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《小説》おばあちゃんの手紙

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朗読手書き小説としてYouTubeでもお聴きいただけます♪ 寝る前に流し聞きなどいかがでしょうzZ 【あおいろ万華鏡ch】にてお待ちしております🩵
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2022年4月の記事一覧

おばあちゃんへの手紙6

おばあちゃんへの手紙6

最初のおばあちゃんの夢を見てすぐに、
私は四国八十八ヶ所のお遍路を思い立った。

おばあちゃんのお墓参りをするうちに
仏教というものに、にわかに興味を抱き、
うちのお寺が真言宗であったというご縁もあり、
弘法大師ゆかりの地を巡礼してみようと思ったのである。

ただ歩き遍路は時間的に難しいので、
家族一緒に車で回れば良いだろうと車遍路を選択した。

半分は家族旅行がてらの軽い気持ちで、
その夏休みか

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おばあちゃんへの手紙7

おばあちゃんへの手紙7

御本堂では
正座をさせられるかと思ってヒヤヒヤしたが、
背もたれのない椅子がずらりと並べられていて
ホッとした。

私たちが着席すると、
和尚様はご本尊様が祀ってある
一段高い畳の間に上がり、
我々の方を向いて正座した。

「これからみなさんは
八十八箇所のお寺をお参りするわけですが、
真心のお参りで受けた納経印や修行着、金剛杖は、
一生のお守りとなります。
どうか、みなさんの一番大事な願いを

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おばあちゃんへの手紙8

おばあちゃんへの手紙8

二日目に入り、道も徐々に険しくなってきた。

徳島県には、
88ヶ寺中23の寺があるが、
その中でも12番札所に当たる
焼山寺(しょうさんじ)へとむかう道は
難所と知られている所だ。

歩き遍路では、
健脚5時間弱足8時間と言われ、
最初に出会う峠越えの難所。

たとえ車といえども
運転していてクタクタになる。

車一台がやっと通れる山道で
片側は山の腹、片側は谷底へ落ちていく崖
といった感じで、

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おばあちゃんへの手紙9-1

おばあちゃんへの手紙9-1

雪舟さんのあとについて、
まずご本堂の前へと着いた。

雪舟さんはしばらく手を合わせて黙想した後、
小さく何やらつぶやいて、
おもむろに持っていた持鈴を目の前にかざし、
ゆっくりと一定の間隔を開けながら鳴らした。

持鈴は魔除け、獣除けの鈴として
通常頭陀袋などに下げて歩いているのだが、

読経の際には
その場の空気を清らかな波動で整える役割を持つ。

澄んだ美しい鈴の音が
チリーン、チリーンと響

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おばあちゃんの手紙9-2

おばあちゃんの手紙9-2

そしてみんなの後ろに
回り込みながら移動を始めた。

もちろんみんなはその場で
直立不動のまま宝号を唱え続ける。

「南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛、、、、」

おもむろに雪舟さんは
一人の背中にむけて合掌したかと思うと、

右手の人差し指中指2本を立てて、
その背中に文字のようなものを振りかざし描いた。

瞬間私は、「梵字」だと直感した。

梵字とはよく卒塔婆の一番上の部分に書かれている

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