蜷川幸雄作品でのデビューのきっかけを掴み、役者としてもがきながら進んできた道。13年を経て、30代となった今、初めて“変身”!
蜷川幸雄演出舞台「身毒丸」の主演・身毒丸オーディションでグランプリを獲得し、身毒丸として大竹しのぶの撫子と対峙した矢野聖人。あれから10数年。数々のドラマ、映画、舞台を通して自身の芝居を追求してきた矢野が、30代を超えて初出演となる特撮作品「王戦隊キングオージャー」。演じるのはクワガタオージャーであり主人公であるギラの兄でありオオクワガタオージャーでもあるシュゴッダムの王・ラクレス。弟たちの前に立つ強大な壁となるラクレスに対してどのような想いがあるのだろうか。役者観も併せて話を聞いた。
■芝居観に影響を与えてくれた小栗旬さん
——舞台「身毒丸」のオーディションからはじまった役者生活ですが、現在までの活動の中でターニングポイントになった作品や大きな出会いとなったことを教えてください。
矢野聖人 「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」にゲストで出演させていただいた回です。小栗旬さんと1対1のお芝居をしたのですが、そのシーンは自分の中で臆することなくやりたいことができた瞬間でした。そこから自分の中でお芝居に対する気持ちも強くなって、オーディションにも受かるようになっていきました。
——ご自身の中で「BORDER」に至るまでのあいだ、お芝居で悩み、モヤモヤするようなことがあったのでしょうか?
矢野 ありましたね。自分の思った通りに芝居ができないことがよくあったんです。想像している自分の芝居と、現場で実際に出している芝居とのギャップが大きくて。「なんで思うようにできないのだろう」という想いを抱えながら日々悶々としていました。だから次のチャンスにも繋がらなかったですね。20代前半ではそういう日々を過ごしていました。
——「BORDER」でご一緒された小栗さんはどのような印象でしたか?
矢野 僕自身も「身毒丸」と「シェイクスピア・シリーズ」で蜷川幸雄さんの現場を経験していますが、小栗さんも蜷川さんのところでたくさんの舞台をやってきているということを僕の中でも繋がりとして感じられた上での、芝居の作り方を肌で感じ取ることが出来た。そういった意味で役者としての僕自身のターニングポイントになっているように思います。
■初めての特撮出演。子供たちの視線を意識するようになった。
——その矢野さんが今年3月から出演中なのが「王様戦隊キングオージャー」です。特撮作品へ出演されるようになってから変化したことはありますか?
矢野 子供の視線を意識するようになりました。普段生活している上でも気にしています。でも変身するものの、物語自体は割と大人っぽいものでもあるので、僕自身は「特撮だから」と意識せずに臨んでいますし、ほかのキャラクターに負けない存在として見えるように、そして全力で嫌われるような芝居を目指しています。
——初特撮作品なんですよね。
矢野 年齢的に考えても、この年で変身するとは想像もしていなかったです(笑)。役者をやってきて10数年になりますが、実は今まで特撮作品のオーディションを受けたことがなかったので、思わぬ角度から新しい仕事がきたなと思いましたが、今の年齢だからこそ気持ちよく演じられている気もしています。20代の若い時期にもしも可能性があったなら、めちゃくちゃ尖っていたんじゃないかなって思いますね(笑)。
——そんな「王様戦隊キングオージャー」に対してどのような想いがありますか?
矢野 僕も小さいときは特撮作品を見て育っていますが、まさか自分が大人になってから特撮作品に出演している側になるとは思っていなかったです。でも子供たちに勇気を伝え、影響を与える作品だと思っていますし、子供たちはもちろん、その子供たちの親御さんたちにも見てもらいたいです。ラクレスは激動の中にいる王。自分の信じる姿がありますし、まだ物語の中では明かされていないこともあるんです。彼の背景を念頭に置いたうえで芝居をしなくてはいけないので、意識しすぎて中途半端な芝居にならないように演じることがとても大変です。でもラクレスの持っているものをちゃんと出しつつ、真意を見せないように。挑戦を重ねながら演じています。
——現場で意識されていることはありますか?たとえば弟であり敵対するギラとはあまり関わらないようにしている、といったような……。
矢野 そこは全然ないです。ギラを演じる酒井大成くんは、「キングオージャー」に入る前のドラマ「親友は悪女」でも共演していたので、去年からずっと一緒にいるんです(笑)。「キングオージャー」で知り合ったわけではないので、撮影の合間にも一緒にいることが多いですね。あとはカグラギ役の佳久創くんは1歳上なのですが、いつも二人で芝居の話をする仲です。
——放送を楽しみに見ているみなさんへメッセージをお願いします。
矢野 ぜひ最後まで見続けてもらいたいです。あと「王様戦隊キングオージャー ラクレス王の秘密」というスピンオフドラマも東映特撮YouTube Officialにて配信中です。7月16日に最終話の配信を迎えますが、本編にとても重要に関わってくる物語なので、そちらも見ていただきたいです。
■今後やりたいこと。それは王道の「二枚目」…⁉
——矢野さんは舞台から映像作品、現代劇から時代劇までさまざまにご出演されていますが、役者という仕事の魅力はどんなところにあると感じていらっしゃいますか?
