眠ってはいけない!〜出産小話

不眠に関する記事を書いていて、ふと今までの人生の中で最大級の眠気と闘ったときのことを思い出した。不眠とは真逆、壮絶な睡魔との闘いです。

最大級の眠気

人は眠ってはいけない状況であればあるほど、強烈に眠気を感じるのではないでしょうか。

例えば試験勉強してるときなんかは誰にでもありますよね。

私は、次降りるっていう電車の中とか(いっそ終点まで行こうかとすら思う)。仕事で、急ぎではない入力作業をひたすらやってるときとか(目線の先に総務のキビシイ女性の顔があるのに頭がカクカクする!タスケテ!)。講座や講演で張り切って前列の席に座ったのに思いのほか話がアレで(笑)睡魔がやってくるとか(先生の目の前で寝るわけには!)。子供のおままごとに延々付き合わされて、「イラッシャイマセ」「これくださいな」「ハイ、ゴジュウエンデス」のやりとりがエンドレスのときとか(地獄)。

色々ありますね、うん。

でもそれらの睡魔を軽く凌駕するくらいの壮絶な眠気を感じたのが…

なんと出産のとき!

それも分娩台の上だったんです。

陣痛キタ!

今から19年前、私は臨月パンパンだった。予定日も過ぎていつでも来いや!の準備おっけーの体制。そしてその日は来た。朝方6時頃、ドーン!とお腹を突き破らんばかりの衝撃で起こされる。キターーー!

オット(当時)を起こす。病院に連絡し、準備をして車で向かう。ちょっと遠い病院だったので、9時くらいに到着。テレビのある別室で待たされる。まだテレビを見る余裕はある。そのうち入院する個室が整ったので移動。痛みの間隔はまだあるのでオットと話したりもできる。(陣痛は痛みが来てしばらく無痛になり、また痛みがくるという繰り返しなんです、念のため)

そのうちお昼ごはんが運ばれてきて、無痛の間に食す。確か全部食べ切れなくて残りをオットが美味しそうに食べてた気がする…返せ、私の昼メシ。午後、だんだんと痛みが激しくなる。言ってみれば大きな漬物石がお腹の中でその重みを最大限に利用してドーン!ドーン!と下がってくる感じ。その度に体がくの字になったり反ったり。そして下に下りきったところでゴッ止まる。ドーンって下がってゴッて止まる。くの字になる。反る。どこかに思いっきりつかまる。いきんだらいけないと言われているが、自分の意思とは逆に下がってくるからお腹が自然と収縮して出そうとしてしまう。それを阻止しろという。どうやって阻止したのか今となっては覚えていない。必死。

とにかく全身力を入れると出そうになるから入れないようにするが、漬物石が暴れてるのに力抜くなんて出来るか!ってなもんです。ヨガでものすごいキッツいポーズをして、全身力入ってプルプルしちゃってるのに、ハイ肩の力抜きましょう〜骨盤もリラックス〜って…ムリっす!っていうのと似てるかも。

そうこうしてるうちに痛みの間隔も短くなってきて、そのわずかな無痛のときを狙って、浣腸に行く。漬物石はまだ出しちゃダメだけど、もうひとつの内容物はすべて出せ、という無理難題を自分の体に課す。体も混乱。私もヘロヘロ。

普段運動もしないし、筋肉も体力も極端にない私にとって、この全身運動はかなりのハードモードだった。へっとへと。

いざ!分娩台へ!

夕方6時半ころ、ようやく子宮口も開いてきたので、いよいよ分娩台へ。

そこでやっと「いきんでいいよ」とお許しが出る。ふわぁあああ〜〜〜!やっと出せる!運動しないといいながらもマタニティスイミングは通っていて、そこで習った例のヒ、ヒ、フーの呼吸を、今こそここで!とばかりに披露する。「呼吸上手いね!」と先生に褒められる。嬉しい。

ところが!いきむのも全身ふりしぼるのでかなり疲れるし、朝からずっと漬物石と闘ってるしで、もうHP3%くらいしか残ってないんですよ。正直疲れ果ててる。今じゃ痛みと次の痛みの間が多分1分くらいになってるんだけど、そのわずかな無痛のときに、はい、ここでキョーレツな睡魔が襲ってきたわけです!

痛みがないってシアワセ〜!ってふわぁって気持ちよく眠りに入ってしまった。
はっきり言って難産でもないし、もっと大変なお産の人は山ほどいる。たったこれだけの陣痛でメッタメタに疲労して、挙げ句の果てに眠くなるなんて聞いたことないよ!…と自分でもつくづく思うが、寝てしまったのだから仕方ない。

そして看護師さんが気づく。

「あなた!なに寝てるの!?寝ちゃダメよ!!!寝たらお産が長引くんだから!!!」

プールの後の昼寝って最高じゃないですか。水の中って疲れるし、泳ぐって全身運動だし。そのあとの心地よいダルさを解放して畳の上でふわーって眠る、あの感じ。あれの数十倍激しいバージョンだと思ってください。

どんなに看護師さんに怒鳴られようと、1分ですよ?たった1分インターバルで寝かせてくれたっていいじゃないですか。今ここで寝られたらどんなに至福か!「ちょっとだけ…ちょっとだけ寝かせて…」というか目が勝手に閉じちゃう…グウ…。

叩かれる

私があまりにも言うことをきかないんで、危機を感じた看護師さんは立会い出産をしていたオットに、

「ホラ旦那さん!ちょっとほっぺたひっぱたいてあげて!」

今なら分かる。お産が長引くと赤ん坊が危険なんだろなってことは。看護師さん、あのときはすみません。

しかしオットは変に遠慮して(いや、もしかしたら笑いをこらえて?)「ほら、起きなよ」と優しい声でかる〜くペチペチ、としか叩かない。私としても起きなくちゃという気持ちはあるので、オット…そんな叩き方じゃダメなんだよ…と言いたいが朦朧としてあまりしゃべれない。

結果、「もっと…ハァハァ…、つ、強く…」なんのプレイだよ(笑)

そんな感じで、いきむ→睡魔と闘う→いきむを繰り返し、何度も何度も看護師さんに怒られて、まあなんとか出産出来たわけですが。
でも睡魔でぼーっとしてたからか、出て来た瞬間が分からなかったんだよね。経験者はみんなその瞬間はふつうに覚えてるみたいなんだけど…

ちなみにお産のあとのオットの感想。

「もっと感動するのかな、と思ったけど、こんなに笑えると思わなかった」

立会い出産台無し…

まぁ、無事に生まれてくれたのでよしとしてます。その後は「あたしコドモを産んじゃったよ!」というナゾのコーフンに満ち溢れて一晩中眠れなかったという…あの睡魔はどこへ!!

後にも先にもあんなに眠かったことはないです。


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