たぶん5分の物語⑤
Feel the spring
「ねぇねぇミク、カズミ達が矢野先囲んでるからウチらも行こう」
「あっ!ちょっと待って、ママこれ持っててよ」
「未来、カズコが待ってるんだからね」
「はっはぁい!」
あゝもう全然終わらない。
まぁ一生に一度の事だから仕方ないか。
そう言えば、お母さんも今の私みたいにため息つきながら待っていたのかしら?
女手ひとつで大変だったろうなぁ。
決して優等生では無かっもんね私。
あの頃は当然のように毎日を楽しく過ごしていたけど、当たり前の事では無かったんだなって、娘を持って初めて分かることが沢山ある。もっと感謝しなければいけなかったのに、馬鹿だったなぁ…。
今の私は、あの頃の母さんの様にちゃんと親になれているんだろうか?
「ママ、由美も一緒に連れてっていい?」
「カズコの店?別に構わないけど、由美ちゃんのお父さんはいいの?」
「うちのオヤジ仕事でどうしても会社に戻らなきゃって行っちゃったんですよね。娘の卒業式だって言うのに酷い親ですよ」
「由美ちゃんはしっかりしているからお父さんも信頼しているんだと思うよ。ちょっと寂しいだろうけど、お仕事忙しいなら仕方ないよ。その分オバさんがお祝いしてあげるから許してあげれば?」
「やったー♪カズコさんとこのパフェ大好きなんですよね」
「今はひな祭り限定スペシャルパフェなんだって。楽しみだよね」
「うわぁ何て甘美な響き〜」
「何それ、由美ったらはしゃぎ過ぎ」
「未来ママご馳走になりまぁす」
「はいはい、じゃあカズコが待っているから行こうか?」
「はあぁい!」
「2人していいお返事だ事」
.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*
「わぁ!可愛い〜何か食べるの勿体無いよね」
「うん、イチゴのお雛様なんて尊過ぎる!」
「あら〜喜んで貰えて嬉しいわ。しっかり味わって食べて頂戴ね」
「あっ!カズコさん折り紙とマジック無い?」
「折り紙?捨てられずに取ってあるお洒落な包装紙ならあるけど」
「あ〜それでいいそれでいい。あとハサミも貸してください」
「何よ工作でも始めるつもり?」
「いいからいいから、ママは黙って待っているのだよ」
「ご馳走するだけご馳走させといてこの扱いってどう思うカズコ?」
「いいんじゃないの、晴れの卒業式だったんだし。それにクルミも私も同じ様なもんだったでしょ?」
「それはそうだけどさ」
「あの時は私もオバさんにご馳走になったよね?」
「お母さんがカズコを無理矢理引っ張って来てさ」
「そうそう、うちの毒親に啖呵を切って無理矢理ね」
「カズちゃんは今日からうちの子にしますから!って」
「あ〜言ってた言ってた」
「誘拐だからそれって後で大笑い」
「ねぇ〜……でも嬉しかったな」
「お母さんらしいけどね」
「じゃじゃ〜ん!ほらママ見てお雛様」
「未来が折り紙上手いなんて知らなかったよ」
「まだまだ由美には見せていない一面があるのですよ。ふっふっふ」
「パフェと一緒に写してTikTok上げよう!」
「あ〜いいねソレ、激映え」
「クルミ、あの折り紙ってさ」
「お母さんが教えたヤツだね」
「クルミが教えたんじゃないの?」
「私は覚えて無いもの、仕事にかまけて碌に遊んであげられなかったし」
「ふ〜ん、何か後悔とかしている感じ?」
「少しね。私はお母さんみたいな愛情をちゃんとあの子に与えてあげられてるのかなって」
「大丈夫じゃない?いい子だよ未来ちゃん」
「だけど将来の事とか真面目に話してくれないしさ」
「将来何てまだまだ早いよ」
「そうかもしれないけど、心配じゃない」
「何が?」
「何がって、そりゃ色々」
「クルミがそんな事いうかね?」
「どういう意味よ」
「クルミも相当ふらふらして心配してたよオバさん」
「ああ、はいはい。昔の事は勘弁して」
「それに、未来ちゃんなら何があっても大丈夫だから」
「何でそう言い切れるのよ?」
「だってオバさんの孫だよ?クルミ以上にオバさんが可愛いがっていた子なんだもの。ちっとやそっとじゃ負けはしないよ」
あゝそうか、私は何を心配していたのだろう。
私がどんな親だろうと、例え情けない親だろうと、あの子はきっと大丈夫。だって……
「そうだね、未来はお母さんの孫だもんね」
end
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