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ひとつのイメージに縛られない存在に――木南晴夏が自身の女優業、そしてパン活を語る

2001年、高校一年生で芸能界デビューし、今年で芸能生活20周年を迎えた木南晴夏。現在は女優としてテレビに舞台にと八面六臂の活躍を見せているだけでなく、「芸能界イチのパンマニア」としても知られる存在となった。彼女が愛する役者業、そしてパンについて話を聞いてみました。

■芸能活動の根幹にあるのは芝居への気持ち

「与えられるものよりも、与えられないものの方が魅力的に見えるじゃないですか。それがもともと、自分がやりたいと思っていたものだったとしたら、なおさら」
 
木南晴夏が、現在も邁進する「女優」としての道を本格的に意識するようになったのは、芸能界に入って少し経った頃だったという。『第1回ホリプロNEW STAR AUDITION』 でグランプリを獲得し、16歳でデビュー。その後はアイドルユニットのメンバーとしても活動するなど、当初は与えられた仕事に全力で取り組む日々だった。
 
「デビューした頃は芸能の仕事にもいろんなジャンルがあることをわかってなくて、全員“テレビに出る仕事”、くらいのイメージだったんです。私もアイドルとして歌ったりグラビアをやったりしていました。そうやってマルチに活動するのが最初の1~2年くらいは続きましたね」
 
だが、もともと宝塚に憧れを抱き、幼少期から宝塚入学を目指してバレエやピアノ、水泳など様々な習い事をしていた彼女。慌ただしい芸能生活を送る中で、唯一距離のあった「芝居」に対する興味が高まっていった。
 
「芸能活動を続けるうちに、お芝居をやりたいという気持ちがどんどん強くなっていって、マネージャーさんに相談したんです。宝塚に憧れて芸能活動に踏み出した自分の根幹・根底にあったのは、やはりアイドルとして活躍することではなくて、お芝居をやりたいという想いでした。もちろん、アイドルとして活動したことも、今思えば貴重な経験でしたね」

■コメディもシリアスもこなせるニュートラルな存在に


 木南は女優業をメインに据えるため、木南は様々なオーディションを受けながら少しずつキャリアを重ねていく。その中で転機となった作品が、小泉響子役を演じた映画『本格冒険科学映画 20世紀少年』(2008-2009)だった。ヒロインであるカンナとしてオーディションを受けたため、小泉役として選ばれたことに一時は複雑な思いを抱くこともあったそうだが、映画のヒットもあり、その後の彼女を取り巻く状況は一変した。
 
「それまではオーディションに参加して、自分で仕事を取りに行くしか道がなかったのですが、『20世紀少年』という、大きな規模の作品に出演できたことで名前を知ってもらえるようになりました。それこそ、『勇者ヨシヒコ』シリーズに参加できたのも、『20世紀少年』の原作者である浦沢直樹さんと、『ヨシヒコ』の監督である福田(雄一)さんに交流があったからで。福田さんがまだ撮影前だった『ヨシヒコ』の話を浦沢さんにしたときに、“コメディをやりたがっている子がいる”と、『20世紀少年』を通じて面識があった私を紹介してくださったんです。同じように制作側から声をかけていただくことが増えましたし、『ヨシヒコ』以降は、特にコミカルな役やコメディに呼ばれることが多くなりましたね」
 
現在は、コメディ・シリアスといったジャンルや、主役・脇役といったポジションにかかわらず、その役どころに合わせた柔軟かつ的確な演技が大きな魅力となっている。今クールのドラマでも、『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』では、元暴走族の総長からラーメン屋に転身した夫を(厳しく?)支える妻を、『君の花になる』では、ボーイズグループの寮長となった妹を心配し、面倒を見る姉を演じている。
 
