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桜色の約束 #短編小説

春の風が、桜の花びらを舞い上げる。高校2年生のユウキは、校庭の桜の木の下で、幼なじみのアイコを待っていた。彼女との約束は、毎年この時期に桜の下で会うことだった。


「ごめん、待った?」アイコが駆け寄ってきた。彼女の頬は赤く、目はキラキラと輝いていた。


「ううん、大丈夫だよ。」ユウキは微笑んだ。二人は桜の木の下で、お弁当を広げた。


「ねえ、ユウキ。私、この春からダンス部に入ることにしたの。」アイコは照れくさそうに言った。


「えっ、本当?すごいじゃん!」ユウキは驚いた。アイコはいつも控えめで、自分を表現することが苦手だったからだ。


「うん、でも不安で...。」アイコの声は小さくなった。


「大丈夫、アイコならできるよ。応援してるからね。」ユウキは彼女の手を握った。アイコは嬉しそうに微笑んだ。


お弁当を食べ終えると、二人は桜の花びらを眺めながら、将来の夢について語り合った。ユウキは写真家になること、アイコはダンスで世界を回ること。それぞれの夢が、桜色に染まる空に響いた。


「約束しよう。」ユウキは真剣な表情で言った。「お互いの夢が叶ったら、またここで会おう。」


「うん、約束!」アイコは力強く頷いた。


桜の季節は短い。しかし、二人の約束は永遠に続く。高校生活の中で、ユウキとアイコはそれぞれの道を歩み始めた。時には困難に直面し、時には喜びを分かち合った。


そして、数年後。二人は再び桜の木の下で出会った。ユウキは世界中の美しい風景を撮影し、アイコはダンスで人々を魅了していた。


「やったね、アイコ。」ユウキは優しい笑顔で言った。


「ユウキもだよ。」アイコは目を輝かせて答えた。


桜の花びらが舞い落ちる中、二人は新たな約束を交わした。これからも、夢を追い続けるという約束だ。しかし、それだけではなかった。二人の間には、言葉にならない感情が芽生えていた。


大学生になったユウキは、写真展を開くまでに成長していた。一方のアイコも、ダンスコンテストで賞を獲得し、その才能を認められていた。忙しい日々の中でも、二人は互いを思いやり、支え合っていた。


ある日、ユウキはアイコを再び桜の木の下に招待した。桜の季節はまだ少し先だったが、ユウキには伝えたいことがあった。


「アイコ、ずっと言えなかったけど…」ユウキは緊張していた。「僕は、アイコのことが好きだよ。」


アイコは驚いた表情を見せたが、すぐに優しい笑顔に変わった。「私も、ユウキのことがずっと好きだった。」


二人は互いに抱きしめ合い、桜の木の下で初めてのキスを交わした。それは甘く、そして少し酸っぱい、青春の味だった。


時間が経つにつれ、ユウキとアイコの関係は深まっていった。二人はお互いの夢を追いながら、一緒に新しい未来を築いていくことを決意した。


桜の季節が再び訪れた時、ユウキはアイコにプロポーズした。アイコは涙を流しながら「はい」と答えた。二人の約束は、永遠の愛へと変わった。

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