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「ひょっこりはん」の本性は真面目キャラ?俳優として舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』メインキャストに抜てき「いまは来た仕事を全力で頑張る」

 マッシュルームカットに黒縁眼鏡、「ひょっこりはん」と書かれた白いタンクトップに青い下半身タイツ……そんな姿は夏以降見ることがないかもしれない。というのも、お笑い芸人・ひょっこりはんは、東京・TBS赤坂ACTシアターで上演されている舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に7月より出演することが決定しているからだ。メインキャストであるロン・ウィーズリー役に抜てきされ、いまや「俳優」としての顔が強くなってきた、現在のひょっこりはんに迫る。

 ■本名「宮下聡」で挑んだオーディション

 ーーひょっこりはんが『ハリー・ポッター』の舞台でロン・ウィーズリーで出ると知って、驚きもありつつ「意外とハマりそうだな」という感想もありました。
 
「ほんとですか、ありがとうございます。僕の前に先輩のエハラマサヒロさんがロンとして出ていたのは知っていて『すごいなあ』なんて思っていたんですけども、いざマネージャーから『応募書類が通りました!』って聞いたときは驚きましたね。それも、そこからオーディションが2週間後とあっという間のことだったんですよ。実は、『ハリー・ポッター』自体、映画の1作目、2作目を見てたぐらいだったので、これはと思い全作すぐに見直しました」
 
ーーなるほど、基礎的な知識は抑えているけど深掘りは……。
 
「ごめんなさい。何か物凄い熱い思いがあったかって言われると口ごもっちゃうんですけど(笑)。ただ、うちの奥さんがめちゃくちゃ『ハリー・ポッター』好きなんですよ。それこそ映画を見ながら、ここはこういう関係で……みたいに教えてくれて。このオーディションに関しても背中を押してくれた存在ですね」
 
ーーいざオーディションに行ってみて手応え的なものはあったんですか?
 
「ロンってそもそもメガネかけてないんですよね。なのでひょっこりはん要素はなくして、白シャツに黒パンで、本名の『宮下聡』丸出しで行きました(笑)。そもそも演出家が外国人の方で僕のことを知らないだろうし、書類の写真はひょっこりはんだったから『なんだコイツは』と思ったでしょうね。なので合格しているなんて全然思ってもみなかったです」
 
ーー“何か”が光っていて、演出家に刺さったんでしょうね。
 
「ただ、オーディション2週間後に受かりましたって連絡が来てから、1年ぐらいブランクがあったんですよ。それまでがスピード感あっただけに、どんどん準備が始まっていくのかと思ったら全然連絡なくて、マネージャーにも『あれどうなってるんすか』みたいなのを聞きながら別の舞台をやったり。『実はウソでした』とかドッキリの線も考えましたよ」

■「動き」でバズったため喋っているだけで珍しがられた

ーー「別の舞台」っていうワードが出ていましが、ひょっこりはんはいま「俳優」の方にシフトしていますよね。
 
「2022年に舞台の仕事が入ってから、声をかけてもらうことが徐々に増えてきましたね。最初から俳優をやりたくて仕事を掴みに行ったというよりは、ひとつのお仕事を一生懸命やっていったら、ちょっとずつ道が広がっていったなという感覚です。芸人をやっていたらできない表現の発散の場があることは楽しいですね」
 
ーーもともと演技には興味があったんですか?
 
「コントが好きなんですよね。学生サークルの頃からコントをやっていて、ピンになってからはそういう機会が減っていったんですけど、ずっと興味は持ってましたね。ただ、今回大きい舞台で、周りの役者さんもすごい人ばっかりじゃないですか。その中に入ってやるのが想像がまだできてないんですが、『やってやるぞ!』みたいな気持ちは出てきました」
 
ーー周囲の芸人さんは「俳優・ひょっこりはん」について、なにか感想を言われましたか?
 
「『いいね』って言ってくれる人もいますし、『そっち行くんだ』みたいな声もありますし、いろいろありますね。普通にテレビで知ってくれていた人は、やっぱり俳優をイメージしにくいですよね。ラジオに出ても、『初めてひょっこりはんが喋っている声を聞いた』みたいな、まるで妖怪みたいな感想を持たれたこともありましたし(笑)」

■「真面目さ、出てますか」

ーー芸人として一世を風靡したわけですが、ご自身ではいまの状況をどう捉えていますか?
 
「仕事の調子が良いときも良くない時期も経験してきて、いまは来た仕事を全力でやるっていう結論に至っているので、不本意とか思ったことはないです。そもそもひょっこりはんっていうキャラクターが、芸人として“強い”と思ってなくて、もともと前に組んでいたコンビが解散したあとに生まれたもの。なのでこだわりは持たないようにしています」
 
ーー柔軟な考えを持っているんですね。
 
「芸人になったときも、ゴールがあって、逆算したらこの時期ぐらいに売れて……とかの考えも特になかったんですよ。就活に失敗して、たまたま芸人にも興味があったからそっちにいっただけ。なので、やるべきことに向き合って、結果が出たら嬉しいなという感じですね」
 
ーー芸風とは違い、真面目さがにじみ出ています。
 
「出てますか(笑)。ひとまず、舞台に集中ということで、上映期間が長いので、演技のグラデーションを楽しんでもらって、ビシビシSNSにコメントを書き込んでほしいですね。ちゃんとエゴサして見に行きますし、僕を通して作品全体を楽しんでもらえれば最高です!」

【リーズンルッカ’s EYE】ひょっこりはんを深く知るためのQ&A

Q. プライベートが謎に包まれている面もあるんですが、普段どんな過ごし方をしているんですか?

A.ものすごい普通です(笑)。子どもが二人いるので、朝6〜7時には強制的に起こされて、仕事がない日は一緒に遊んで、23時ぐらいには寝るという生活の繰り返しです。もともと夜遊びもしないので、いまは稽古が息抜きになっているぐらい楽しくやっています。ちなみにこのインタビュー前にテレビの取材があったんですが、久しぶりにひょっこりはんを全力でやりました(笑)

<編集後記>

もちろんテレビで何度も見たことがあって、そのギャグのようにファニーさが溢れ出てるのかと思いきや、インタビューの通り好青年の印象を受ける。そもそも喋ってしまうとこの実直さがバレてしまうから「動きメイン」のギャグになったのではないかと勘ぐってしまうぐらいだ。とは言いつつも、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では、ロンというユーモラスな性格の人物を演じる。貴重な「喋り」もプラスされたひょっこりはんの躍動に期待したい。

<撮影の様子はこちら!>

【プロフィール】
ひょっこりはん
1987年4月28日生まれ、滋賀県出身。大学時代はお笑いサークル・早稲田大学お笑い工房LUDOに所属し、NSC東京校に18期生として入学。2013年から2016年3月まで漫才コンビ・ダイキリ(のちにトロフィーズに改名)として活動した。2018年元旦放送の「ぐるナイ おもしろ荘」(日本テレビ系)出演をきっかけにブレイクを果たし、「日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士- SEASONII』」(TBS系)などドラマにも出演している。宝島社から絵本「ひょっこりはんをさがせ!」シリーズを刊行。

取材・文/東田俊介
撮影/板場俊

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