世界史と図解―何をどう図解すれば効果的? その① 地図の段
世界史講師のいとうびんです。
今回は2回に分けて授業実践の内容を。とくに授業案に苦労している初年度や教員志望者のみなさんに、読んでいただきたいです。
世界史は教えるうえでの情報量が思いのほか多く、また出来事や概念の説明に非常に苦労させられます。
こういったときに助けになるのが図解です。
私は授業で様々な図解を駆使しており、自分の授業のひとつの持ち味でもあります。
ところがこの図解、いろいろと厄介な点も多くありまして…
論より証拠、早速内容に入りましょう!
1.図解の種類
こと世界史に限定して、の話ですが…
図解には大きく2種類あると私は考えています。
① 地図
② 説明図
です。
このうち特に重視すべきは①の地図であると考えます。
世界史を学習したことのある方なら口をそろえて言うでしょうが、
「地図や地理の感覚がないと世界史は到底理解できない」のです。
また、②の説明図に関しても、
教科書だけでは説明がハショられている箇所を説明するうえでどうしても必要になってくると思います。
この2種類の図、いずれもきわだった長短があるのがまた面倒な点です。
では、次から詳しく見ていきます。
2.地図~避けて通れぬ険しい壁
では今回は地図から。
現在進行形で世界史を教えておられる方々が、大絶賛お悩み中の課題のひとつかと存じます。
その難所たるや、アルプス越えをしたハンニバルすら引き返すレベルではと疑うほど。
地図の問題点は、何といっても「これだ!というものがない」
これに尽きると思います。教えるうえで不可欠な割には、ちょうどいいものがないんです。
…え? 資料集??
そうだった! 俺達には資料集がある! よっしゃこれで解決や!!
…と、思うじゃん? ここで司馬懿仲達がひとこと↓
「待てあわてるな これは孔明の(ry」 まあ実際に開いてみると、、
げえっ!
…これよ、これ。 そうです、資料集の地図は細かすぎるんです。
今回開いた『タペストリー』なんかは全然いい方(むしろ使いやすい)くらいで、ほかの資料集の地図になるとびっしり細かいものからガッバガバのものまで幅がありすぎるんです。
あと資料集の問題は、生徒に情報を追いかけさせるのがどちゃくそ面倒なこともあります。
【例文】次の文を読み、感想を述べなさい。
ワイ「はいでは資料集の○○ページを開いて~」
ワイ「で、アウクスブルクは…」
生徒「先生、アウクスブルクってどこですかー?」
せいと「先生、杭州の場所どこですかー?」
SEITO「先生、ベニン王国ー」
ワイ「ああああああああああああああああああああああああああああああ」
…こうなるんです。こんな場所ひとつの説明でどんだけ時間食うんだよと。
いや、生徒は悪くないんですよ、悪いのは地図なんです!!!!
実際、ちゃんとした地図教材があると、本当に応用が利きます。
例えば、
・ユーフラテス川はビザンツ帝国とササン朝の国境だった
・ビザンツ帝国は6世紀に西ゴート王国より領土を奪った
など、一見「?」と思える出来事も、地図1枚で済みます。
とはいえ、そもそも授業者によって授業スタイルなんてまちまち、
そりゃ自分にピッタリ☆の地図教材なんてそうそうどころか全然ねーわ、と
で、結局私が行きついた結論は、
自作
だったんです。
3.地図教材の作成~お地図がなければ自分で作ればいいじゃない
これマリ=アントワネットじゃなくても言ったらギロチンレベルですよ。
そんなんできればやってんだよ!! …ですよねー
でも作るといっても資料集レベルくらい細かく作る必要は正直いえばないと思います。
まず大まかに場所なり位置なりを生徒に確認させ、
あとはそれこそ資料集などにつなげるのも全然アリです。
ではここから具体論へ。 お待たせしてすみません(陳謝)。
【1】白地図を探す
まず素材となる白地図を探します。最近は白地図もフリー素材でだいぶ豊富になってます。
ですが、意外といい白地図って見つからなかったりもします。この辺からすでに出鼻をくじかれる感ありますね。
そんな時にいいのが「別言語」。
例えば、「白地図 ヨーロッパ」と日本語で入力するよりも、
「blank map europe」と入れた方が幅が広がったりします。
海外では白地図マニア専門のスレッドや情報交換サイトもあり(私もちょいちょい覗きますが)、これでもかというほどハイクオリティな白地図が高画質で手に入るんです。
ちなみに、川が載ってる白地図はとくにおススメです。理由は↓で
【2】色を塗る
さて、白地図を手に入れたところで、色を塗ります。
私はペイントで塗ってます。デフォルトでWindowsに入ってますし、なんだかんだ色塗りに適していますからね。
色を塗るにしても、実際にやってみるとそこまででもないです。
というのも、川が載ってる白地図を利用すると、川が国境代わりになってたりするため、川と川をつなぐだけでも意外とそれっぽくなるんです。
例えばこのビザンツとササン朝の地図なんかでも、ユーフラテス川がいい感じで国境になってくれてるので割と線を引きやすいんです。
また、色の濃淡をつければ国境線を引かなくてもきれいに映ります。
今回であれば、ササン朝→濃、ビザンツ→淡、といった具合ですね。
また、隣り合う色にも注意!
この色づかいで手を抜くと、隣り合う色同士がつぶれて見づらくなってしまうことがあります。
そこで、まず色を2パターンに分けてみていきます。
・金属色…白、黄
・単色…黒、赤、青、緑
この区分では、金属色同士(白と黄)や単色同士(赤と黒)などは組み合わせるともれなく見づらくなります。
金属色と単色の組み合わせがとてもはっきりするんです。これは白黒印刷でも違いはある程度はっきり出ます。
…余談ですが、以上の色の区分と活用法は、紋章学の知識から着想を得ています。今日でも紋章学の色の原則は、道路標識などでも活かされていますし。
ただ、以上の色の単純な組み合わせでは限界がありますから、
薄い緑と濃いめの青といったように、適宜ほかの色も混ぜながら比較してみるとよいでしょう。
というわけで、私の地図の作成方法はこんな感じです。
もちろん今まで地図に鬼のような時間を割いたのも事実です。
しかし、作ったおかげで授業は快適そのもの、生徒の理解も深まってまさにいうことなしです。
では、今回はここまで。
次回は、説明図の図解について!
※もっと詳しく聞いてみたい!あるいは個別に相談したい!という方はぜひコメントをお寄せください。
読んでいただいただけでも、充分嬉しいですよ!