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TOEIC525を取った帰国子女が、TOEIC900を取るまでの体験記

最近まわりの人たちにTOEICを布教している。着々と布教に成功しており楽しい。

わたしは今はTOEIC900台を安定して取っているアメリカ帰りの帰国子女だが、初めて受けたときのスコアは、平均点程度かなんなら平均よりやや下の525であった、という話を友達にしたら、「それをもっと早く言えよ!」と言われたので、書く。

なぜわたしが初回のテストで525だったことが他人にとって重要なのかわからなかったが、友達曰く、とにかくそれが重要らしいので書く。

わたしのTOEIC遍歴

初回(大学1-2年)750
2回目(大学3年、就活生)745
3回目(社会人2年目)890
4回目(社会人2年目)900
以降900台を取り続けている

TOEIC525→900体験記

帰国子女なのにTOEIC525をとり、まわりを困惑させた大学生時代

初回TOEIC受験は大学1-2年だったと思う。小手試しのつもりだったので、勉強はせずに挑んだ。

目標スコア:なし(あくまで小手試し、今の自分が何点なのか知りたいだけのため)
勉強方法:なし

英語力に関係がありそうな当時のわたしのスペックは以下である。

①帰国子女。アメリカに0歳〜小学1年までいた。現地のキンダーガーテン(保育園)、プレスクール(幼稚園)に通っていた。

②センター試験(当時はまだ共通テストではなかった)の英語は満点。

③東京外国語大学、早稲田大学文学部等に合格。

④大学では、ネイティブ講師によるアカデミックリーディング、アカデミックライティングの講義を受け、どちらも最高評価のA+を受ける。

なかなか高いスペックではないかと自分でも思う。が、こんなスペックが揃っていても、TOEIC初回は525であった。

まず、①の帰国子女について。
帰国子女と聞くと、条件反射のように「ということは、英語がペラペラであるはずだ」と思ってしまう日本生まれ日本育ちの人は少なくないと感じている。

TOEICは、知っている人は知っているだろうが、ビジネス英語の試験である。

小学1年生のあなたが、下のビジネス日本語能力テストを受けて、好成績を残せそうかを考えてほしい。

ビジネス日本語能力テスト サンプル問題
https://www.kanken.or.jp/bjt/sample/sample03.html

無理ちゃうか??
6歳児に人材派遣の法律に関する問い解かせるの、無理ちゃうか???
リストラ、派遣人材、派遣子会社の概念を理解できている6歳児は稀だろう。しかも文章も小難しい。大人が読んでも小難しいくらいだ。
TOEICにも同じことが言える。

なので、小学生までアメリカに住んでいたからといって、TOEICのハイスコアに直結するかというと、しない。

ノー勉でTOEICに挑んでいきなりハイスコアを取れるのは、いうまでもなく「ビジネス英語を使っている人」、つまりは英語で仕事をしている人だろう。
幼少期をアメリカで過ごしたからといって、ノー勉で急にTOEICを受けて一発でハイスコアを取れるか、というと取れない場合が多いと思う。取れる人も中にはいるよ、という程度だ。

②③④について。
センターでほぼ満点、東京外語大の英語試験も突破、ネイティブによるアカデミックイングリッシュすらもA+なのに、なぜTOEICは平均点程度なのか?という疑問についてだ。

これは当時のわたしにとっては疑問でもなんでもなく、当然の帰結であった。が、まわりにはなぜかびっくりされたり困惑されたりしたので、ここで理由を書く。

これもひとえに「TOEICがビジネス英語の試験であるから」に尽きる。

②③④でいい成績を持っていたのは、「学生のわたしが、それまで学校で習う英語の勉強を頑張っていたから」に過ぎない。そして、ビジネス英語は勉強したことがなかったので、TOEICは平均点程度であった、というだけだ。

ちなみにわたしはポジティブなので、「ビジネス英語どころかビジネスもやったことない大学生なのに、ノー勉で平均点が取れるなんて、なかなかイケてるのでは?✌️」とハッピーになっていたくらいである。

ちなみに、中学での英語の成績も、常に良好だったわけではなかった。
現在形、過去形、未来形の時制が入り乱れたときに、「時間とは?時制とは?我々はどこの時点を生きているのか?」と哲学的な混乱を起こし、混乱しているうちに中間テストがやってきて平均点を取った。それまでの成績は良好であったため、先生に「体調でも悪いのか?悩み事があるのか?」と本気で心配された。

