病気になって考えた④ 僕が失ったものはなにもない

僕は23歳で脳腫瘍を宣言され、一年間の休学を余儀なくされた。2021年の1月から入院して、急性期、リハビリ病院を経て、9月に退院。大学院修士2年生は休学することになり、退院後も約半年実家で療養していた。

入院中は不思議とネガティブな気持ちになることはなかった。
「どうしてもっと早く病院を受診しなかったんだろう」
「どうして低血圧と決めつけて病院に行かなかったんだろう」

そういうネガティブなことは不思議と考えなかった。だってもう起きてしまったことなのだから、悔やんでも仕方がない。病院で寝ているときも意外と自分がポジティブなことに驚いた。

一番つらかったのは手術後、気管切開で喋れなくなったこと、口から食事ができなくなったことだ。

いままで食事にまったく興味がなかったため「食事なんて点滴でいいのに」とすら思っていた。そんな自分を殴ってやりたい。

でもしばらく食事を禁止されたおかげで、食事に興味が湧いた。好きなものが食べれることがどれほど幸せなことなのか、それに気づいた。

リハビリ病院に入院して2ヶ月後くらい、歩けるようになって(たまに失神するけど)自分の病気を振り返ってみたことがある。

病気のせいで、食事が取れなくなった。昔みたいに元気に動けなくなった。お風呂に入れなくなった。バランス感覚が悪くなった。

でもよく考えてみると

リハビリのおかげで食事を取れるようになった。食事のありがたみに気づいた。昔みたいに元気に遊び回ることはできないけど、友達とゆっくり散歩するようになった。バランス感覚は悪いけど、友達に掴まる必要があるから距離が近くなった。

ほかにも

元カノに連絡する口実ができた。
生きていることに感謝するようになった
そしてなにより命を大切にすることができるようになった。

なんだ、意外と病気が僕から奪っていったものは少ない。それより病気が気づかせてくれたことのほうがよっぽど多い。

病気のせいで失ったものはなにもないんだ。

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