春時雨

あの人といっぱい話したいことがある。

あの人は今どうしてるんだろう。

いつだって話できる人とそうでない人と。

全部だいじにして来ればよかった。

ケータイやネットのおかげで、今出逢えた人たちとはすぐ連絡が取れちゃうけれど、あの時出逢ったみんなとは容易にそれができない。

私の大事な時間があそこにあって、それを懐かしんだり共有したりすることの困難が便利さによって突きつけられる。

そもそも懐古なんてものは不毛なのかもしれないけれど。
共有なんてしたくないって迷惑がられるのがほとんどかもしれないけれど。

私はそういうところがわたしだから。

勇気があるだけじゃだめなんだ。
経験だけ積んでもだめなんだ。
運の問題ならもうどうしようもない。

思い馳せるのはきっと、春の冷たい雨のせい。