「コメディも好きですし、逆にシリアスでダークな部分がある作品も好きなので、そのどちらにも参加できる存在でいたいなと思います。例えば『君の花になる』で演じている主人公の姉役は、コメディでもシリアスでもない、すごくニュートラルな役柄で。そうやってひとつのイメージに縛られることなく、幅広くやっていきたいですね」

■パンシェルジュ検定2級が、ひとつの武器に

一方で、木南の活動やイメージを語る上で、もうひとつ欠かせない要素となっているのが「パン」である。パン好きが高じて雑誌やテレビ番組、本人のInstagramなど様々な形で全国各地のパンやパン屋を紹介。朝の情報番組『ラヴィット!』には、「木南晴夏のパン部」の部長としても出演している木南だが、パンが仕事に繋がったのは、マネージャーからのあるアドバイスがあった。
 
「パンは子供の頃から好きだったんですけど、仕事をはじめたときはそれを活かして何かをやりたいとまでは思っていなかったですね。ただ、若いときは全然お芝居の仕事がなかったので、名前を売るためにも何か仕事に繋げられる武器があった方が良いなと考えていて。そんなときにマネージャーさんが、“パンがすごく好きなんだから、どれくらい好きなのかを測れるようにしたら良いのでは”というアドバイスをくださって、それでパンシェルジュ検定2級の資格を取ったんです」
 
そこまでメジャーな資格ではなかったものの、パンシェルジュ検定2級という肩書の効果は絶大だった。そのプロフィールが目に留まり、雑誌『おとなの週末』の人気連載「キナミトパン」がスタート。世間にも「パンの人」として認知度を高めていくことになった。
 
「パンシェルジュを取ったことでパンの連載(『おとなの週末』連載「キナミトパン」)に繋がって、その連載を担当する編集者から“Instagramをはじめたら?”と言われたので、パンをいっぱいのせるためのアカウントも作りました。それが7年前くらいかな? そこからさらに広がって、いろいろな番組に呼ばれるようになりました。今でも一般の方からは“パンの人”として声をかけられることが多いですし、撮影現場でも、“どこのパンが美味しいですか?”と話しかけてもらえたり、共演者やスタッフとのコミュニケーションでも役立っていますね」

■「キナミのパン宅配便」をはじめるまでの苦労

今年の1月からはパンの配送サービス「キナミのパン宅配便」がスタートし、この夏には、サブスクリプション(定額)サービスとしてリニューアル。このサービスは、日本全国にあるパン屋の中から、木南が「これは!」と思ったパンを厳選。毎月6~8種類、冷凍で希望者の自宅に配送するというもの。パンを通じてユーザーとダイレクトに繋がる木南にとっても念願のサービスだが、スタートまでにはかなり苦労があったようだ。
 
「パンの冷凍と宅配のサービスを行っている『パンフォーユー』さんからお話をいただいて、まずは協力してくださるパン屋を探すところからはじめました。でも、それが最初の壁になりましたね。パン屋さんは、大手チェーン店でもない限り小売業なので、こちらに協力するための人員や時間を確保するのが難しいんです。もうひとつは、パンを冷凍することに慣れていないお店も多くて、最初の頃はサービスに必要なパン屋さんの数を集めるのが大変でした」
 
「キナミのパン宅配便」を継続的に稼働させるために、掲げた目標は1000名の会員を集めること。どれくらいの引き合いがあるのか木南自身も不安だったというが、サービス発表当初から反響は大きく、すぐに上限に。これには木南も驚いたという。
 
「正直、100人くらいしか会員にならないのでは? とも思っていましたし、1000人が集まるまでどれくらいかかるのかなと先を見て考えていました。それが募集を開始してすぐに集まったので、私もそうですけど、パンフォーユーさんもびっくりしていましたね(笑)。コロナ禍も続いていて、みんなお取り寄せに慣れているというのもあったかもしれないですし、やっぱり潜在的にパンを欲している人は多いんだなと思いました。今では、パン屋の方からも問い合わせをいただけるようになりましたね」
 
今後も女優業、そして芸能界イチのパンマニアとしてパンにまつわる仕事も並行して継続していきたいという木南。一見、そのふたつはかけ離れているように見えるが、彼女にとっては自身を表現する大切なものであり、愛すべきものであるのが、彼女の発言を通して真摯に伝わってきた。その強い軸は、今後も木南を前に進める原動力となり、何ものにも代えがたい魅力として輝き続けることだろう。

【リーズンルッカ’s EYE】木南晴夏を深く知るためのQ&A

Q:息抜きできる趣味は?

