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教育実習で注意すべきこと―その② 授業準備の段


世界史講師のいとうびんです。

今回は前回に引き続き、教育実習について! 後編の今回は、実習生活の明暗を分ける、授業準備についてです!!

前回の記事はこちら!! ↓

ではでは、早速本題へ~


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【1】 授業準備って何すればいいの??

 さて、「事前の授業準備が大事!」と前回はこれでもかと強調してきたわけですが、じゃあその準備ってどうすればいいんだよって話になりますよね。

実はこれが実習生にとっては結構厄介だったりします。そもそも授業スタイルなんて千差万別、十人十色。人によって全然スタイルも違えば、「こうしろ」といったように強制されることも近年はあまり目にしなくなりました(ないとはいってない)。

なので、事前の説明会や打ち合わせなどで、指導教官からは「好きに授業するといいよ」と言われた方が多いと思います。というより、先生方もそうとしか言いようがないんです。


 ……とはいえ、好きにしろと言われても、料理初心者にいきなりキッチンに立たせて「好きなもの作ってごらん♪」と言われるようなもので、何からやればいいのやら皆目見当もつかないと思います

では、結論を。授業準備とは、「教材の作成」。これに尽きます。



【2】 教材作成の理論―「教材」は授業スタイル!

 ここでいう「教材」とは、「授業スタイルに合わせた補助的な副教材」を指します。

小中高いずれの学校にしろ、生徒は必ず教科書をもっています。しかし、この教科書でそのまま授業をしようすると、授業の初心者であれば一応それらしい授業はできても、結果としては教科書の文章や解法をただ読み上げるだけに終始してしまいます。教科書だけではありませんが、教材の多くは、そのままでは授業に使う性質のものではないのです。

この教科書などを授業で使うにあたり、何らかのカスタマイズを加える必要があります。このカスタマイズを、業界では「教材研究」と呼びます。

 ……話を本筋に戻します。冒頭に出てきた「授業スタイル」について。もちろん一口にスタイルと言っても、様々なパターンがあります。ですが、ここでは大きく2つに分けて紹介します。授業スタイルとは、

板書を中心に展開するスタイル

プリントを中心に展開するスタイル

です。

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 (2-1) 板書を中心に展開するスタイル

 名前の通り、黒板に板書をしながら進める授業スタイルです。この授業スタイルは、いわば古典的ながら王道と言えるものでしょう。数学や理科系の科目であれば、どうしても板書をしないと解説できない、という場面も少なくはないと思います。

 ただ、板書中心の授業はやや上級者向けと言えるかもしれません。その理由は、板書を書く(描く)のに時間がかかる生徒も板書を写すのに時間がかかるバランスよく板書を書くのがそもそも難しい、などが挙げられます。「板書」自体が実はハードルが高い、というわけですね。

実際に書いてみるとわかりますが、黒板は初めて書こうとすると、とにかく書きづらいんです。スムーズに板書ができるようになるには、それ相応の練習がどうしても必要になります。

 ですが、まったくなす術がないわけではありません。板書にはある程度のコツがあるので、これを押さえておくだけでもだいぶ違いは出ます。そのコツについてはのちほど!

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 (2-2) プリントを中心に展開するスタイル

 おもに自作のプリントを中心に授業を展開するものです。私も一部の出講先では、プリント(テキスト教材)を利用して授業をしています。プリントにも様々な種類があり、空欄穴埋め型文章や簡単な説明文中心のテキスト型資料などを読ませる読解型問題を解かせる演習型などなど本当に多様です。

プリント中心スタイルには様々な利点があります。板書中心スタイルとは異なり、こちらが書くor生徒が写す時間が大幅に削減されますし、重要なポイントはフォントを変えるなどして強調しやすい、図版なども同時に掲載できるといったような具合です。

反面、プリントも教科書そのままよろしく、ただプリントを朗読するだけの授業になりがちであること。そうなると生徒は必然的に集中力が切れていきます。「どうせプリントに書いてあるでしょ」という意識が生徒に根付いてしますと、授業を聞く姿勢がさらに遠のいていきます。

最大の難点は、プリント作成に費やす手間が相当あることです。内容にこだわればこだわるほど、どうしてもプリントは作成に時間がかかるものです。近年は電子黒板の普及もあって、プロジェクタを使うパワーポイント教材もよく見かけるようになりました。とはいえ、パワーポイント教材も、基本的な構造はプリント教材に類似するとみてよいでしょう。

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 まずは以上を参考に、自分の授業スタイルを決めてみるとよいでしょう。ただ、どちらか一方だけにしなければならないというわけではありません。最初はプリントに絞って教材準備を進め、「このスタイルでは限界かな」という内容は一部板書も取り入れてみるなど、ハイブリッド型を活用するのも非常に効果的です。

とはいえ、いきなりこのような折衷型の教材を作ることは難しいので、当面はどちらかのスタイルに絞って、始めてみるのがよいでしょう。



【3】 教材作成の方法論―教材づくりを具体的にどう進めるか?

