見出し画像

Vo.11 ルパン三世


再放送による成功

原作マンガが1967年開始されて以降、2018年のTVアニメ第5シリーズまで半世紀にわたって幅広い層から人気を得ている作品です。映画、ゲーム、CM、パチンコに至るまでありとあらゆるジャンルでヒットを飛ばす鉄板コンテンツです。

その中でもやはりここで注目したいのはTVシリーズの第一作目、いわゆる「1stシリーズ」と言われる作品です。
’71年(昭和46年)10月に放送が開始され、半年の間に23話が放送されました。

当時、TVアニメは「作れば売れる」という時代だったにも関わらず、この「大人向けアニメ」という切り口はあまりにも斬新すぎたようで商業的には大失敗となります。
ところが初放映が失敗であったが故に放映権が安くなった結果、穴うめ番組的な位置づけで頻繁に再放送が繰り返されることなります。
この再放送ラッシュによって新しすぎたコンセプトも徐々に理解されるようになり、数年後になってようやくヒット作品というポジションを得ます。
第1作の放送終了から5年を経て第二作目が制作され、’79年の映画「カリオストロの城」を経て人気はますます高まって行くことになります。

若きクリエーター達のパワー

初放映で失敗したものの再放送で火がつく、というのは名作アニメにありがちなもの。後にガンダムやエヴァンゲリオンも似たような道を通っています。
ハングリーで優秀なクリエイターが生み出す作品はどうしても「とがった」ものになりがちで、市場に受け入れられるためにある程度の時間が必要になります。
つまりビジネスとしては成り立ちづらいものなのですが、やはりこういった開拓者たちによる「新たなジャンルの創造」というものは文化のレベルアップには欠かせないものだなと、今更ながら感じます。

ルパン三世1stシリーズも当時の新進気鋭のクリエーターたちが関わっています。そのフロンティアたちの意気込みと気力がとてもよく現れた名作です。

特に後半(視聴率が上がらないために路線変更がはじまった頃)の宮崎駿・高畑勲コンビによる演出はアニメの歴史を語る上で外せないものです。当時の未熟な技術力に加え、売れない作品をなんとかしたいという混乱状態の悪あがきもあり、細かな部分のクオリティは決して高いものではありません。登場人物の顔がシーンのたびに違ったりする作画のばらつきも多く見られますし、仕上げも雑です。
それでもすべてのキャラクターは生き生きとしていますし物語のテンポも抜群です。その後のシリーズとはレベルが違う。

最近Netflixで全話を通して観てみましたが、峰不二子の可愛らしさには粗探しなんか忘れて見とれてしまいました。
前半のワイルドな美女という設定と後半(宮崎・高畑時代)のショートボブ期ではかなり顔も性格も変わってきていて、通してみれば不自然な部分も多々あります。それでもずっと「フジコちゃん」というキャラクターがブレていないのは見事です。人物描写のお手本です。

「作品のチカラ」というものには技術的完成度より大切なものがあるのだとつくづく思います。
作者達の思いとその時代背景とのシンクロ、これこそが70年代作品を楽しむためのツボなんだな、と改めて感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?