日本に帰国したばかりの帰国子女が、学校の英語の試験でなんと平均点も取れなかった、というのは、実は少なくない話である。

例えば4択問題では、「……いやこれどっちでも良くない?どっちでも通じるじゃん」という2択がたくさんあったりする。

「後続の単語が母音で始まる場合は、theは【ジ】と発音する」なんて、日本に帰ってきてから初めて聞いたルールだ。実際に、わたしもアメリカ人に「日本ではこう習う」と紹介したところ、「何それ!?初めて聞いた!」と言われた。

英語をペラペラ喋っていた人よりも、その試験への対策をしっかりやった人の方が高得点を取るのだ。
ネイティブが高得点を取れない英語試験を日本の子供たちにやらせて意味があるのか、という議論もある。個人的には意味があると思う。また機会があれば、そう思う理由を書く。

履歴書の見栄えのためにTOEIC745を取った就活生時代

大学3年で就活を始めた。わたしは早稲田大学に在籍しており、どこで聞いたのかは忘れたが、「早慶卒ならTOEIC730以下は履歴書に書かないほうがいい。なぜなら、早慶の英語入試はTOEIC730程度の難易度だからだ。TOEIC730以下では、大学時代英語を勉強していなかったことがバレる」と聞き、とりあえず730を目指すことにした。

ちなみに、今思えば早慶英語はTOEIC730程度の難易度、という説そのものが意味不明だ。さっきも言ったように、入試はアカデミック、TOEICはビジネスで、使われる単語すらそれぞれ違うし……。だから大学受験用の単語帳、TOEIC用の単語帳がそれぞれあるのだ。

目標スコア:730
勉強方法:大学でTOEIC対策講座を受講する、TOEIC730目指す人向けのテキストをやる

大学でTOEICオタクの先生によるTOEIC対策講座が開かれていたため、それを受講した。
この講座のいいところは、「受講期間中にTOEICを受験し、スコアが上がると、自動的にA以上の成績がつく」ところであった。恐らくその先生がそういうルールを独自に作っていたのだと思う。

TOEICは受験料も安くなく、試験時間も長い全体的にめんどくさい試験であるため、「TOEICの勉強はしたけど、TOEICは受けてない」という謎の人がたくさん生まれる。
謎の人にならないために、受験のモチベーションを保ってくれる装置としてその講座を受験した。

自習では、TOEIC730向けの問題集を買って、それを解いた。特にこだわりはなく、生協だか新宿の大きい本屋だかで目が合ったテキストを買った。

そしてTOEIC講座を受けて3ヶ月、受講期間のおよそ半分が経った頃、満を期してTOEICを受験した。スコアは745、無事目標スコアをクリアしたので、わたしの挑戦は終わった。講座は無事A+の成績をもらった。

TOEIC860で金が貰えるだと!?やります!!の社会人2年目、TOEICのめり込み時代

新卒で入った会社は、TOEIC860を取ると報奨金30万をくれるという規程があった。やらないわけがない。
というわけで、数年ぶりにTOEICをやることにした。

目標スコア:900
勉強方法:スタディーサプリTOEIC対策コースを受講する、金のフレーズ単語帳と公式問題集をやる

目標スコアを860とせずに900とした理由だが、900のほうがキリがいいからだ。それ以外は特にない。

TOEICは、実は「どのくらいの勉強時間で、どれくらいスコアが伸びる」という情報が公式から提供されているありがたい試験である。いたずらに難しかったり、その時々で難易度がまちまちでスコアアップに運が必要なテストではない。

出典:Oxford University Press『A Teacher’s Guide to TOEIC® Listening and Reading Test Preparing Your Students for Success』P.6

これは、オックスフォード大学出版が出している、TOEIC講師向けのテキストに載っている、TOEIC受験者の勉強時間の目安表である。

わたしは当時のスコアがだいたい750だったので、850を目指すなら275時間の勉強が目安として必要、ということになる。わたしは900を目指していたので、もちろんもっと必要だ。少なくとも300時間はいるだろう。

300時間勉強しなければならないのはわかった、では何ヶ月勉強するか?を考えなければならない。

当時のわたしは、基本的に7-19時の12時間は、仕事や通勤時間で拘束されていた。睡眠時間を7時間確保するとして、5時間が最大自由時間だ。

1日5時間勉強できるなら、2ヶ月で300時間に届く。が、最大自由時間の5時間は何もTOEICだけに使えるわけではない。食事やお風呂の時間もこの5時間の中から捻出しないといけない。

