お話を聴くこと

開業税理士だった頃の話。

仕事がたまりにたまっていたので、土曜日出勤したある日。
事務所の鍵を開けて間もなく電話がなった。

本来なら休みだし、出なくても良かったのだけど。
出てしまった。

あ。やっぱり。いると思って。

話好き、愚痴好きの方。
顧問先の社長の奥様。この時期は、休みに事務所へ出る事はほぼないのに、すごいなあ。
と思いつつ、お話を聴くことに。

ありがとうございます。
奥様もお身体お大事にしてください。

聴き終わって時計を見ると、17時ちょっと前。
電話に出たのが9時過ぎ。
長かったなあ。

そこへ主人が、事務所へ現れる。
15時くらいに帰ると言って出たのに帰宅しないので、心配して来たのだと言う。
いつもは21時くらいに帰っても心配しないのに?

急な電話といい、主人のお迎えといい、不思議な日だったな。
まあ、仕事も半分は終わったし、帰ろうか。

あ!おいっ!

席を立つか立たないかで主人が叫ぶ。

どしたのその耳!

8時間受話器をあてていた私の耳は、真っ赤に腫れていた。
痛みはないものの、あきらかにほんの少し、反対側とは大きさが違う。

お前、何時間、ひとの話に付き合ってんの?
いつもいつも。
大概にしろよ。


まあ、いいから。
こんなこともあるよ。
今度はもっと工夫して聴くからさ。

と言って帰路につく。

数日後、再び奥様からのお電話。
その日は短かった。

実は、ずっと眠れてなくて、愚痴ばかり言っててごめんなさい。
でも、あの日は、ぐっすり眠れたわ。有難う。

こちらこそ有難うございます。
お役にたてて嬉しいです。

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