 ではここからはより具体的に。【2】で述べた2つの授業スタイルに沿って、教材をどのように作成すればいいかを説明します。


 まずは、板書を中心に展開するスタイルから。このスタイルで必要となる教材とは、「板書案」です。これは授業案とは異なります。板書案は純粋に板書をどう書くかという下書き、プレヴューのようなものです。授業案は詳細に作ったとしてもあくまで目安に過ぎませんが、板書案はそのまま板書をするわけですから、かなり綿密に練る必要があります。

 板書案を作るにあたっては、ぜひWordで打ち込むのではなく、ノートやルーズリーフなどに複数の色も使って書いてみてください。板書は生徒がノートに書きとるわけですから、生徒がとったノートがどのようになるのか、全体像を俯瞰することができます

また、板書は色づかいも大事です! 白一色、あるいは白と黄色だけなどのように色合いが乏しすぎる板書は考えものです。もちろん、必要以上にやたらめったらとたくさんの色を使う必要はまったくありませんが、白と黄色を中心に、赤や青を補助色として使う、などの工夫もできるとよいでしょう。

 ……そして、最大の問題が、板書がうまく書けないこと。(2-1)でも述べたように、黒板に字を書くということがとにかくやりづらい。そこで、板書を書く上でのコツを、過去の記事より抜粋しました ↓ 。ぜひご一読ください。

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 続いては、プリントを中心に展開するスタイル。こちらは言うまでもなく、プリントが要となります。とはいえ、このプリントは、詳しすぎると情報過多になってしまい、かつ少なすぎては教科書の焚きなおしに過ぎないという、なんとも中途半端なものになってしまいます。

プリントを作るにあたっては、「そもそもプリントを作る必要があるかどうか」に、一度焦点を置くべきです。とくに私が教えている社会科などは、暗記が中心というイメージが強いせいもあってか、とにかくたくさんの用語を反映させようというプリントをよく見る印象があります。でもよく考えれば、「それなら教科書か用語集見ればよくね?」と生徒に思われてしまったら、とたんに価値はなくなってしまいます。

作るのであれば、教科書などに見受けられないような内容のものが好ましいでしょう(あくまで理想論ですよ)。

 さらに、プリントには文章だけでなく、図版や図解なども載せることになると思います。こういったものは、生徒の理解を助ける頼もしい道具ではありますが、扱いどころに困ることも少なくはありません。

板書もそうですが、図解、それも説明図は、解説で必要になる場面が、どうしても出てくると思います。説明図に関しては、過去記事 ↓ をご参照ください。


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 板書にせよプリントにせよ、教材や授業を構成するうえで、心掛けておくとよいことがあります。

それは、授業における重要ポイント、「目玉」を作ることです。

「今回の授業では、ここだけは理解してほしい!」というポイントをひとつ設定すると、そのポイントを軸に授業全体がストーリーのように体系化しやすくなります。

あとは導入。生徒とのやり取りも交えながら、授業の本題に入っていくような工夫があるとなおよいです。そうした導入の例として、↓ があります。



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【4】 何を参考にして教材を作成すればいいの??

 さて、やや今更感はありますが、授業スタイルを決めて教材を作ろうにも、まだやり方が見えてこない方も少なくないと思います。そういった方は、他の人の実際の授業を参考にするとよいです。私自身、実習中は指導教官の先生の授業スタイルを参考に、自分の授業を展開しました。

また、かつて自分が生徒時代に使っていた参考書なども、場合によっては手助けになることでしょう。

指導教官や現場の先生だけでなく、最近では様々な媒体で授業動画も見れるようになっています。無料のものも結構あるんですよ!(ただし予備校講師以外が授業をしているYouTube動画の多くは、エンターテインメント性を重視しているというのもあり、授業の参考にするにはかなり不安がありますのでおススメしません)

 準備だけでなく、実習中もぜひ、いろいろな先生方の授業を見学してみるとよいです。特に、同じ教科だけでなく、異なる教科の授業を見学すると、意外な発見があったりして結構楽しいです

授業に関しても、しっかりと指導教官とコミュニケーションは取りたいですね。反省会や振り返りはもとより、これから授業をする内容についての相談などもしてみるのもよいでしょう(あまりにも頻度が多すぎたり、質問が抽象的過ぎると、指導教官の迷惑にもなるので気を付けましょう)。


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 いかがでしたか? 今回は2回にわたって教育実習について述べてきました。教育実習は何といっても事前準備が本当に大事です。ぜひこの2回の記事を、充実した実習期間の手助けに活用していただければと思います。

実習生のみなさんのお役に立てましたら幸いです。


≪今回の記事のまとめ≫
[1] 授業に必要な教材の準備をする
[2] 板書中心スタイルは、板書案をしっかりと
[3] プリント中心スタイルは、プリントに載せる内容を選別する
[4] 授業ごとに「目玉」を設ける


読んでいただいただけでも、充分嬉しいですよ!