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デビューから10年。大野いとが “大人”を自覚するまでの歩みとこれから

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11月22日に放送される、船越英一郎主演の2時間サスペンス『西村京太郎サスペンス 十津川警部の事件簿 悪夢』。この作品に、刑事・羽村凛々子役としてレギュラー出演しているのが、話題作『リコカツ』にも出演していた大野いとである。今年でデビューから10年、何よりも現場を大切にし、必死に駆け抜けてきた彼女に、演じることへの想いを聞きました。

目次
●“がむしゃらに走ってきた10年間
●役者に必要なのは、人に愛をもって接すること
●『十津川警部の事件簿』シリーズで感じた、刑事役の難しさ
●人の心が触れ合うあたたかさを無意識に求めている

■がむしゃらに走ってきた10年間

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「お芝居を上達させたいと思って、この10年、とにかく必死に頑張ってきました。その中で、演じる目線だけではなく、いろんな目線で物語を見られるようになってきたと思います。それでも、 “自分はまだまだだな”って、思うところもあって。ショックを受けることもありますが、そんな自分の現状を受け入れることができるようになってきました。少しずつ、大人になってきたのかもしれません

モデルとして芸能界デビューし、現在は女優として活躍する大野いと。2011年に『高校デビュー』でデビューしてから、10年が経過した。活動開始当初から守っているポリシーがある。

「現場ではスタッフのみなさんと楽しく仕事をするとか、現場が明るくなるような良い気を放っていきたいとか、そういう現場での振る舞いをきちんとするのが自分のポリシー・ルールとして昔からありました。それをずっと積み重ねてきて今があると思います」

一歩前に進む契機となったのが、今年3月まで放送されていたドラマ『リコカツ』への出演であった。大野は主演・北川景子が演じる水口咲の後輩、三本木なつみを演じたが、コロナ禍での撮影が、役と向き合う大切さを知っただけでなく、役者として生きる決意を新たにした時間にもなったという。

「『リコカツ』はすごく大きかったですね。たくさん準備して撮影に臨んだこともあり、『リコカツ』を終えてからの方が、お芝居において吸収できることが一段と多くなりました。おそらく、今年のはじめ――コロナの時期に撮影したのも大きかったかもしれないです。誰もが大変な時期だったでしょうし、悲しい思いをしていると思うのですが、俳優としては(今後について)考えさせられる時間にもなりました。その中で、少しはプラスになったこともあったかなと思いたいですし、自分を見つめなおす時間になったんじゃないかなと

■役者に必要なのは、人に愛をもって接すること

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大野はこれまで様々な作品や人々と関わってきたことで、役者に必要な心構えを身に付けてきた。中でも、撮影の舞台となった島根など、中国地方で先行公開された『高津川』(2019)での経験と、主演の甲本雅裕とのコミュニケーションによって得られたものは大きかったと語る。

「残念ながらコロナ禍で全国での公開は延期されているのですが、『高津川』という作品では、撮影の合間やプロモーションで、主演の甲本雅裕さんとたくさんお話できる機会があったんです。どのお話もとってもあったかくて、いろんな言葉をたくさんかけていただきました。お芝居もお人柄も素敵で、甲本さんは本当に憧れの存在です。島根県の現地の方々が映画の撮影に協力してくださったのですが、その方々とのコミュニケーションなど、見習いたいことばかりでした」

デビュー10年ともなると、徐々に現場には年下の役者も増えてくる。これまでも現場の雰囲気を大切にしてきた大野だが、年長者としてそのムードを作っていく立場になりつつある。そんな彼女が考える、役者に必要なものとは。

「どういう人が向いているかはわからないですが……人に対して、愛をもって接することではないでしょうか。あとはもう必死に頑張っていれば、私は良いんじゃないかと思います。お芝居がうまいのはもちろんですが、人に対しても、仕事に対しても愛情に溢れていることが何よりも大切なのではないでしょうか」