3ヶ月なら、1日3時間程度だ。3時間程度ならなんとかなりそうだと思ったので、3ヶ月間毎日3時間勉強することにした。昼休みで1時間、仕事が終わった後2時間だ。

勉強は、基本的にスタディーサプリのTOEICコースを受講していた。
スタディーサプリのTOEICコースは、これも会社から受講料が出るので選んだのだが、これがものすごく良かった。どう良かったのかは別の記事で書いた覚えがあるのでここでは書かないが、とにかく良かった。
もしわたしがまたTOEICの勉強をせっせとやらなければならなくなったら、自前で受講料を払ってでもスタディーサプリTOEICをやる。

TOEICは、ほぼ毎月試験が開催されている。
300時間勉強してから受けるよりも、勉強途中でも受験して、900には届かなくてもスコアアップを可視化できたほうがやる気も出るだろう。ということで、TOEICの勉強を開始して1ヶ月、勉強時間にしておよそ100時間程度の段階でTOEICを受験した。

勉強時間からして800に乗れば万々歳だな、くらいの気持ちだったが、なんといきなり890が取れた。スタディーサプリのTOEIC対策がわたしによく合っていたのだろう。

これで報奨金30万円を得た。しかしもともと目標スコアは900だったので、900を取るまでTOEIC生活を続行することにした。

そしてその1ヶ月後、無事900を得た。
帰国子女の名に恥じぬスコアを得て、さすがに「え!?帰国子女なのに!?」と謎に困惑されることもなくなり、ここでわたしのTOEIC生活は終了した。

ちなみにここで調子に乗って「990満点目指そうかな」とも思ったが、950までならまだしも、950以上になるとかなり運の要素が強くなるので、満点を目指すのはやめた。満点は英語が得意な人ではなく、TOEICを極めしTOEICオタクだけが到達できる場所だ。
ちなみに、教材で使った単語帳は、満点を取り続けているTOEICオタクの頂点に立つTOEICオタク、TOEICを極めし者が作った単語帳だ。その分野のオタクの智慧を借りよう。

その後 TOEIC相談に乗ってきて思うこと

今も気が向いたらTOEICを受けている。勉強は特にしていない。多少の上がり下がりはあるものの、軒並み900台だ。

たまにTOEICを頑張りたい、もしくは頑張っているがスコアが上がらない、という相談に乗ることがある。

ほぼすべて勉強時間不足だ。本人に対しても、率直にそう言っている。
さっきのオックスフォード大学出版のテキストの目安表を思い出してほしい。100スコア上げるのにだいたい200時間の勉強時間が必要だ。

だが、スコアが上がらないと言ってくる人は、試験前の1ヶ月毎日1時間勉強した(つまり60時間)のに全然スコアが上がらない、みたいなことを言ってくる。

なんなら「毎日勉強したのにスコアが一向に上がらない、自分は英語に向いていない、頭が悪い」とまで妄想を膨らせている人もたくさんいた。勉強時間が圧倒的に足りないのだから、向いてるも向いてないも判断できない。
さらにいえば、ネイティブの中には頭が良い人も悪い人もいるが、みんなネイティブとして英語を話せていることも思い出してほしい。
蓄積時間が重要なのだ。

さらに、初回受験で決して悪くないスコアである600を取っておきながら、「まわりの友達は800とかの人が多い。600の人なんて見たことがない。自分はバカに違いない、自分が嫌になる」とか謎のことを言っている人もいた。

意味がわからない。すべて意味がわからない悩みだ。公式サイトを見よう。公式が言っている勉強時間を勉強しよう。

公式サイトを見れば、平均点やスコアの分布がわかる。
平均点は600前後であること、800以上のお友達がまわりに多いとしても受験者の中ではとても少ないことがわかるだろう。

オックスフォード大学出版のテキストの勉強時間目安表を見れば、1ヶ月毎日1時間すなわち60時間勉強したところで、何スコア上がるかすら書いていないことに気づくだろう。つまり、60時間では、そもそも勉強時間が少なすぎて、上がるとも下がるとも現状維持とも言えない、判断不可、ということなのだ。
目安表における、いちばん少ない数字が200だ。最低200時間勉強しないと、スコアに有意な変化が起きるようなインパクトがない。
悩むのは200時間勉強してからにしよう。200時間勉強しない限りは、なんともいえない。スコアが上がらないのも不思議でもなんでもない。
もう一度言うが、蓄積の時間が重要なのだ。

