自省録

無人島に何か一つ持っていくとしたら?という質問対して『自省録』と言わしめるような名著中の名著。

過去これだけのリアリティのある文を読んだことはない。

第16代ローマ皇帝で五賢帝の一人、マルクス・アウレリウス・アントニヌスが戦の合間を縫って書いたとされる。

誰かに読ませるためには書いていないので、反省点や自分を鼓舞するような言葉が脈絡もなく詰め込まれている。

ページをめくるにつれ、同じような内容を何度も書いていることが伺える。これは同じような失敗を何度もしてしまったことを意味し、人間味というリアリティをも感じさせてくれる。

文の構成については考えられていないため、多少読みにくいが、度々マルクスが書いていたことは次の4点か。(かなり意訳ですが)

・死を恐れる必要はない

・他人のミスには寛容であるべき

・不可抗力に悩まないこと

・理性を重要視すること

時空を超えて現代を生きる人間のモチベーションを高めてくれるような名言もびっしり詰まっている。

「あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。」(岩波文庫)

しかしマルクスの魅力に引き込まれたのは別の一文。

神々と運命にもたらしてもらったものとして、

「あれほど従順な、あれほど優しい、あれほど飾り気のない女性を妻に持ったこと」

と記載している。

命をかけて戦に行っている旦那のメモからこんな文章出てきたら、泣きませんか?

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