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金融業界出身の“ニューレディ”肉乃小路ニクヨ「同世代や若い人に自分の知恵や思考を役立ててもらいたい」

“ニューレディ”として活動をしている肉乃小路ニクヨ。金融業界で働いていた経験を基に講演会やテレビ番組などに出演する一方、自身のYouTubeチャンネルでは女装仲間と旅に出たり、鉄道に乗ってその地域を紹介したりと、さまざまな顔を見せている。
 
渋谷教育学園幕張高等学校から慶應義塾大学へ進学し、卒業後は金融業界で働いていた肉乃小路はどうして“ニューレディ”という道を選んだのか。そのきっかけから話を聞いた。

■「ゲイの世界でデビューしたなら、その中でも目立ちたい」

――今回の取材に当たってプロフィールを拝見したんですが、率直に言うとエリート街道と呼ばれるようなキャリアを歩んでこられたんだなという印象を受けました。
 
肉乃小路 通っていたのは優秀な学校でしたけど、大学時代は休学してるんで、そんなエリートっていう感じではないですけどね。
 
――女装はいつから、どんなきっかけで始めたんでしょうか?
 
肉乃小路 大学生のときでした。1996年の6月から始めたので、もう28周年になります。女装を始めたきっかけは、その前にゲイを受け入れるというところから始まって。まず、慶応義塾大学に入ったんですけど、入るのが目的みたいな感じでずっと頑張っていたので、入学したら目的を失ってしまったんです。かつ、大学独特のシステムみたいなものもあって、今までに経験したことがなかったことに面食らって、混乱に陥ってしまいました。
 
あと、ゲイである自分を高校までは受験勉強を理由に「恋愛には関心がない」っていうキャラで通していたんですけど、当時の大学生は「男女は付き合うものだ」っていう同調圧力が強かったので、どうやって振る舞っていけばいいのかが全くわかりませんでした。それに加えて父が末期がんになってしまって実家に呼び戻されて、実家から大学に通っているうちに行くのが嫌になってしまい1年間休学することにしました。
 
父は亡くなってしまったんですけれど、「人間は死んじゃうんだから、ちゃんと自分自身を受け入れなきゃダメだよね」って、そこでゲイである自分を受け入れることができました。それで女装を始めたんです。悩んでいた時期が1年くらいあったので、その反動というか、どうせゲイの世界でデビューしたんだったら、その中でも目立ちたいみたいな気持ちも出てきました。
 
――大学所属後は金融業界で働いて、その後退職してフリーランスとして活動するようにになったんですよね。
 
肉乃小路 女装の道一本でいく選択肢もありましたけど、私は昔から内館牧子さんや向田邦子さんが描く、企業で働いているOLや社会人の機微みたいなものが好きだったんですね。それでそういった一般企業で働く人の機微を経験しておいた方がいいんじゃないかと思って、金融業界に一番興味があったので証券会社に入りました。
 
会社を辞めて女装一本で働くようになったのは42歳のときでした。父が亡くなったのが50代前半だったので、元気に自分のやりたいことをやれる時間はそんなに長くないのかもしれないから、体が元気に動く40代前半のうちに興味のある発信の仕事を思い切ってやってみたいと思って。同じような舞台に一緒に出ていたマツコ・デラックスさんやミッツ・マングローブさんがメディアで活躍しているのを見て、自分にもできるんじゃないかという気持ちもありました。

■「常日頃から店のカラクリがどうなっているのか考えています」

――2024年4月にホリプロに所属するまではどんなことをしていたんですか?
 
肉乃小路 会社を辞めて独立してからは、言ってみれば鳴かず飛ばずでした。それでもお友達の店を手伝いながらそこで水商売の経験をしっかりとして、接客経験をみっちり積めたことはよかったです。そこで自分のコミュニケーション能力が開花したと思います。
 
そのお客さんの中に動画を作っている会社の人がいて、Yahoo!JAPANクリエイターズプログラムとYouTubeで動画配信をやってみることになりました。水商売以外の仕事にチャレンジする機会がなかったので、カメラの前で何かをするということの非常にいいトレーニングになりましたね。
 
比較的多くの人の目に留めてもらえるようになっていったので、フリーランスでそのままやっていても十分だったのかもしれないけど、より多くの人に自分を知ってもらったり、言葉を届けたるためには事務所に所属してバックアップを受けることが必要なんじゃないかと思って、ホリプロに所属することになりました。
 
――ご自身のことを“経済愛好家”とおっしゃられていますが、お金に興味を持つようになったきっかけは?
 