A.コロナ禍になる少し前から、絵を描きはじめたんです。今は絵画教室に通っていて、まだまだいろんなスタイルや技法を学んでいる段階なのですが、最終的に自分から描きたいものが見つかると良いなと思っています。そもそも昔から絵画鑑賞が好きで、自分の好きな絵画作品を買うというのが人生の目標のひとつでした。それが3、4年前、ニューヨークへ行ったとき、スカイラー・グレイさんという現代アーティストの作品に一目惚れしたんです。その作品をInstagramのストーリーにアップしたところ、なんと本人からDMで後押しがあり(笑)、絵画を買うという夢をここで叶えてしまいました。そのマネージャーさんにしたら、「自分で描かないの?」と言われて、それがきっかけで筆を持つことに。けっこうマネージャーさんの意見に流されやすいなーと思いますが(笑)、絵を描くことはけっこうハマっていますね。

Q:これから役者として挑戦してみたいことは?

A.宝塚が好きな私にとっては、ミュージカルは夢のような舞台なので、またチャンスがあればチャレンジしたいですね。ミュージカルや舞台って、同じ芝居を1日に1~2回、それを短くて1週間、長くて1ヶ月間はやらないといけない。そこで緊張感をずっと持続しながらお芝居ができているときはすごく楽しいんです。もちろん、身体は疲れるし、終わったときはもう二度とやりたくない! と追い詰められるのですが、やっているときの充実感はそこでしか味わえないものですね。

<編集後記>

この日の取材は、木南さんのプロフィール用写真を撮影した直後に行われました。今回のプロフィール写真、そしてリーズンルッカ用の撮り下ろしを担当したフォトグラファーは、木南さんの実姉である木南清香さん! ミュージカル女優として知られる清香さんですが、フォトグラファーとしても個展を開くほどの腕前。この日も笑顔が絶えない和やかな雰囲気の中で撮影が行われ、妹である晴夏さんのナチュラルな表情を引き出していました。

 木南清香 Sayaka Kinami
大阪府出身。京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業後、劇団四季に入団し『オペラ座の怪人』『ライオンキング』に出演。
主な出演に『レ・ミゼラブル』『ゴースト』『ミス・サイゴン』『ミー&マイガール』『ショウ・ボート』等。
近年はフォトグラファーとしても活動中。

<マネージャー談>

どんな時でも笑顔で、誰にでも平等に接して、周りへの感謝を言葉にして伝えてくれる、とても素敵な方です。
撮影の前に趣味の乗馬に行ったり、撮影の合間に近くのパン屋さんに行ったり、とてもエネルギッシュで、一緒にいるとパワーをもらえます。
パンをくださることもあるのですが、そのパンが絶対に美味しい…!
木南のマネージャーになるともれなくパン好きになります。

【プロフィール】
木南晴夏(きなみ・はるか)
大阪府出身。2001年、『第1回ホリプロNEW STAR AUDITION』でグランプリを獲得し、芸能界デビュー。以降、映画、ドラマ、舞台など幅広く女優として活躍。また、パンマニアとしてバラエティや情報番組にも多数出演。今年から、木南が監修を務めるパンのサブスクサービス『キナミのパン宅配便』がスタートした。
Twitter
Instagram 

キナミのパン宅配便


写真/木南清香
取材・文/森樹
 
ヘアメイク/神戸春美
スタイリスト/中井綾子
 
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