舞台「かえってきた璃色リベリオン」感想


前回とは出演者が一新され、チームも1チームという体制での公演。前回の公演も劇場+配信だったが、印象に残っているのは「学力テスト」のシーン。一番盛り上がり、楽しいところでもある。でも、観ている内、これでの勝敗がラストじゃなかったはず、と思い出し、そして助っ人システムもなかったことを確信した。
結果的に、途中で最後の結末を思い出し、色々と納得してしまった。

今回、何人か名前を知っている人が出ていたけれど、その中にあった黒木美佑さんが少し控えめな役だなと感じていた。これまで出演作品をいくつか観ていたけど、そこからすると少し物足りない感が。
そこに助っ人システムが出来たことで、一つの見せ場が出来たわけだが、そこで終わりではなかった。ラスト、予言を使った「間接的な」ものから、自分が参加することでアイドル部を落とそうとする「直接的な」リベリオン行為が明らかにされた。
これで一つ、納得した。

「璃色」とタイトルはなっているが、元々は瑠璃の意味合い。作中でもその言葉は何度も出てきて、花言葉も出てきている。
ラストに出てくる花言葉「あなたを許します」。これはギリシャ神話が元になっているらしい。

瑠璃唐草をネモフィラと言うそうだが、その語源はギリシャ神話にある。
ネモフィラに恋をした男性が「ネモフィラと結婚できるなら、この命を神に捧げる」と言った。すると本当に結婚すると間もなく、命を落とした。ネモフィラは冥界へ足を運び、夫に合わせて欲しいと泣き続けた。それを不憫に思った神プラトンが、ネモフィラを一輪の花に変えた。それが、最初のネモフィラの花と言われ、そこから「あなたを許す」という言葉が出てきている。
神に命を捧げ、許されたのなら夫と会わせても良さそうなものだが、この神話ではそうはならない。許した結果、妻を一輪の花に変えるというもの。
一体、何を許されたのか。その解釈は様々、人それぞれにとれる。

いじめというものは、そういう性質がある。作中でも、「世の中にはたくさんのいじめがあるから」と前置きしているが、いじめの基準は人によって違う。いじめた側はそのつもりがなくても、周りから見たらいじめに見えないことでも、本人にとってはいじめだと感じる。
そして、いじめられた方は決して忘れない。何十年経っても忘れられない。何十年生きてきた人生の中で、いじめられた期間がたった1年であったとしても。

いじめた側が、いじめていたことなど忘れ、普通に話しかける。いじられていた側はビクッとするかもしれない。
せっかく忘れたいのに、そうさせてくれない。存在だけでそう思えてしまう。
もし、いじめられた側が命を断ったとして、その墓前でいじめていた人間が泣き続けたとしたら、果たして神は許すのだろうか。一輪の花に変えて、その隣で咲き続けるようにするだろうか。
ネモフィラの神話が怖いと解釈されることもあるらしいが、そういう意味では、この作品の質そのものが、より深くなってしまう気がした。

この作品が、そんなただの復讐劇の失敗に終わらなくなったのは、今回の助っ人システムがあった。前回は、ラストで神崎が実はいじめていた事を覚えていたけど、なかったことにしようとしていたという言葉だけで終わる。
しかし今回は、助っ人として採用し、他のアイドル部のメンバーから責められる小原をかばっているという描写が追加された。
小原はいじめられていた。そうなると、少し責められることも怖いと感じる場合がある。いじめのフラッシュバックとして。そして、その頃は誰もかばってくれなかったというトラウマもある。それが今回も、神崎がかばっていた。それは贖罪の行動で、フラッシュバックを消してくれる効果もあるだろう。そう考えた時、ラストの「仲間外れにされることが怖かったから」「なかったことにはならない」という言葉からの謝罪に厚みが出る。

神崎もいじめられるのが怖かったのかという気持ちになり、いじめられていた自分ならその気持ちも分かる。仲間外れにならない今は、助けてくれた。それが彼女の本来の姿なのかもしれない。そんな風に思える。そうなると、謝罪も上辺だけとは見えなくなる。
だからこそ「あなたを許します」がより強く、リアルを増したように感じた。

