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走り続ける心 #短編小説

これはフィクションです。


高校2年の秋、陽斗は陸上部のエースとして、全国大会を目指していた。彼は速さだけでなく、チームをまとめるリーダーシップも兼ね備えていた。一方、里奈は新入部員で、まだ自分のペースを探している段階だった。しかし、彼女の持ち前の明るさと努力はすぐにチームに溶け込み、陽斗の目にも留まった。


二人は練習を重ねるうちに、お互いに惹かれ合っていく。陽斗は里奈の無邪気な笑顔に癒され、里奈は陽斗の真剣な眼差しに心を奪われた。しかし、陽斗には長年付き合っている彼女がおり、里奈もまた、他の部員との間に微妙な空気が流れていた。


ある日、陽斗は大事なレースで転倒し、怪我をしてしまう。彼は自分の夢とチームの期待を背負っていたため、この事故は彼にとって大きな打撃だった。里奈は陽斗を支え、彼が再び走れるように励ました。二人の間には、言葉以上の深い絆が生まれていた。


復帰した陽斗は、里奈の支えがあったからこそ、再びトラックに立てたことを感じていた。そして、全国大会の日、里奈は陽斗を一心に応援した。陽斗は自己ベストを更新し、見事に優勝を飾った。彼はゴール後、里奈の方を見て、感謝の意を込めた笑顔を送った。


二人はそれぞれの葛藤を乗り越え、お互いを支え合うことで、真の友情と恋を育んでいった。陸上部は彼らにとって、ただの部活動以上の意味を持つようになったのだ。



全国大会の興奮も冷めやらぬ中、陽斗と里奈は、お互いの心に秘めた感情に向き合う時が来たことを悟った。陽斗は彼女との関係を清算し、里奈もまた、他の部員との間にあった曖昧な関係を終わらせた。二人は真剣な話し合いを持ち、お互いの未来について語り合った。


陽斗は「俺たちは、走ることで強くなれた。でも、本当に大切なのは、心が通じ合うことだ」と里奈に告げた。里奈も「私たちの走りは、お互いを知るきっかけになった。これからは、一緒に新しい道を走っていきたい」と応えた。


春が訪れ、二人は新たなシーズンを迎えた。陽斗は陸上部のキャプテンとして、部員たちを引っ張り、里奈は新人選手として、その才能を開花させていった。二人は互いに競い合いながらも、深い信頼関係で結ばれていた。


卒業式の日、陽斗と里奈は手を取り合い、校門をくぐった。二人の前には、無限の可能性が広がっていた。陸上部での経験は、彼らにとってかけがえのない宝物となり、これからの人生の礎となることだろう。


そして、二人は約束した。どんなに遠く離れても、心はいつも一緒に走り続けると。陽斗と里奈の物語は、ここで一旦終わりを告げるが、彼らの走りはまだまだ続いていくのだった。


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