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「呪い」について

磯野真穂さんのセミナーでメアリダグラスの「汚わいと禁忌」を読みました。
未開の人々ばかりでなく現代社会に残る呪いや穢れは触れてはいけない神聖なものと私は理解しました。

絶つ松

山形に引っ越してから4,5年のころ、地域にも病院にもなじむ前。
病院への通勤に思わぬ相棒が加わりました。
以前は長く私の勤めていた病院に入院していた近所のじい様、A氏です。
A氏とは挨拶程度の間ですが、月に一度通院をしていることがわかり、その日になると私の家のガレージの前で待っています。
ご一緒にどうぞと誘うと、後方座席に乗り込んで、道案内をしてくれます(私も毎日通っているけど)
その道すがら、曰くのある神社(祠)とそのわきに生えている松のことを必ず話してます。
当地の言葉はわかりにくいのですが「絶つ松」の説明は以下のようでした。
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ヒトと別れたいと思ったら、この道を通りなさい。
別れたいと言わなくてもいい。
通るだけでいいのです。
何も言う必要はない。
ただ、通りなさい。
***************
A氏にとって、別れる理由とか画策は必要ないというのがポイントだったのか、毎回繰り返して教えてくれました。
病院まで行くと、A氏は正面玄関から受付行って朝一番の患者さんになることが楽しみだったようです。
帰りはバス停まで歩いて、1時間に1本しかないバスで帰っていました。

松と祠の前の道路はどういうわけか今は、閉鎖されていて通れなくなっています。
不思議なことに他の人は誰もこの話を聞いたことがないそうです。


目印の松を通るたびに、嫌な人がいても大丈夫、この前を一緒に通れば縁が切れると思うと気持ちが軽くなります。
ちなみにA氏はすぐに別れられるとは言わなかったので、ヒトいつかこの世を去るということを示していたのかもしれませんね。
すでにA氏はお空の人になりましたが、その松を見るたびに
「何も言わなくても効果がある」と教えてくれたことを思いだします。



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