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《小説》おばあちゃんの手紙

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朗読手書き小説としてYouTubeでもお聴きいただけます♪ 寝る前に流し聞きなどいかがでしょうzZ 【あおいろ万華鏡ch】にてお待ちしております🩵
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2022年12月の記事一覧

おばあちゃんへの手紙15-3

おばあちゃんへの手紙15-3

「おばあちゃんご苦労様、
これからのことは私たちに任せてください。
だからゆっくり休んで体を治して…。」

にっこり笑って、
佳乃は高らかに、そう宣言した。

あまりにも凛として
迷いのないその澄んだ声音に、

一同当意即妙に答える言葉もなく、
お互いに視線を泳がせていると、

佳乃は身じろぎもせず、語を継いだ。

「私、ずっとおばあちゃんを見てたの。
どうしてこんなに静かなんだろうって。

ただ

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おばあちゃんへの手紙 16-1

おばあちゃんへの手紙 16-1

その後も順調に歩を進め、
七十七番札所道隆寺を訪れたところで、

子供たちと修練している、
少林寺拳法の総本山を
見学しに行こうということになった。

開祖、宗道臣が
戦争で体験した辛い経験を踏まえ、

「力の伴わない愛は無力、愛の伴わない力は暴力」
「人づくりによる国づくり」の理念をもとに、

しっかりとした力と愛を持った若者を、
敗戦から復興していく日本を
導くリーダーとして育てよう、
ひいて

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おばあちゃんへの手紙 16-2

おばあちゃんへの手紙 16-2

そう言いかけると、
こちらを振り向いていた職員の方々が
全員立ち上がり、

私たち家族に合掌し、
「おかえりなさい」と微笑みかけてくれた。

少林寺拳法では、
拳士が本山に行くのではなく、
帰る“帰山”と表現する。

故に本山にいる者は、
訪れた拳士に対して、“おかえりなさい”と迎える。

知ってはいたが、
いざ現実に経験すると、とても不思議な感じで、
それでいて何か温かいものに包まれるような、

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おばあちゃんへの手紙 最終章

おばあちゃんへの手紙 最終章

最終日、ついに最後のお寺である。

八十八番札所、大窪寺を迎えた。

4年がかりとはいえ、
本当に88もの寺院を
小さな子供たちを連れて
家族で周りきれるなんて、
正直思ってもみなかった。

目標は結願としても、
やれるところまでやってタイムアップでも、
仕方ない。
それで良き思い出になるだろう。

そんな軽い気持ちで始めた。

それよりも大切なことは、

おばあちゃんの夢から始まったこの流れを

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