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しばれた体を暖めて

「北海道出身なのに、寒いの苦手なの?」

バイトを終え着替えていると、
店長に言われた。

「そうなんすよ、むしろ冷え性です。」

なぜ寒いところに住んでいる人の体が、特別にできていると思うのだ。

そんなツッコミをふと思いながら、同時に確かに面白いなと思った。北海道に倭人がやってきて、占領してしまった経緯から考えると、僕の中には寒いところに適応できるような遺伝子は入ってない。

僕の先祖は、どこからきたのだろう。

『夜と一緒』:シマフクロウ

普段僕は、「北海道出身なんです」を、自分を説明する上で必ず伝えるようにしているけど、
今でもたまに、こんな奴が北海道を語るのはおこがましいだろう、という気はしている。

僕は別にアイヌの血が入っているわけでもないし、自然が好きになったのも、ほとんど覚えていない。

ただ小さな頃、気づいた頃には、デイビッドアッテンボローの番組に釘付けだったのを覚えている。

ハダカデバネズミが地下でどんな生活をしているのかを子供ながらにみて、「人間」以外の生き物がいるという事を知ったというか…

彼らにも彼らの生活があるのか、と。

家のマンションを出たすぐのところには、アリが行列を成していて、僕は外に出ると、必ずアリの巣を眺めた。

幼馴染のゆりかちゃんに声をかけられても、毎日アリに釘付けだった。

ハダカデバネズミの映像は、アリの巣の中までもを想像させてくれたのだ。

その時僕は、アリを眺めていたけれど、心の奥にはハダカデバネズミが同列で並んでいた。だから僕が虫を愛していて、動物を愛していることは、しっかりとイコールなのだと、今では思う。

Survive:シマフクロウ

バイトを終えて戸締まりをすると、外はひんやりと冷たくて、息は白かった。

みてみると、店長よりも、僕の方がずっと厚着で、その格好にも笑われた。

「道民は家が二重窓であったかいから、家から出ないんすよ、、」

と言い訳をしながら、自分の車の方へ向かう。

エンジンをかけ、ウォッシャー液を出しながらワイパーを動かすと、液体がたちまちシャーベット状になってしまった。

「12月の埼玉は北海道よりさみぃよ、」

ガクガク震えて、
車の暖房に手をかざして。

「年明けはみんな何してるのかなぁ。」

暖房のよく効いた、
暖かい家。

札幌の雪はさておき、あの家が恋しい。

さて、今日は湯船に浸かって

撮影の計画を立てようかな。

今頃、シマフクロウが舞っている時間だ。

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