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第4章 スキマ時間を活用する勉強法−机に向かう時間を減らす(2)電車を「書斎」に(続)

前回記事「第4章 スキマ時間を活用する勉強法−机に向かう時間を減らす(1)電車を「書斎」に」で、通勤・通学の電車での時間は貴重な勉強時間であること、久恒啓一さんの「通勤時間の使い方で、一生が決まる!」という考え方をご紹介しました。

今回は電車を「書斎」として効果的に活用するための秘訣をご紹介いたします。

久恒さんは必ず座れる始発駅に引っ越しをし、下車駅までの車内での時間を勉強に充てておられました。

私の場合、前任校時代は、小田急線に乗り換えるために、池袋駅から新宿駅までJR線を使う必要があり、この区間の混雑の回避は重要な課題でした。

と言いますのも、大学生の頃から「パニック障害」を患っており、混雑した列車に乗ると発作を起こすことがしばしばあったからです。

そこで一時期、埼玉県坂戸市に引っ越し、職場の神奈川県内の私立短大まで通っていたことがありました。家賃が安い上に、また早朝時間帯の普通列車はほぼ確実に着席できて、かつ混雑したJR線に乗り換えずに新宿(新宿三丁目駅)まで行くことができたため、かなり重宝していました。

帰宅時は新宿駅からJR埼京線の始発列車に乗り、池袋駅で東武東上本線「TJライナー」に乗り換えて、すべての区間で着席できていました。

その後諸事情により、再び都内へ引っ越し、朝のラッシュ時に乗車駅から着席することは不可能となりましたが、地元の駅から数駅先の駅までは立席であるものの、その駅で大量の下車があり着席できるため、池袋までは大きな不自由はなくなりました。

しかし再び、池袋駅→新宿駅の間で混雑をどのように回避するか考える必要に迫られました。

この区間で始発列車があるのは、遠回りになりますが、地下鉄丸ノ内線です。しかし、朝ラッシュ時は池袋駅も大混雑していて着席するためには数本の列車を見送る必要があったことや、池袋駅ホームの混雑がかなり激しいこともあって、利用することはあまりありませんでした。

そこで少々高額ですが、池袋駅↔新宿駅間はJRのグリーン定期券を購入していました。現在の同区間の定期運賃(大人・1ヶ月)は4,940円なのに対して、グリーン定期券(同)は27,990円です。その差は23,050円です。

グリーン定期券は、普通列車のグリーン車を有効期間内に何度も利用できる定期券です。首都圏のJR線の定期普通列車に連結されているグリーン車は自由席であるため、混雑時には座れないこともあります。そのため、グリーン定期券でも座れないことがあります。

実際、朝の池袋駅→新宿駅の区間では、グリーン車でも立席が発生することがあります。それでもグリーン車に乗るのは、普通車の混雑を避けたいニーズがあるからです。

この区間の乗車時間は約5分間ですが、ほぼ毎回座れましたので、車内では勉強に充てていました。月20日、長期休業期間を除いて約9ヶ月、合計180日この区間を移動しており、1回5分でも、年900分(=5分×180日)となります。往復で年30時間の勉強時間を確保できました(帰りは新宿駅始発列車が利用できますが、混雑時は出発時刻直前は着席が難しいため、普通列車グリーン車が重宝しました)。

私立短大に勤務した11年間のうち、7年ほどグリーン定期券を購入しましたので、グリーン車利用により合計で生み出された勉強時間は210時間にもなります。

これは、日本商工会議所簿記検定2級合格に必要な勉強時間(通信講座受講の場合、150〜250時間)に相当します。計算上は、5年間で必要勉強時間150時間に到達します。

毎日の通勤電車で往復たったの10分間の勉強時間を確保するだけで、数年間で比較的難易度が高い検定試験に合格できる学力レベルに到達することも可能です。

塵も積もれば山となることがよくわかると思います。毎日漫然と通勤電車をやり過ごしている人と比べると、大きな差をつけて引き離すことができます。

日本マイクロソフトの社長を務めた成毛眞さんは著書『本は10冊同時に読め』(三笠書房、2008年)の中で次のように語っておられます。少し長くなりますが、引用します。

私は行き帰りに電車を使わずタクシーを利用している。それは本を読む時間を確保するためである。電車だと混んでいたら本を開けないし、乗り換えのための時間がもったいない。それなら5000円を払ってタクシーに乗り、本を読む時間を2時間確保したほうが得だと思う。

毎日5000円、年間200日通勤するとして、1年間のタクシー代は約100万円。100万円で400時間を確保できるのを高いと思うか安いと思うか――そこで人生に大きな差が出る。

お金をとるか、時間をとるかという場面でお金をとっているような人は、一見、損をしないように思えるが、長期的に見ると大きな損をしている。

お金は目に見え、時間は目に見えないのでつい見失ってしまいがちだが、時は金なり。お金はなくなっても働けば手に入るが、なくした時間は取り戻せない。世の中は、目先の利益しか目に入らない人は、多くを損するようになっているのだ。

逆に、多少の犠牲を払ってでも時間を最優先させる人は、結果的により多くのお金を手に入れられるのである。

仕事が忙しくて読書をする時間がないのなら、お金を払って読書する時間を買えばいい。それは自分への投資である。その投資は決してムダにならず、必ず役に立つときがくる。同期がみんな満員電車にもまれてへとへとになっているときに、自分は悠々と通勤でき、本で知識もつけられる。知識があれば商談でも生かせるし、企画を立てるときにも有利だ。そうすれば出世への道も開ける……という具合に、いつか倍以上になって自分に戻ってくるのである。

1時間半以上かけて通勤しているような人は、さすがにタクシーは利用できないだろうが、そういう人は特急のグリーン車を利用すればいい。満員電車で身をすりへらすくらいなら、グリーン車でゆったりと読書をしながら会社へ向かうほうが有意義だろう。
つまり、会社から離れている時間まで会社に投資する必要はない、ということである。会社がお金を払うのは、会社にいる時間に対してだ。(中略)通勤時間は寝て過ごし、土日も寝て過ごしているようでは、人生のすべてを会社につぎこんでいるようなものである。

(中略)今は大企業ほど人を簡単に切り捨てる次代である。退職金わずかなお金を手に入れても、費やした時間は戻ってこない。
そのときになって後悔しないよう、自分の時間はお金を払ってでも大切にしたほうがいいだろう。

成毛眞『本は10冊同時に読め』三笠書房、2008年。

私はグリーン車や小田急ロマンスカーの車内では、新聞に目を通したり、資格試験の勉強に充てることにしていました。

その成果として、2015年に総合旅行業務取扱管理者試験に、2017年にインバウンド実務主任者認定試験と運行管理者試験(旅客)に、そして2018年に運行管理者試験(貨物)に、それぞれ合格することができました。

宿願だった観光・まちづくり分野の教員ポストを目指す上で有益と考えた資格試験の合格を電車の車内での勉強により実現することができたのです。

電車での過ごし方は、まさに一生を左右します。そして、電車での時間をより効果的なものとするためには、必ず座れるようにしなくてはなりません。電車を「書斎」として活用するために、特急指定席や普通列車グリーン車はとても重宝すると思います。

お金は何らかの方法で稼ぐことができますが、過ぎ去った時間はお金では買えません。有益な時間を確保するための投資は惜しまないようにしたいものです。




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