公式に従わず、オリジナルでやるのが良くない。
ダイエットレシピをアレンジして、マヨネーズとかたくさん入れて、カロリーの高いものを作り、しかも2人前食べたりしたら、もとはダイエットメニューだったとしても痩せないのは当たり前だ。

さらに、公式から情報を得ず、やれまわりの友達だの、ググったら上のほうに出てきた「1週間でTOEICスコア200あげた」と主張する人だのからの情報を得て、自分の中の指針にしてしまうのもとても良くない。

公式が言っていることが指針だ。公式以外はただの体験記だ。わたしがさっきまでつらつら書いていたTOEIC遍歴も体験記だ。再現性はない。前回525だったのにその次745、さらにその次で890を取るなんて、とんでもない上昇率だ。まったく普通ではない。先月のTOEICで525だった人のうち、次の試験で745になる人はとても少ないだろう。前回745で次回890の人はきっともっと少ない。スコアが上がれば上がるほど伸び悩むのは大学入試と同じだ。

帰国子女で、
センター試験英語でほぼ満点を取るほど学生時代から英語が得意だった人が、
TOEIC専用の対策を、
200時間単位で本腰を入れて本気でやった、

からの900取りました体験記だ。
これらとまったく同じ条件を持つ人にとっては、わたしの体験記にも再現性があるかもしれない。逆にいえば、条件が違えば違うほど再現性はない。
あなたは帰国子女か?センター試験英語の得点率は95%を超えていたか?200時間勉強したか?を考えてほしい。すべてに当てはまらないなら再現性はない。

冒頭で言及した、「525だった話をしろ」と言ってきた友達は、高校時代に憧れの人がTOEIC800を持っていたため、自分も800を目指し頑張ったが、ダメだったので、自分は英語ができないと思い、しょげてしまった、とのことだった。

憧れのその人と友達の、英語の時間の蓄積が違うのだろうと思った。その憧れの人のTOEIC800を取るまでの努力の蓄積量を無視して、自分も800を取れるだろうと期待するのは、憧れの人その人の人生の蓄積を軽視している。結果だけを見て、その人が結果のために捧げた時間が見えていない。

TOEIC800はまぐれで取れるスコアではない。TOEIC専用の勉強を数百時間単位でやりこんだ、もしくはTOEIC専用の勉強はしていないとしても人生における英語に捧げた時間の総量が数百時間どころでなく莫大であった、のどちらか、または両方だと思う。
どちらもやっていないのに、自分も800取れるだろうと期待し、800に届かなかったからといって自分は英語がダメなんだと思い込むことは、単純におかしい。筋が通らない。同じ蓄積を重ねてからようやく憧れの人と同じところに立てる。重ねてないうちは800に届かなくて当たり前なのだ。

指針には再現性があるが、体験記には再現性がない。体験記を読み物にするのはいい。だが体験記はカリキュラムにはなりえない。体験記は従うものではない。自分で作るものだ。

最後に 
で、何をやればいいんだっけな人のための指針

おまけ。
ここから先は体験記ではなく指針だ。なので存分に従ってほしい。

TOEICスコアアップのための手順はこうだ。

①目標スコアを決める
就活のため、なんとなく600あったら見栄えがいい、憧れの人が800だから自分も800が欲しいなど、動機はなんでも構わない。ただとにかくスコアを数字として明確に決める。もちろんから変更可能。

②TOEIC試験を受ける
勉強はしてもしなくてもいい。今のスコアを知るためだけに受ける。

③必要な勉強時間を知る
勉強時間目安表で、①で決めた目標スコアと、②で知った現在のスコアを見比べて、必要な勉強時間を知る。基本的に最低200時間は必要だということを忘れずに。

出典:Oxford University Press『A Teacher’s Guide to TOEIC® Listening and Reading Test Preparing Your Students for Success』P.6

④勉強の計画を決める
具体的には、③で特定した必要な勉強時間を、何ヶ月で達成するのか決める。

⑤TOEIC試験を申し込む。
④と同時にやるのが望ましい。100時間勉強すると1回試験を受けるくらいのペースが良い。例えば、もし1日3時間勉強すると決めたなら、毎月試験を受ける。

⑥勉強する
辛くて続けられないようなら、①目標スコアか④勉強計画に無理があるため見直して変更する。

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