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エフハリストが覚えられない

Ευχαριστώ
(発音:エフハリスト)
「ありがとう」の意。

6月にツアーでギリシャ旅行に行った。そこで個人的に興味深いことがあった。
ギリシャ語でのありがとう、すなわち「エフハリスト」というフレーズを、わたし以外のツアー参加者が全然覚えられなかったのである。

彼らは覚える気はあった。わたしよりもあった。
あるマダムは、「ホテルについてからの1時間の自由時間、ずっとGoogleでギリシャ語の『ありがとう』の発音を聞いていた。なのにもう忘れちゃった……なんだっけ……」と仰っていた。

海外旅行に行くのなら、「こんにちは」「ありがとう」のふたつは最低限現地語で言えるようになっておきたいと思う人が多いだろう。

だが、たまにこういことがある。そのフレーズに馴染みがなさすぎてなかなか覚えられない、口から出てこないということが。

ツアーで一緒だった人のうち、帰国日までに「エフハリスト」を習得しさらりと言えるようになったのは少数だった。

ギリシャ語でこんにちはを指す言葉はいくつかあるが、そのひとつが「カリメーラ(καλημέρα)」だ。

面白いことに、エフハリストが覚えられなかったツアー参加者のほとんどがこの「カリメーラ」はすぐに覚え、使いこなすことができるようになったのである。
(ちなみにギリシャ語の挨拶はカタカナ発音でも十分通じる)

カリメーラは覚えられて、エフハリストは覚えられない。どちらも初めて触れた言葉であることには変わりないのに。

そのことを不思議だなあと、帰りのターキッシュエアライン便の中で考えていた。

お盆休みに帰省し、母にこの話をした。母は「カリメーラは覚えられるけどエフハリストは覚えられないの、ものすごくよくわかる」とのことだった。

母曰く、「カリメーラ」に似た言葉を我々日本人はたくさん知っているとのことだった。カルメン、カラメル、カリメロといったような。
なので、それらの既知の言葉とカリメーラをどこかの回路で繋ぐことで、カリメーラをすぐ習得できたのではないかということだった。

そして、母が言うには「エフハリスト」に似た言葉は我々はなかなか知らない。「エフハリスト」を連想させる既知の語彙を持っていない。全く未知の言葉を覚えるのは、それがワンフレーズであっても難しいものである。恐らく慣れるしかないのだろうが、旅行では慣れる前に帰国日が来てしまう。

そういえば、「エフハリスト」をすぐ覚えたわたしにはもともと「聖ハリストス」という語彙があった。

母に「エフハリスト」と「カリメーラ」を教えた翌日、母もまた「カリメーラ」は覚えていたが、「エフハリスト」のことは忘れていた。聖ハリストスでもなんでも良いが、これに似た既知の語彙を持っていない人には「エフハリスト」は鬼門であるらしい。

#わたしの旅行記

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