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新しい薬を創るの裏側 患者さん編

今日は少しつめたく感じられるかもしれない文章です。
最初にまとめを書きます。
1.治験はまだ効果が決定していない状態を患者さんに試すことです。
2.発症間もなく、軽症の方が選ばれることが多い。
3.治療は計画通り行われ、検査受診を協力する必要がある。
4.薬には根本的な治療と進行をゆっくりにする薬と両方あります。

新しい薬ができたとき、それを試しに使用する患者さんが必要です。
ワールドワイドな時代、日本だけでなく、アジア、中国、ヨーロッパで新しい薬を同じ計画で試みに使用することがあります。

これを治験と言います。

効果が期待される新しい薬、しかも今まで治療法がなかった疾患、病気についての新しい薬ができたと言えば、その病気で辛い思いをしている方はぜひ試してみたいと思うでしょう。

それが、多少危険だとしても。治ると言われれば余計にそう思うでしょう。

治験に選ばれるためには、他の疾患など合併症がないほうが有利なのです。
対象の疾患そのものは軽症で例えば脳卒中後、癌がある、糖尿病、心臓びゅなどの合併症がない人が選ばれます。その方が、解析がしやすい。効果がわかりやすいのです。
認知症が進んだ人や寝たきりの人も選ばれるのはふさわしくないとされる場合が多いのです。

新しい薬の効果を正しく評価分析するためには決められた計画(プロトコール)を全う出来て、評価できる人でなければ治験には参加できません。

リハビリテーション科医師としては進行する疾患をできるだけ維持したいと思って訓練や生活指導を行っています。
効く薬がないのでリハビリテーション治療だけが行われることがあります。それでも、だんだん体が動かなくなってくる患者さん。
新しい薬が開発されたときにはすぐに使えるように良い体の機能を保つことも、リハビリテーション治療の一つの目的です

ある患者さんの例をお伝えしたいと思います。
Aさんの病気は治療薬がなかったのですが、リハビリテーションに参加することはとても熱心でした。
新しい薬の治験が始まることになり、そのために遠方の病院に受診に行くことになりました。
ところが、選にもれたのです。
大変がっかりされました。
それからも病気は進行していきます。
今はリハビリテーション訓練の中でもロボットを使った希少疾患のみに許可される治療があります。
その治療をおすすめしたところ、『そのリハビリをしても治らないんでしょう。治る治療をしたいんです。どうして治験に加われなかったのか…』とのお返事でした。
Aさんは治る治療を希望していたのです。
でも、その治験薬も治る薬でもないことはわかっていました。進行を遅らせる薬なんです。

認知症の薬もそうですが、進行を遅らせると説明され、治るのとは違います。
患者さんやご家族は良くそこのところを理解しがたいようで、丁寧な説明が必要です。

さて、患者さん側からするとすべての人に治療を受けさせてほしいと考えられるかもしれません。
でも治験である以上、条件に合った人だけが対象になり、その後も定期的に受診や検査など協力していただくことになります。そして、治療の結果は詳細に分析され報告されます。
また、新しい薬が一般に使用されるようになっても、軽症の方のみという条件が付いていることもあります。

さて、リハビリテーション科医医師から見た新しい薬を創るの裏側。
いかがでしたか?

新しい病気がはやると新しい治療が待ち望まれますが、治らない病気は新しい病気だけではありません。
まだ、治療法が見つからない疾患と一緒に生きている方をレスペクトします。今、この瞬間を大切に。

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