。
70年代の「スーパーカーブーム」の火付け役となった大ヒット作で、コミックスは累計1700万部を記録しています。

当時の少年ジャンプといえば他にも「ドーベルマン刑事」、「東大一直線」、「リングにかけろ」、「キン肉マン」、「コブラ」などなど数え切れないほど人気作が目白押しでした。76年には「こち亀」も連載を開始しています。
そんな中でも社会現象にまで発展したこの作品にはやはりひときわ強い思い出が残っています。

ところでPUFFYの「サーキットの娘(97年)」はもちろんこの作品のパロディですが、当時ぼくは同い年である奥田民生氏に「あ、うまくやったな」とおもったものです。

クルマへの思い

作者の池沢さとし(いまは池沢早人師)によると「ロータスヨーロッパに乗っていたらこどもたちの反応がすごかった。それがこの作品のきっかけ」とのことですが、ぼくも含め当時のこどもたちにとって自動車(特にスポーツカー)には並々ならぬ憧れがありました。

高度経済成長によってマイカーブームが起こり、70年代に入ると自動車メーカーは性能競争を始めます。
モータースポーツを通して技術力を上げるとともに、その「進化」をイメージとして打ち出すことで市場に強く訴求します。
生活も豊かになり個性や差別化を求め始めた消費者層はこれに反応し「自動車趣味」がステータスを得ることになります。
移動手段であった「クルマ」にちょっとした性能アップという付加価値をもたせた「スポーツカー」が現れ、これに若者たちは夢中になります。当然その「お兄さん達」に憧れる当時の少年たちの心もつかむことになります。

サーキットの狼ではクルマは実際に存在するものが登場します。
ライバル早瀬左近のポルシェカレラRS(後に930ターボ)、悪役ピーターソンのトヨタ2000GT、その他もろもろの個性的な登場人物がフェラーリやランボルギーニで続々と現れます。
こういった「図鑑的要素」は少年のマニアごころをくすぐりますし、しかもそこにはジャンプ伝統のバトル要素もあったわけです。
手の届かない高価なクルマたちは70年代の「消費志向」における頂点といえるものでもあり、手の届かないスーパーカーへの憧憬もヒットの要因だったはずです。これもまた時代の為せる事だったのかもしれません。

実際の自動車以外にも実在のレーサーや場所、ブランドなども描かれていて、これもリアリティ演出につながっていたように思います。
ま、これは巨人の星と同じ手法ですね。

次回はスーパーカーブームについてです。


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