感染症流行との向き合い方について考えたこと(その2)

 人間に被害を与える自然現象には科学的な認識を土台とした合理的な対策が求められます。

 危機的状況においても人びとが理性的に判断して行動するためには、わかりやすい説明がなされる必要があります。今回の感染症の流行について言えば、原因ウイルスの性質、感染経路、感染力、症状、診断方法、治療方法とその効果、致死率などについてもっと政府からていねいな説明があってしかるべきでした。

 政府はさまざまな行動制限(学校の休校、入国規制、営業規制、外出自粛など)を実施しました。しかし、こうした政策にどのような合理的根拠があるのか、必要性と有効性についての説明は充分になされたと言えるでしょうか。また、政策の事後評価はきちんとなされているのでしょうか。
 
 政府はワクチン接種を無料化して、接種を推奨してきました。しかし、今回のメッセンジャーRNA型ワクチンについては、(1)思いがけない生物学的事象が副作用として生じる可能性、(2)変異した原因ウイルスに対して有効性が低下する可能性、が事前に指摘されていました。(1)については、病原性ウイルスのメッセンジャーRNAを体内に注入するのは人類史上初めての経験であること、(2)についてはCOVID-19の原因ウイルスは1本鎖のRNAを遺伝情報の記録媒体としているため変異(遺伝情報の複製ミス)が生じやすいことがその根拠です。実際、接種後に短期間で死亡した症例、あるいは重篤な後遺症が疑われる事例が多発しています。死亡された方については、できる限り漏れなく病理解剖を実施して接種との因果関係を精査する仕組みをつくっておくべきです。後遺症の疑いについても早急な医学的研究が必要です。また原因ウイルスは大きな変異を繰り返しており、ワクチンの感染予防効果の低下も指摘されています。

 COVID-19の流行が始まったころ、当時の首相はこれを「国難」と表現しました。私の手元に役所から送られてきた文書にも「国難」という言葉がありました。そもそもウイルスは生物の細胞に寄生して、自己複製する場として利用する生命体です。感染症の原因ウイルスは国家という人為的な統治機構を攻撃しているわけではありません。こうした科学的態度から外れた思考が、対策を迷走させ、問題状況を引き起こしてきた遠因のひとつではないでしょうか。自然現象に起因する社会課題については、その自然現象を科学的に分析、解明するとともに、科学的知見にもとづく対応が必要です。もちろんこれは科学的認識に頼れば課題を解決できることを意味しているわけではありません。科学的知見や科学技術を駆使したところで、あらゆる自然現象を人間にとって都合よく統御できるわけではないのですから。

(注)
この文章は2023年1月現在の状況にもとづいて執筆されています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?