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(#49)部分断裂した回旋腱板の診断と治療


是非こんな方に読んでほしい

この論文は、肩関節の回旋腱板損傷に関わる医療従事者、特に整形外科医や理学療法士、肩関節の障害やリハビリテーションに携わる専門家に向けられています。また、肩の痛みや可動域の制限を経験している患者を治療する臨床医にも有用です。部分的な回旋腱板損傷に対する診断や治療法の選択に関心がある医師に役立つ内容です。


論文内の肯定的な意見

  • 肩関節鏡は、部分的な回旋腱板損傷の診断と治療において有用である。

  • 保存的治療が部分的な断裂に対しても効果がある場合が多い。

  • アルソコープを用いた部分的な腱板断裂の治療は、短期的には75%の患者に対して満足のいく結果をもたらしている。


論文内の肯定的な意見

  • 部分的な断裂の治療には長期的なデータが不足しており、結果の予測が困難。

  • 保存的治療で改善しない症例では、追加の手術が必要になる場合がある。



論文の要約

Background

回旋腱板の断裂は、加齢や外傷によって進行することが多く、部分断裂は特に初期段階で見られることがあります(DePalma A.F., 1950;Lohr J.F. et al., 1987)。部分断裂は、関節面や滑液包面、腱内部に生じる可能性があり、その診断には画像診断や関節鏡が用いられます。本研究の目的は、部分的な回旋腱板断裂の診断と治療に関する文献をレビューし、現在の診断方法と治療法について報告することです。


【過去の報告】
回旋腱板の部分断裂は、特に高齢者に多く見られ、加齢に伴い断裂の頻度とサイズが増加することが報告されています。96人の肩関節標本を調査したところ、部分断裂の発生率は37%であり、特に50代から60代での発生率が高いとされています。(DePalma A.F., 1950)

306例の回旋腱板標本を調査した結果、32%に部分断裂が見られ、そのうち19.9%が全断裂に進行していたことが報告されています。50代から60代にかけて部分断裂の発生率が急増し、70歳以上のグループでは全断裂の発生率が最も高かったとされています。(Lohr J.F., Uhthoff H.K., 1987)

249の肩関節標本を調査したところ、部分断裂が33例(13%)に見られ、そのうち滑液包面の断裂は6例(2.4%)、関節面の断裂は8例(3.6%)、腱内部の断裂は18例(7.2%)であったことが報告されています。(Yamanaka K et al.,1986)


Method

・対象
回旋腱板の慢性的なインピンジメント症候群を持つ患者130名を対象とし、そのうち20例が部分断裂を持つと診断されました。

・診断方法
関節鏡や超音波検査、MRIを用いて部分断裂の位置や深さを評価しました。関節鏡は、腱板の関節面と滑液包面の両方を検査するのに有効でした。

・治療方法
主な治療方法として、アルソコープによるデブリードマン(壊死組織の除去)と、必要に応じて肩峰下除圧術(ASD)を行いました。症状が改善しない場合や、断裂が大きい場合は、開放手術も併用されました。


Results

・断裂の種類と頻度
130例の患者のうち、42例(32%)が部分断裂または全断裂を持っていました。特に部分断裂は20例(15%)に見られ、その内訳は関節面に12例、滑液包面に7例、両方に1例が存在しました。これにより、部分断裂の60%が関節面に、40%が滑液包面に発生していることが確認されました。

・治療結果
部分断裂に対する関節鏡手術の短期的な成功率は75%で、痛みの軽減と運動機能の改善が報告されました。ただし、25%の患者は追加の手術が必要となり、そのうち2例では回旋腱板の開放修復術が行われました。結果として、短期的な成功率は75%でしたが、5例で再手術が必要となり、最終的に満足度が56%から91%の範囲となりました。全体的な短期的な結果は満足のいくものでしたが、長期的な予後についてはさらなる調査が必要です。


Conculusion

部分的な回旋腱板断裂の診断には、関節鏡が最も効果的なツールであり、超音波やMRIも補助的に役立つことが確認されました。治療法としては、保存的治療やデブリードマンが有効ですが、断裂が進行した場合や改善が見られない場合には、開放手術が必要になることがあります。今後の研究では、長期的な治療結果を追跡する必要があり、部分断裂に対するより効果的な治療法の確立が求められます。


限界点

  • 部分断裂に対する治療の長期的な効果に関するデータが不足している。

  • 超音波やMRIによる診断には限界があり、結果の解釈には技術者の経験が影響する。


読者が得られるポイント

  • 関節鏡は部分断裂の診断と治療において非常に有効なツールである。

  • 保存的治療が一部の患者に効果を示すが、改善が見られない場合は手術が推奨される。

  • 部分断裂の位置と深さに応じて、治療方針を柔軟に選択する必要がある。



ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。

論文情報
Ellman H. Diagnosis and treatment of incomplete rotator cuff tears. Clin Orthop Relat Res. 1990;254:64-74.

引用文献

DePalma A.F. Surgery of the Shoulder. Philadelphia: J.B. Lippincott, 1950.

Lohr J.F., Uhthoff H.K. The pathogenesis of degenerative rotator cuff tears. Orthop Trans. 1987;11:237.

Yamanaka K., Fukuda H. Pathological studies of the supraspinatus tendon with reference to incomplete thickness tears. Proc 3rd International Conference on Surgery of the Shoulder, 1986.



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