■『十津川警部の事件簿』シリーズで感じた、刑事役の難しさ

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そんな大野が次に出演するのは、西村京太郎の人気ミステリー小説『十津川警部』シリーズをドラマ化した作品。テレビ東京系列で今年からスタートした船越英一郎版に、新米刑事の羽村凛々子役でレギュラー出演している。
「第一弾の『十津川警部の事件簿 危険な賞金』が、私にとってはじめての刑事役だったんです。本当に未知の世界で、警察の組織の仕組みなどもいろいろ調べたりしました。姿勢や話し方などどうしたら刑事らしく見えるのか考える部分も多かったですし、事件の説明などセリフにも専門用語が多くて、戸惑うこともありました。現場では、船越さんの背中を見て勉強する毎日で、学ぶことが多かったです。
刑事モノの難しさを感じたという大野。ただ、11月放送の第二弾『十津川警部の事件簿 悪夢』は、前回と座組がほぼ同じだったこともあり、よりリラックスした心境で臨めたようだ。
「今年の8月に撮影したのですが、監督も前回と同じで、前よりはリラックスして臨めたと思います。羽村という役どころも、一度経験しているので、やはり二度目の方がすんなり入り込むことができました。羽村は正義感が強くサバサバしている性格なのですが、その根本には“上司である十津川への尊敬があるので、そこは崩さないでほしい”と監督からご説明をいただきました。一方で、同僚でもあり、ちょっとライバル心もある西本(演:笠松将)が自由きままな性格なので、“ふたりの対称性を出したい”とも。シーンによっては西本とふたりでちょっとおどけてみせたり、もしかしたらラブも……という部分ですね(笑)」

羽村という役柄を演じる上で、大野が一番苦労したのは、自分と真逆のタイプだったこと。加えて、「自分が刑事役をやるなんて思ったこともなかった」と語る。
「今までいろいろな役柄を演じてきましたが、羽村が一番、私自身と違うと思います。私は彼女みたいな俊敏さもないし、サバサバしていない。むしろ“天然”って言われるくらいで(笑)。Abemaプレミアムで放送されている『KILLER NEWS』というドラマでライターの役をやったときは、書物系の仕事って良いなと思うことはあったのですが、刑事になりたいと思ったことがなかったので、自分に置き換えて想像することが難しかったです。これから、政治家の役とか来たらどうしようと思います(笑)」

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一方で、やってみたい役もあると話す。
「中性的な役どころにチャレンジしてみたいです。昔から、男性とか女性とか性別に縛られない、ジェンダーレスな方々に対して魅力を感じていて、素敵だなと思うんです。そこに着眼した作品があれば、出演してみたいです」

■人の心が触れ合うあたたかさを無意識に求めている

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今年はランジェリーカットを含んだ5年ぶりの写真集『mellow』も発売し、これまでとは違う表情を見せている大野。出演する作品、演じる役柄も年齢を重ねることに多彩となり、表現の幅もグッと広がっている。その中で、大切にしている習慣があるという。
 「私、現場に入るときに、台本など仕事道具以外は何も持ち込みません。マッサージ機とか、ルームソックスとか、筋トレ道具を持ち込む人もいますが、私は自宅から何も持ち込まない方が、気持ちを切り替えて仕事に向かえる気がします。あと、最近はコーヒーにハマっていて、それを飲むと、よりオンとオフの切り替えがスムーズになりました」

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コロナ禍によって会食も事実上不可能となり、世界中の誰もが、他人との接触を制限される日々が続いている。不特定多数のコミュニケーションが前提となり、ソーシャルディスタンシングやリモートワークが不可能な芝居の現場は、その影響をモロに受ける業種である。いつもと同じように仕事に取り組もうとしても、やはりコロナ以前とは別世界。あるCMを観たときだった。

 「母親に教えてもらったのですが、実際のご夫婦である北村有起哉さんと奥様の高野志穂さんが、共働きの夫婦役で出演されているAmazonのCMにハマってしまって。ロングバージョンが1分50秒くらいあるのですが、音楽も映像も素敵で。お二人の一生懸命お仕事されている姿と、ふとした表情がすごく優しくて、あったかいんですよ。ああ、こういう関係、いいなって思いましたし、自分も働いているので、共感する部分も大きくて。……今、外でワチャワチャするのはまだできないので、そういう人の心が触れ合うあたたかさを無意識に求めているのかなと思います

 芸能界・俳優業界で、安住のポジションを見つけることは非常に難しい。日々、移り変わるトレンド、次々と生まれるニュースターたち。そんな中で、愚直に芝居を続けてきた大野いとが、見る未来とは。『十津川警部』シリーズでは、また成長した彼女の姿や表情が窺える。

 「今回は第二弾ということで、チームワークが前回よりも増しています。小説を読まれている方も楽しめると思いますし、犯人が最後までわからないので、ハラハラドキドキさせられるはずです。羽村もそんな中、頑張っています。私個人としては、これまであまりやってこなかったアクションシーンもあります。ほんのプチ程度ですが(笑)。今、思い返しても大変だった……(笑)。ぜひ、注目してください!」

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【プロフィール】

大野いと(おおのいと)
1995年7月2日生まれ。福岡県出身。
2011年公開の映画『高校デビュー』で女優として活動開始。写真集『mellow』がblueprintより発売中。Instagram

【作品概要】

「西村京太郎サスペンス 十津川警部の事件簿『悪夢』」

テレビ東京系列 11月22日(月)夜8時放送

取材・文:森樹
写真:トモノユウ

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