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【レポート】ゆるトレ「 LFAの訪問支援の今」

LFAでは、主に経済的困窮に起因して、本来子どもたちの健やかな育ちに必須である「つながり」「学びの環境」「育まれる環境」を喪失している状況にある子どもたちに、学習支援や居場所づくりなどいくつかの支援を行っています。

3つの喪失

今回は、その支援のうちの一つ、2020年からスタートしている「訪問支援」について、ソーシャルワーカーの櫻井が「ゆるトレ」と題して主催した勉強会の内容を一部ご紹介します!

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勉強会には、LFAの現場で学習支援や居場所づくりに携わる職員や政策提言・資金調達などバックオフィスの職員まで、また他の子ども支援団体の方も加わり、総勢29名が参加し、「訪問支援ではどんなことをしているのか?」「大切にしていること」などについて話を聞きました。

<訪問支援の概要>
学校やLFAの拠点に行くことが難しい、例えば引きこもり傾向の強い子や周囲の大人への信頼感を失っているような子どもを訪問し、子どものニーズに沿って、一緒にゲームをしたり、就労支援を行ったり、多種多様な時間の過ごし方を行う。必要に応じて、自治体のサービスや他の支援団体に紹介することもある。
訪問の頻度は、子どもたちの状態に合わせて週1から月1まで様々。

<あるお子さんの変容>
現在18才のAさんは、小学校低学年より勉強についていくことができず授業中は常に寝ているような状態だった。高学年になるにつれて対人関係にも難しさを感じるようになり、その頃から学校に行けなくなった。進路が未決定のまま中学を卒業してからは、家でゲームをしたりYoutubeを観て過ごしていた。
2年以上の訪問支援を通して、少しずつ関係構築をしながら、本人の困り感と「自分はどうなりたいか?」について対話を重ねた。訪問当初は趣味の話をする程度だったが、一緒に自分のなりたい姿を描き、目標を立てられるまでになった。

Aさんの目標

1)勉強を頑張ること
国語はひらがな・カタカナからスタートし、2ヶ月かけて書けるようになり、また2ヶ月かけて小学一年生の漢字を習得した。算数は足し算・引き算からスタートし、九九も難しい状況だったが、本人の頑張りで現在はわり算に取り組むまでになった。

2)新しい相談先を見つけること
訪問支援の卒業(LFAは原則的に6-18才の子どもを対象としているとしているため)に向けて、Aさんが住む自治体の若者相談へつなげた。現在は若者相談の担当者と一対一で面談もできるようになった。
訪問支援が終了した後は、親族の手伝いをしながら、何か資格を取りたいと考えている。

ソーシャルワーカーからみても、Aさんは目標達成に向けて本当によく頑張っていたと感じていたが、本人が目標を立ててからの半年を振り返り、「これで頑張ってるっていったら本当に頑張っている人に失礼。もっと頑張りたい。」という更に前向きな発言が聞かれた。
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今回勉強会に参加して感じたのは、ソーシャルワーカーが、子どもの尊厳と本人の「こうなりたい」をとても大切にしていることです。
この勉強会を開くこともAさんに伝え、どこまで話をして良いか細部まで確認していたし、何か動き出す時はいつも「どうしたい?」という問いかけがあり、それについて考えることを通して本人が困り感にきちんと向き合い、導いた答えでした。
もう一つが、「訪問支援」の位置付けが曖昧であるがゆえの難しさと可能性の広がりです。
訪問支援は「入り口」と捉えられることもあれば「出口」と捉えられることもある。関係づくりのとっかかりとして訪問するケースもあれば、他の様々なアプローチを試してみた結果、どれも難しく、最後の砦として訪問するパターンもある。
支援を行う側からすれば、曖昧が故に難しさを感じることもあるということでしたが、一律の支援ではなく、子どもの声を聞き、その子に必要なことをその子に合わせて届けることができる、そこに大きな可能性を秘めていると感じました。