つぶやきから生まれた物語④
2023/1/13のつぶやき
2人の歩幅は違うけど
目的地へは一緒に着こう
手を引く僕と
早足の君とで
♥*:;;;;;:*♡♥*:;;;;;:*♡♥*:;;;;;:*♡
"諦めたらそこで試合終了だよ!諦めたらそこで試合終了だよ!諦めたら" んっん〜…!
懐かしいアニメが映画化された影響で目覚まし用の録音が変えられていた。
早朝から力一杯の励ましを彼女の声で受けるのは嬉しい反面ちょっぴり照れ臭い。
「明日は大切なプレゼンなんだから絶対に寝坊しないでよ?」
プレゼン…まあ確かにそうか。
「お父さんが蒸発した時にさ」
「どうしたの急に?」
「うん、お父さんが蒸発して工場を手放したって話はしたじゃない?」
「うん」
「その時にね、母さん秘密基地守れなくってごめんねって泣いたの」
「秘密基地?」
「私も子供の頃はいつも工場で遊んでいたから何となく分かるんだ、秘密基地感」
いなくなってしまったお父さんの事、子供の頃に遊んだ工場の事、責めもせずごめんなさいと呟くお母さんの事。
たっぷり思いを巡らせた後に彼女は僕を見つめて言った。
「だからね、お母さんにはこの先ずっと笑顔でいて欲しいんだ」
そんな彼女との会話を頭の中で何度再生しただろう?
『お父さんの秘密基地守れなくってごめんね』
自分達を捨てていなくなってしまった事を責めもせずにそう呟けるお母さん。
そのお母さんと寄り添いながら生きて来たからこそ、彼女はあんなにも人に優しい眼差しを向けられるのだろう。
"諦めたらそこで試合終了だよ!諦めたらそこで試合終"
スヌーズ機能で鳴り出した目指しを止めて僕はスーツに着替える。
滅多に着ないものだから、ネクタイひとつ結ぶのにも時間がかかるけど、今日は大事なプレゼンなのだから身なりはキチンとしなければ。
お父さんの秘密基地は確かに守れなかったかも知れない。
それなら僕は、彼女とお母さんの為に小さな宝石箱を贈ろう。
お母さんがずっと笑顔でいられる様に、彼女がずっと笑顔でいられる様に。
今日は大事なプレゼンだ。
結びの言葉は決まっている。
「娘さんを僕にください」 end
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