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男子高校生に栄養療法やってみた⑤

1話から読む)

白紙の紙とペンを持って
ご飯を食べる彼の前に座りました

私が目の前にどかっと座り
すこし気まずそうです

「じゃ、聞くね。〇、△、×で答えて。」
私は、彼の食べ物の好き嫌いを
食材ごとに聞いていきました

〇は食べられるもの、
△は食べろと言われるなら食べるもの
×は食べられないもの

×の多さに驚きました
魚は鮭以外全部×です

貝類など、もってのほからしく。

ここには彼の亜鉛不足が隠れているかもしれないと
思いました

そもそも加工品や精製食品ばかり好んで
食べている人は
総じてミネラルが不足しています

ミネラル不足の中でも
日本人にとって深刻なのは
亜鉛とマグネシウムです

亜鉛は特に、体内に2gほど含まれており、
鉄の次に多い微量ミネラルです

前立腺にも多く含まれるので
亜鉛=男性機能と思われがちですが
実際は体内で100以上の
反応に関与する補酵素です
女性にも大いに関係するミネラルです

動物性たんぱく質が
亜鉛の吸収を助けるので、
肉や魚が少ない彼が亜鉛不足なのは
納得です

そもそも、低血糖を頻回起こしている人は
タンパク質を食べることが苦手です。
すぐにエネルギーになる
砂糖や炭水化物を
脳が欲しているのです

なぜ、食べ物の好き嫌いから
彼の亜鉛不足を感じたかというと、
亜鉛というミネラルは
細胞分裂に関与します

舌の、味を感じる「味蕾」の細胞は
他の細胞に比べて細胞分裂が盛んなため
より亜鉛不足の影響を
受けやすいのです

偏食の強い人は
亜鉛不足により味を感じにくいため
ジャンクなもの、味の濃いものを好み
食べ物の好き嫌いが多くなっている
可能性があります

加工品を過度に好むため
さらなる亜鉛不足が助長される
負のループです

実際彼は、とにかく辛い物好き。

辛いポテトチップや
カップ焼きそば、ラーメンを
ぺろりと平らげます

とりあえず、好き嫌いを把握できたので
彼の来る日の夕食は
基本的に彼が食べられるもので
構成しました

甘やかしに思えるでしょうか。

いいえ、私の目的は
「彼の体調を良くすること」です

彼がそっぽを向いてしまったら
元も子もない。

栄養療法で一番難しいところは
ここだと思っています

食事と栄養に興味がもともとあって
食事と栄養のチカラを信じている人だけが
恩恵を受けられる分野であっては
ならないと思っているのです

私みたいに、
藻が入った見た目が川の水みたいな
まっずいドリンクを飲んだり
健康のためだけにグルテンフリーをするような人は
ただの変態であって

クライアントにそれは求められないのです

普段、私が学んでいることは
生理学にのっとって
体内で「実際に起こること」ですが
生身の、「こころ」や背景文化、性格を持った
一人の人間が
栄養療法を実践しようとすることとは

全く別の次元の話なのです

「小麦が副腎疲労にとってダメ」な理由を彼に説明して
「やめようね」と言うのは一瞬で終わります

だけどインスタントラーメンを
いまだに彼はやめられないでいます

それは、彼が悪いのか?
そんな覚悟の無い人は栄養療法の恩恵を受けられないのか

今でもこれは私にとって大きなテーマです

もちろん、
「不調のままいたい人」も
中にはいて、
そういう方のカウンセリングは
残念ながら結果が出ないことがあります
実践に結びつかないのです
(これはその人の潜在意識で思っている場合が多いので、
ご本人は「不調のままいたい」なんてもちろん思っていません)

たとえそういう方でも、
「健康のその先に、あなたは何が欲しいのですか」
という問いにずっと向き合ってもらうことで
変化できるチャンスはたくさんあります

そもそも、「変化を望んでいるかどうか」が
改善のカギになり、
そこに切り込むことも、
カウンセラーとしての私の仕事なんじゃないかと思っています

もちろん、その方のタイミングや
心の変化の責任を
すべて負うというのはどこか違うとは
思っていますが。

ただ彼に関しては
「よし、やっぱりラーメンしばらく止めよう」と
思える日が来ることを信じて

私の大いなるおせっかいは続くのです

彼が私の家に来る日、
私はできるだけ彼と話をしました

成績のこと
両親のこと
私自身の失敗談
勉強ってなんの意味があるのか
学校ってなんの意味があるのか
身体のこと
栄養の知識

あるときは夜の散歩に連れ出して
たくさん話をしました

彼は比較的穏やかな表情で
話に耳を傾けたり
笑ったりしてくれる時もありました

もともと言葉の少ない子ですが
彼はこれから
どんな手段で自分を表現していくのか
そのためのインプットになればいいなと

彼とたくさん話をしました

ホームステイが2か月経つころ

彼は次第に家に来なくなりました


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