そんな何人か名前を知っていた人がいた中でも、特に注目していたのが優莉奈さんだった。
RAVE塾でその名前を知り、他の団体さんの出演は、配信しか観られていないのだけれど、彼女の真骨頂は、その表情の良さにある。
劇場で観た作品は全てコメディで、テンポの良い作品。その中でこそ生きる表情というものがある。
特に台詞のないところでの表情が秀逸。コメディという作品の質に合わせたのか分からないが、目を激しくパチクリさせ、落胆したかと思えば、また別の表情に変わる。
メインとは外れたところでそういう表情をするので、気が付かない人は気が付かないかもしれない。
ところが、一度気が付いてしまうと癖になる。ついつい、メインの演技ではなく、優莉奈さんの方を観てしまう。それだけ楽しく、可愛い表情をする。
そういう意味ではとても舞台向きだと思う。映像作品では視点が限定され、自分の好きな方に”カメラ”を向けられない。ところが舞台は違う。優莉奈さんが出てくると、そっちを観ることが出来る。
見た目は優等生で、最初はそういう役柄だったが、今回の作品では、飲酒をして教師に追いつめられる。ましてや友達を売る。優等生キャラよりも、こういう役の方が感情が激しく動く分、彼女の表情にも大きな変化が出てくる。
いつも前方席で観ているが、きっとあの表情は遠くの席からでも見えると思う。それだけ分かりやすい。
パンフレットのコメントを読んでも、とても真面目な人なんだなという印象を受ける。話してみてもその印象を受ける。とても緊張してしまう。
そんな人がつくる数々の表情は、まさに癖になる一品。観ていて飽きない表情、何度も観ていられる人はそうそういない。
今回の配信に合わせて、この感想をあげようと思っていたが、その前に優莉奈さんは次の作品に出演。観劇に行ってきたところで加筆している。
今回はスーツ姿だが、その表情は健在。ついつい観てしまう。まだ書けないが、RAVE塾作品とは違うような役柄で、また面白い。個人的には後半、頭を踏みなおす時のセリフの言い方が好き。そしてその瞬間は、逆に無の表情だったのも興味深い。
こちらの作品も配信で観られるらしいのでまた観るが、その前にまずはもう一度劇場へ。
演技はもちろん、優莉奈さんのサインが入ったグッズはまだ持っていないので、何とかゲットしたい。そしてRAVE塾ではないチェキ会ももう一度。今日撮ったものを見ると、物凄くステキな笑顔で、これまた見ると元気が出る。
でも話す時間は、RAVE塾の方があったかも。チェキを撮った後にも話をしている人もいたけど、なんか自分は悪い感じがしてさっさと引き上げてしまった。そういう意味では、RAVE塾の特典会の形もいいなぁと思った。会いたい2人が一緒に登壇されるととても焦るので、そのコントロールだけうまくして貰えれば。そういう意味では今日のチェキ会はうまかったなあと思った。
ちなみにこの作品、以前RAVE塾に出ていた永瀬がーなさんも出ている。またがーなさんと優莉奈さんが一緒にRAVE塾作品に出て欲しいなあ。

さて、RAVE塾恒例の配信が始まる。この配信、とにかく見ごたえがある。本編以外の部分も見ごたえある。プレゼントもあるし。
そして配信でもう一度、優莉奈さんの表情の数々が観られるのは嬉しい。何度も見直せる。映像になっていても、その辺りはRAVE塾さんの配信はカメラワークが良く、毎回きっちり拾ってくれている感がある。
配信を観る人には、是非、優莉奈さんの表情に注目して欲しい。メインとは離れたところでする表情の演技。必見。

そしてまた次の公演も控えている。次の公演は、RAVE塾作品で一番好きな作品のリメイク。さて、どんな形でリメイクされるのか、今回の作品でより期待値が高まった。
まずは配信を観て楽しませてもらおう。


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