肉乃小路 自然とそういう環境があったというか、父方も母方も商売をしている家だったので、元々お金には興味がありました。レジの周りにいるのがすごく好きで、銀行に行くと両替機をずっと見ているような少年でしたね。親からは心配されていたんですけど(笑)、その時から私はお金が好きなんだなって思います。
 
――ご自身のYouTubeチャンネルで浜焼きの食べ放題に行ったときに、「イカは単価が安い」と言ってエビばっかり食べていた姿が印象に残っています(笑)。
 
肉乃小路 常日頃からどこに行っても「どういうシステムで儲けているんだろう?」と店のカラクリは考えています。商売って何か付加価値を付けて、それを売ってるってところがあるじゃないですか。その付加価値がどういうものなのか知りたくて、どういう仕組みで儲けてるのかなってずっと考えています(笑)。

■「同世代や若い人に少しでも生きやすくなってもらいたい」

――Xのプロフィールに書いてある“クイズおばさん”というのは?
 
肉乃小路 女装たちと旅をしていると問題を出したくなるんですよね。昔塾講師をやっていたので、そのときの癖みたいなものです。ちょっと鬱陶しいかもしれないけど、クイズ形式にすると興味を持ってもらえたりもするので、結構出しますね。
 
――じゃあクイズ番組に出てみたいという気持ちもあるんでしょうか?
 
肉乃小路 若い頃だったら出たかったですけど、50歳近くなると言葉が出てこなくて。わかるんだけど、言葉がぱっと出てこないんですよ(笑)。すごくみっともない結果になりそうだなって思うから…どうしようかな。でも、1回やってボロボロになってみるのも人生経験としてアリかなって思います。
 
――今後はどういう活動をしていきたいですか?
 
肉乃小路 私は仕事だけしか世の中に残すことがないタイプの人間なんですよ。だったら何ができるのかなって考えると、「こんな女装もこんな感じで生きてるんだから」とか「この女装、変な格好してるけどいいこと言ってるじゃん」とか、そういうふうに同世代や若い人に少しでも生活に役立ててもらって、生きやすくなってもらいたいです。そういう役割を与えられてるのかなって自分では思っています。
 
まだまだ日本ってそういった意味では非常に生きにくい感じの人も多いように見受けられるし、若い人とか本当にちょっとした工夫で生活がグッと良くなったりするのに、それをしていなかったり、できていなかったりする人がいるから、そういう人に自分が学んできた知恵や思考で使えるものがあったら役立ててもらいたいなと思っています。
 
私は出役としてやる以上、影響力は少しでも持っていたいと思うんですけど、そういった意味でももっと影響力を持った人なれるように頑張っていきたいと思います。

【リーズンルッカ’s EYE】肉乃小路ニクヨを深く知るためのQ&A

Q. もうすぐ夏ですが、夏の好きなところ/嫌いなところを教えてください。

A. 昔は肥満児だったので夏は嫌いだったんですけど、今はむしろ夏が好きです。どちらかというと冷え性なので、夏はむしろありがたいですね。暑過ぎるのには気を付けなきゃいけないですけど。ただ、日焼けにはすごく注意しているので、気温は好きだけど太陽は嫌い(笑)。昼間も長袖長ズボンにパーカーのフードとか帽子をかぶったりして、夏好きには見えない格好をしています。

<編集後記>

好奇心が強いという肉乃小路さん。本編では文字数の都合で泣く泣くカットしてしまいましたが、趣味の旅行は地理的な好奇心が強いからということで「最近は地政学もはやってますよね」とたずねてみると、地政学的に見た日本について自身の見解を語ってくれるなど、さすがの見識の広さ、知識量の多さに驚かされました。そんな肉乃小路さんは、最近は動画で情報を仕入れることが多く、YouTube鑑賞を通じて情報収集をしているそうです。

<マネージャー談>

初めてお会いした時、高身長に豹柄のワンピを纏い迫力満点、夢に出そうな印象でした。
ニクヨさんは言葉遣いが美しい。誰に対しても敬語で姿勢が崩れない。博識で品があり勉強熱心な方です。所作は吉永小百合さんや八千草薫さんみたいな、昭和の女優さんのようです。
「ニューレディ」とは見えた方を幸せにする、出会えたらラッキーな、まるで妖精のような存在なのかもしれません。
是非公式YouTubeチャンネル「Japanese drag queen」で色々なニクヨさんをご覧ください。

<撮影の様子はこちら!>

<書籍情報>

「確実にお金を増やして、自由な私を生きる! 元外資系金融エリートが語る価値あるお金の増やし方」
著者:肉乃小路ニクヨ
出版社:KADOKAWA
単行本:https://amzn.asia/d/4fZd9NI
Kindle版:https://amzn.asia/d/hWA1hbz
Audible版(特典付き):https://amzn.asia/d/6KyEnWJ
 
取材・文/須田紫苑
写真/まくらあさみ


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