矢野 影響力がすごく大きいですよね。どの役をやっていても感じます。たとえばドラマ「ラジエーションハウス」をやって、「放射線技師を目指そうと思います」という声や、実際にこの職業に就かれている方からの「放射線技師という仕事の大切さを、このドラマを通して改めて感じました」という声もたくさん届きました。ほかの作品でも「見ていて元気が出ました」とか「明日から頑張れます」とか。みなさんの生活の一部になる、活力になれることをとても強く感じています。
——役者としてのキャリアも10年を超えてきましたが、今後やりたいことを教えてください。
矢野 特撮をやることはこれまで目標にしてきた一つでもあるので、それが叶った今、これまでにまだやったことのないものに挑戦していきたいという想いはあるのですが、次なる目標としては「二枚目を演じたい」です(笑)。
——割と二枚目が多そうなイメージですが…!?
矢野 「王様戦隊キングオージャー」が決まったときにも「いよいよカッコいい役がやれる」と思ったのですが、やっぱり嫌われる役なのか!ってなりました(笑)。
——「ラジエーションハウス」の悠木倫も人間味がありましたよ?
矢野 あれはシーズン2の悠木回があったからこそです。それまではずっと不愛想なキャラでした。しかもあの当番回も「あいつは愛想がない」って患者からクレームが来るところから始まりましたからね。そういう役周りが多いです。ほかにも犯人役とか。でも僕としては「花より男子」の花沢類みたいな、王道の二枚目をやりたいんです。今年32歳ですが、いつかそういった役を演じられるように準備をしておきたいです。
【リーズンルッカ’s EYE】矢野聖人を深く知るためのQ&A
Q.学生時代と今の、理想の夏休みの過ごし方
A.学生時代の夏休みに友だちと海に遊びに行ったことがないんです。当時の夏休みはレッスンやステージなどもあって忙しくて、夏休み明けに一人だけ日焼けしてなかったほどです。だからみんなが羨ましかったです。その頃の理想は『仲間と海ではじける』ですね。大人になった今の理想は『避暑地で過ごす』かな。ちゃんと年を重ねていますね(笑)。できれば涼しい北海道でデジタルデトックスをしつつ大好きな寿司を食べて温泉に入って過ごしたいです
Q.夏になると食べたくなるもの
A.蕎麦です。夏場は主食になります。僕自身、普段から料理をする方なので家でもよく作ります。かけそばよりもつけそばが好きです。とろろそばが好物ですが、ほかにも茶そばも好きです。こだわりとしてはつゆにはうずらの黄身を入れること。夏はほかに薬味としてミョウガもいいですよね。家で作るときには茹で時間にこだわっていて、鍋の前から離れず火加減をしっかり見ています。今年の夏は自分でそば打ちに挑戦したいです
<編集後記>
「王様戦隊キングオージャー」で共演中であり、弟・ギラを演じる酒井大成さんとは仲良しという矢野さん。天然で可愛らしい(矢野さん談)酒井さんの、向上心が高くがむしゃらな姿に「懐かしさを感じます」と先輩らしい表情を見せてお話してくれました。ご自身が先輩の役者さんからそうされたように優しく見守っているのだな、と感じる場面でした。
<マネージャー談>
なんとなく外見はクール系に見られがちなのですが、結構真逆です(笑)共演者の中でも、率先してふざけキャラにまわって、周りを盛り上げているのが印象的です。
キングオージャーの公式SNS用の動画をチェックしていても、ラクレスとのギャップがすごすぎて思わず笑ってしまうことも多いです。ラクレスって、カメラが回ってないとこんなにもおちゃめで愛らしい、というのを是非多くの方に知ってもらい、さらにキングオージャーを楽しんでもらいたいです!
<サインの様子はこちら!>
<ホリプロ・スクエアでは撮影の裏側を公開中!>
https://sp.horipro.jp/news/?id=101094
スタイリスト/徳永貴士
取材・文/えびさわなち
写真/佐藤亮
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