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世界史と図解―何をどう図解すれば効果的? その② 説明図の段


世界史講師のいとうびんです。

今回は2回に分けての授業実践の図解編、第2回です。とくに授業案に苦労している初年度や教員志望者のみなさんに、読んでいただきたいです。

さて、前回の「その① 地図の段」https://note.com/less_sugar_in17/n/n00f53df028baで、図解にはいずれもきわだった長短があると書きました。

おさらいしてみますと(前回はすっかり忘れてた)、

まず、地図に関しては、

・長所…あるととにかく便利、てかないとアカン

・短所…ちょうどいいものがない、作成に鬼のように手間がかかる

というところです。きわめてわかりやすい長短に分かれる、といったところ。

しかし、今回テーマとする説明図は、

・長所…何でも図で表すことができる。

・短所…何でも図で表せばいいってものではない。

とこうなります。

この一見、矛盾するかのような両者ですが、世界史の授業にある程度慣れた授業者の方々であれば力強く頷いていただけるんじゃないでしょうか。

説明図はとにかくバランスがつきもの。バランスとはどういうことか?

では、前置きはこれくらいにして、内容に!


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1.説明図の落とし穴

説明図は何といっても、「言葉で説明するのが煩雑な事柄を簡潔に表現できる」ことが最大の利点です。これは疑いようがないです。

実際、社会科だけに限りませんが、きれいな図が描ける授業は、生徒の評判もいい傾向にあります。

が、しかし! きれいな図が必ずしも生徒の理解に役立っているとは限りません

例えば ↓ の図をご覧ください。

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これも資料集、山川の『世界史図録』から引っ張ったものですが、みなさんはどう感じますか?

私はこの図は正直悪い例だと考えます。

その理由は、1つの図に情報量が多すぎるからです。図そのものはきれいなのですが、あれもこれもと詰め込まれているので一度に把握しきれません。

図を使う授業でついついやってしまいがちなのが、1つの図に様々な情報を加えていった結果、後から見返すと何が何だか分からなくなるという、きわめて残念な結果に落ち着くということです。

※一応言っておきますが、別に資料集をdisりたいわけではありません。資料集は情報量勝負なので、そもそも単体の授業とは根本的に目的が違いますから。

説明図自体は便利なのですが、何でもかんでも図にすればいいわけではないですし、場合によってはかえって混乱のもとになってしまうのです。

これが、説明図の罠なのです。



2.説明図で注意すべきポイントとは?

では何に気を付けて説明図を作るべきなのか? ここでは2つのポイントをみていきましょう。

【1】図にする必要性を考える

まずは単純な話です。

授業案を作るとき、果たして本当に図にする必要があるかどうかを考えます。

「とりあえず図にしてしまえばいい」という安易な発想は危険でしょう。

図解で必要なことはコンセプトです。「ここを理解してほしい」というコンセプト抜きでは、厳しい言い方ですがただのお絵描きと変わりないです。

図にする必要性を考えることは、授業案のコンセプトを見直すきっかけにもなると思います。

【2】図に明確なメッセージをもたせる

【1】の後半で触れたコンセプトと被りますが、

説明図では生徒に伝えたいことを特に明示しないとただの残念な絵になってしまいます。

では、メッセージ性をもたせるにはどうすればよいか?

私は再現性だと思います。

生徒が何もない状態で同じような図を描けるようにする、

あるいは描いていくうちに記憶に定着していくような図を目指すとよいでしょう。

そしてこれも重要、色遣い。 これは、押さえておくべきポイントを段階化させることで、生徒に捉えやすくすることを目的とします。

例えば、

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この図であれば、は重要語句、は補助的な情報・対比、は地の文といった区別をつけています。

今回の図であれば、赤の語句がどういう立ち位置にあるかを生徒がとらえてくれればまずはO.K. 、極端な話、赤い語句を赤シートか何かで隠して答えられようにしても(望ましくはないですが)最悪何とかなる、という感じです。



3.逆に何を説明図にするべきか?

最後に、説明図としてぜひとも推奨したいものを紹介します。

それは、家系図です。

日本史と異なり、世界史で家系図を書く機会はおそらくほとんどの授業ではないでしょう。

しかし、家系図を書くことが特に効果的なパートがあります。

近世ヨーロッパのハプスブルク帝国です。

カール5世とその支配領域の説明は、結構骨が折れること請負いですが、

実は家系図を書くだけで意外とスムーズになります。

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いかがでしょう? これなら全部書いてもそこまで時間はかかりませんし、

穴埋め式のプリントにしてしまってもいいでしょう。

私はこれは全部丸ごと生徒に写してもらいます。

この家系図を応用すれば、ハプスブルク帝国の領域にも、説明を繋げることができます ↓ 。

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こういった具合ですね。あとはこれに地図が加わればもはや完璧☆

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このほかの家系図であれば、百年戦争の英仏王家モンゴルのチンギス統の家系図は必ず書かせます。



いかがでしたでしょうか。

前回と2回にわたり、図解について思うところを述べました。


みなさまにご参考いただけましたら幸いです。

読んでいただいただけでも、充分嬉しいですよ!