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会食恐怖症わかる

会食(外食)恐怖症の気象予報士の話が出てた。これ、わかるなあと思って。

もちろん、僕も今はそんなことないけど、ある時期、この症状に心底悩んだことがあった。

フランス料理


それは一浪を経て、大学に受かった春のこと。前期の合格発表の日はびびって電報が届いてから掲示板を見に行って、同級生にさんざんバカにされた。で、その友達と夜、三条の王将で祝勝会をした。慣れぬビールとバカ食いで、鴨川べりにでて吐きそうになってた。何とか吐かずに帰宅したが思えばこれが予兆だった。

何日かした後、その友達の親の招きでちょっといい店で、高校の同級生十数人を集めて、改めて祝勝会をしてくれることになった。それは、高級住宅街にある瀟洒なフランス料理店で、その友達の親が経営していた。なんでも、本来は10000円するコース料理を半額の5000円にしてくれるのだという。その店はその数年後に閉店してしまうのだが、今にして思えばもうその頃から苦しくてちょっとでも売上になればということだったんだろうか。それはわからないけど。

そこはおいとくとして、僕はまたのこのこ親からもらった五千円札を握りしめて参加したのだ。飲み物が出され、前菜が出始めると、それは始まった。

なんの予兆もなく急に吐き気が止まらなくなったのだ。体調が悪かったわけではない。むしろ、いっぱい食べようと思って朝御飯を控えめにしていったくらいだったのだ。

前菜、もうほとんど一口しか食べれず。その時は給仕しているその子の母親も「苦手だった?」ですんだ。その次、イカスミのパスタ。もう吐きそうでとにかく目をつぶって吐き気を抑えるしかなかった。だって、食べ物みたらもう何かが口から飛び出してきそうだったから。さすがにそうなると、向こうのお母さんも「大丈夫?体調悪いの?」と聞いてきた。ぼくもそこで「はい」とは言ったものの、熱もないわけで。そして、「おいしいから、ほんと一口でも食べて。もったいないし」と勧めてくれたが、全然だめ。同席している友達もさすがにひいていたが、結局その後の料理は一口も口にできなかった。帰り際に向こうの親に謝られたけど、失礼なことして謝るのはこちらな訳で、屈辱と恥ずかしさでせっかく新しい春が始まるはずなのに絶望した。

サークルでも

大学が始まると、ご多分に漏れずサークルの勧誘にあう。ついていくと簡単なご飯とか奢ってもらえるわけだが、ここでもあの症状が出た。

そもそもテニサーの顔面セレとか言われて、自分より不細工な上級生に選別されるのに飽き飽きしていたので、何をどう間違えたか、すごく真面目そうな雰囲気のあった体育会スピードスケート部についていってしまった。で、どっかファミレスか生協だったか忘れたけど、ピザを頼んでくれたのに、やっぱり吐きそうになって一口も食べれなかった。でも、その時は他にも人がいて、軽食一皿だったから紛れたし、こちらも罪悪感は少なかった。見学会で今はもうない高野アリーナでスケート体験だけはしっかりやって帰った。その後、医学部の人から熱心に勧誘を受けて、自宅まで電話をかけてきてくれたのだが、会食恐怖じゃないけど、なんか怖くて断った。悪いことしたなと自分がまた嫌になった。

つくたべ

いつのまにかその症状はなくなってて、一時的なものだったのだろうから、そういうことがかつてあったことは忘れていたけど、こないだまでNHKでやってた「作りたい女と食べたい女2」で会食恐怖に苦しむ登場人物がいて、昔のことを思い出した。あの時の自分はまさにそうだったんだろうと。大学に受かって新しい暮らしが始まるのは嬉しかったけど、それまでとは大きく環境が変わることに思った以上に不安を感じていたのかなと思う。気象予報士の記事も見て、自分のことも記録しようと思った次第。

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