トレヴァー・ラビンの最盛期のデモトラック集「90124」

トレヴァー・ラビン(発音的にはレイビンのほうが近いですが、ここでは一般的に多くの媒体で使用されるラビン表記で書きます)はさまざまな分野で活躍する奏者、これは間違いないと思います。1983年から1994年までYESのギタリストおよびキーボード、YESの一部の曲も作っているのですが、1994年の「Talk」ツアー終了後、映画音楽へ活動をシフトすることになりました。
そしてしばらく映画音楽の業界にて活動したのち、2016年にYES featuring Jon Anderson, Trevor Rabin, Rick Wakemanを結成して、90125~Talkのアルバムを中心にツアー活動を行うなど精力的に活動しています。当初去年でグループの活動を終了する予定だったらしいのですが、例のウイルスによってツアーが中止になっているといった状況です。

活動の歴史

ラビンは、1954年南アフリカのヨハネスブルグにて生まれ、両親が音楽業界で活動していることより、自然と幼い頃から音楽と触れ合うことになります。そして1972年に結成したRABBITTにてデビューすることになります。1977年に1stソロアルバム「Beginnings(奇しくもYESの二代目ギタリストのスティーブ・ハウも同名のタイトルが1stソロアルバムです)」を発表するのですが、当時の南アフリカではアパルトヘイト問題があったため、海外のツアーを組むことができずにラビンは南アフリカから出ることになります。

ラビンはロンドンに移り、1stソロアルバムのリメイク(「Trevor Rabin」として発表)から2nd「Face To Face」、3rdソロアルバム「Wolf」を制作した後、4thソロアルバムの制作を始めることになります。このとき色々なレーベルにデモテープを送り、その一つが当時YESが所属していたアトランティックで、そのデモテープを聞いたプロデューサーのマット・ラングとフィル・カーソンがYESのクリス・スクワイアとアラン・ホワイトとの相性が良いと判断し、1982年に邂逅してセッションを行う。そこに同じくYESの初代キーボードのトニー・ケイと合流し、「Cinema」を結成します。その後、プロデューサーとしてトレヴァー・ホーンが加わり、ミキシング段階にてジョン・アンダーソンが加わったことによって、バンドは結局YESとなり、1983年に「90125」が発売されるとこれが大ヒットとなります。

ツアーも同じように長く続き、1987年に「Big Generator」が発表されてツアーも良いように進んではいったのですが、ツアー終了後ラビンとアンダーソンの仲違いなどの様々な理由からYESの活動が休止となってしまいます。この休止期間中の1989年に4thソロアルバム「Can't Look Away」が発表され、アメリカでもツアーが行われました。その後ジョン側のバンドと合流して8人YESで「Union」を発表し、1994年に「Talk」が発表されこのアルバムのツアー終了後、ラビンはYESを脱退することになります。

「90124」とは

さて話を今回のアルバムに戻すと、この「90124」に収録されている曲はCinema結成時~Talk発表までのデモトラックです。

1. Hold On(DEMO 1981)

アコースティックギターの演奏からストレートなロックな曲調に変わっていく曲です。「90125」の同名の曲と違いかなりストレートなロックな曲調だと思います。

2. Changes(DEMO 1981)

メロディーラインに関してはほぼ完成していますが、ブリッジのみ(いわゆるサビ)の歌詞が結構違います。あの長いイントロもジョン、クリスやホーンなどの影響で追加されたものだと考えるべきなのでしょうか。

3. Moving In

これも1と同じくHold Onのデモバージョンの位置づけにある曲です。こっちのほうが全体的にブリッジ以外はHold Onに似ているかも。

4. Would You Feel My Love

「90125」のために書かれた曲ではありましたが、結果収録されなかった曲。個人的にはたしかに「90125」もしくはYESの収録曲というより、「Can't Look Away」あたりのラビンのソロアルバムにある方が違和感ない曲だなあと感じました。

5. Where Will You Be(DEMO 1991)

正直「Talk」収録の曲の中でもあんまりパッとしない曲なのでコメントしづらいのですが…インストはこの段階でほとんど完成しているのではないでしょうか。

6. Owner Of A Lonely Heart(DEMO 1981)

YES再結成後で最大のヒット曲となった作品です。メロディラインは完成しているのですが、全体的にファンクっぽい…なんか80年代に多かったディスコとかで流れてそう(偏見)な曲調です。これをあのアルバムバージョンへ昇華する段階で一番影響があったのは、元Bugglesで名プロデューサーであるトレヴァー・ホーンの影響が大きかったそうです(ちなみホーンはDramaにてYESに参加して、アンダーソンの後任でボーカルを務めています)。

7. Walls(DEMO 1990)

Big Generatorのツアー終了後、抜けたアンダーソンの後任としてSupertrampのロジャー・ホジソンと一緒に録音したときのデモトラックです。結局ジョンが復帰したことによって、話は流れてしまいましたが、「Talk」に収録されているトラックでもちゃんとボーカルトラックが残っています。

8. Promenade

ムソルグスキーの「展覧会の絵」より第1プロムナードをギターで演奏したトラックです。時期的には「Big Generator」の曲を書いているときに録音したものです。

9. Love Wii Find A Way

元々ラビンがFleetwood Macのスティーヴィー・ニックスのために書き下ろした曲でしたが、結局「Big Generator」に収録されることになりました。ちなみに「Big Generator」は作曲面で、この曲しかスクワイアからOKが出なかったそうで、基本的にラビンおよびアンダーソンは他のメンバーの曲を作品として昇華する方面にシフトしていたらしいです(アンダーソンも1曲のみでの採用で、他の楽曲はほとんどメンバーの共作)。

10. Miracle Of Life

唯一「Union」からのデモトラック。アルバム版よりもだいぶハードな感じに仕上がっています。デモ段階でもやっぱり完成度は高いですね…

11. Don't Give In(a.k.a. Make It Easy, DEMO 1981)

初期のCDには「Cinema(90125のCinemaは元々Timeという曲の20分ほどにもわたるインストゥルメンタルのイントロ部分らしいです。Wikipedia調べなのでちゃんとソース不明です)」と誤植されている、Make It Easyのデモトラックです。この曲はGonzo MusicのYouTube公式アカウントにもアップロードされています。私としてはラビンがメインボーカル取ってる曲はこういうシンプルに振り切れているほうが好きです。

まとめ

割と誰得記事になってしまいましたが、トレヴァー・ラビンの作品自体は80年代のスタジアムロック、JourneyとかTOTOとかなどの曲が好きな人には結構受け入れられる作品だと個人的には思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?