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【不動産屋の雑談】ヘッドマッサージ中は音もなく眠りたい

いま、もしかしてイビキをかいていたかもしれない…

初めて訪れた美容室でオプションで付けたヘッドマッサージがあまりに気持ちよく寝てしまっていたようだ。

急にまどろみから覚めるこの感じ、自分のイビキに驚き起きるあの感じだが、まさかここで…?

顔全体を隠すタイプのふんわり紙を乗せられたままなので、相手の反応は分からない。

気にしすぎかも、少し深く息を吸いすぎて鼻が鳴っただけかもしれない。
ちょっと試しにいま深く息を吸ってみようか
スゥー
…鳴らない
もう少し深く吸っても、鳴らない。
どう息を吸っても何の音もしないということはイビキなんて気のせい、ということか。



しかし、ここのマッサージ小指にまで力がこもってとても、気持ちいい。
頭蓋骨ずれるんじゃないか、というくらいのこの押しがたまらない。
いい…

はっ

いま、また、寝てしまっていた。
そしていま、また、イビキ…


不動産屋で働いていたとき、新婚の2人を物件案内したことがある。
「僕の実家の近くで探してて」と言うので聞くと、案内したマンションのすぐ裏がご実家らしい。条件の良い物件を見つけ男性は饒舌だった。
女性の方は特に何を言うわけでもなかったが、ワンピースとその日傘でモネの絵画のように穏やかな印象であった。

雲行きが怪しくなったのは洗濯パンのサイズの話をしていたときだ。
どうやら男性の方が持って来るべきメジャーを忘れ洗濯機が置けるかどうかはっきりしないようなのだ。

数字に もし間違いがあったら大変なので私は原則カーテンレール等計って告げたりしないのだが、先程まで穏やかだった女性が
「あんた実家、近いんだから借りてきなさいよ!!」とシャウトしたところで
「あとで計ってお電話しましょうか」と声をかけた。が、振り返り微笑む女性は優しく「そんな、大丈夫ですよ」と言う。

ならば、私に口出すことはもうない。駆けていった男性の帰りを女性とマンションの部屋で静かに待った。

そもそも男性の実家近く、という条件が気に入ってなかったのかもしれないな、などと考えていると 彼女が

「案内中にケンカする人たちって、いないですよね?」と聞いてきた。

はい、これが意外といないのだ。
いても機嫌悪そうだなぁ、位までである。

だけども、私は立派な社会人なので「いいえ、結構いらっしゃいますよ。」と言って、微笑んでおいた。


ヘッドマッサージが終わり、どうでしたか?と聞かれたので
「すごく気持ち良かったです。」と答えると
「すぐ寝てらっしゃいましたものね」と言われた。
バレている。私はおずおずとこう言った
「イビキ、でてましたよね。そんな人、あまりいませんよね」


「いいえ、結構いらっしゃいますよ」

言うよね~。

でもまぁ髪型もだが、振りほどきたくなる程強めの仕上げの肩マッサージも私の好みなのでまた来ようと思う。
歳を重ねるとこういうところで心が強くなって、良いなと思う。


ちなみに洗濯パンのサイズは合ったようで無事契約となった。
私はそのカップル案内の反省を生かし、その後の案内はメジャーを持ち歩くようになったのでした。
めでたしめでたし。

気に掛けてもらって、ありがとうございます。 たぶん、面白そうな本か美味しいお酒になります。