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たぶん5分の物語①

Forever Love

最近何だか彼女がおかしい。
あんなに朝が苦手だった癖に、僕の散歩に付き合おうかな?とか言い出す。
もしかしてバレてる?毎日は危険かな?
気をつけなければ…

最近何だか彼が怪しい。
あんなに出不精だった癖に、毎朝早起きして散歩に出掛ける。
もしかして浮気?それも毎朝?
確かめなければ…

「だから私に付き合えって?マジ勘弁。大丈夫だよ、絶対に浮気なんかしてないから」
「だって、だってだっておかしいじゃない?帰って来るとすぐシャワーを浴びるし」
「散歩で汗かくからでしょ?当たり前だよ」
「私が散歩に付き合うの嫌がるんだよ?」
「だって朝起きるの苦手な人じゃん、時間が無いだけだと思います」
「だって、だってだってだって!」
「ああもう五月蝿いな!付き合えばいいんでしょ?付き合えば」
「ともちゃ〜ん、ありがと〜」
「分かった、分かったからもう泣かないの!」
「うん、頑張る」
「で、決行はいつにする?」
「明日!」
「明日は朝からバイトだから無理、え〜と明後日なら大丈夫かな?」
「じゃあ明後日!」
「ちゃんと起きれる?」
「うん、頑張る」


「あっ!やっぱり浮気してる!」
「ばか、声が大きいよ」
「やっぱり…それもあんなに若い子と…」
「犬の散歩しているだけだよあの人」
「だって彼犬が苦手なのにあんなに近づいて!ほら、笑ってる!あっあっ嘘、犬を撫でてる!楽しそうにお話してる!」
「落ち着きなよ!ほら、あのベンチの後ろにある植え込みまで行くよ。たぶん何話しているか聞けるだろうから」
「ともちゃんどうしよう…私どうしよう…」
「泣いてないで、ほら行くよ」

「でもいきなり声をかけられた時はびっくりしました」
「本当にごめんなさい。変な奴だと思ったでしょうね」
「はい、うふふ。可愛いワンちゃんですねって撫でる人はいるけど、撫でる練習をさせてくださいっていうのは初めてでしたから」
「お恥ずかしい。子供の頃のトラウマでどうしても犬に触れる事が出来なかったものですから。でもお陰様でこうして撫でる事が出来るようになりました」
「これで犬を飼う事が出来ますね」
「はい、彼女はずっと飼いたがっていたのに、私のトラウマのせいで諦めていましたから」

「…だってさ、聞いた?」
「…嘘、私の為に…嘘…」
「だから言ったでしょ?絶対に浮気なんかしてないって」
「私、彼の事疑って…どうしよう…ともちゃんどうしよう…」
「ああもう泣かないでよ。泣くなってば」

「ともこ?こんな所で何してんだ?えっお前まで…」
「あちゃ見つかった。ほら素直に謝りなよ」
「私…私…ともちゃ〜ん」
「何?私任せ?もう本当に世話がやけるんだから」
「どうして2人ともこんな…」
「あのね、お爺ちゃんが浮気してるんじゃないかって心配していたんだよお婆ちゃん」
「浮気?」
「そう、そんでこっそり後をつけて来たら誤解だった事が分かって後悔の涙が止まらないみたいね」
「あなた…ごめんなさい、私あなたの事を疑ってしまって…」
「いや、私がコソコソしていたから…そうか心配かけてしまったね、ごめん」

「素敵なご夫婦ですね」
「あっ、何か痴話喧嘩に巻き込んでしまったみたいでごめんなさい」
「そんな事気にしないで。お孫さん?」
「はい」
「あなたもお二人の様に素敵なパートナーを見つけられたらいいわね」
「いや〜50年連れ添ってラブラブっていうのもちょっと引きますけど」
「ちょっとだけね、うふふ」
「あっやっぱり。実はうちの両親…ごめんなさい…はい、どうしたの朝早くから電話して」
『ともこどうしよう、お父さん浮気しているみたいなの!』

母が大声で叫ぶものだから、電話の声が聞こえたらしい。
お姉さんはお腹を抱えながら、笑いを堪えて肩を震わせていた。    end


某ミステリ作家の某作品のアイデア丸パクリ!と思ったあなた!正解です。もう思い切り潔くオマージュしております。

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