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真夜中の侵入者

ある朝のことだった。
階下が騒がしい。
裏庭に面した部屋を持つ母が、

昨日の夜中に誰かが裏庭で穴を掘っていた

と衝撃の発言をして、
両親揃ってやいのやいのと
裏庭や車を検めていたらしい。

お母さん、夢じゃない?
と思ったけれど、ぐっと言葉を飲み込む。
火に油を注いだら大変だもん。

母としては寝ている頭の上で
ざっくざく音がしていた(と本人は主張)
ので、生きた心地がしなかったらしい。

まさか誰かが埋蔵金を?
と思った私は地に足がついていない。
まさか誰かが死体を?
と思ったあなたは火サスの読みすぎかも。

裏庭には塀にそって3つの穴があいていたらしい。
いずれも直径20cmほど。

結果、両親はひとつの答えにいきつく。
はやっ

それは、

隣のうちのもぐらが
引っ越してきた!

そう、隣家はその前日完全に取り壊し
更地になったところだった。
安住の地と繁栄をしていた
モグラ大国が一日にして滅び
多少の狭さには目をつぶり
(あ、もぐらだしね)
手近な我が家へ完全引っ越しをしたのでは
ないかという推測、
ほぼ間違いなしだ。

数日後、

もぐちゃんたちお元気?

と母に聞いたところ、

あの人たち、草で入り口を
隠しちゃったりしてるのよ

とか。
お試し期間を経て、完全に新居構築に
入ったらしい。

やれやれ。
もぐら横丁での珍事が
これからも続くのか。

いただいたサポートは毎年娘の誕生日前後に行っている、こどもたちのための非営利機関へのドネーションの一部とさせていただく予定です。私の気持ちとあなたのやさしさをミックスしていっしょにドネーションいたします。