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演劇「立ち呑みパラダイス」感想

昨年に引き続き観劇。昨年は、以前一度お会いしたことのある中島明子さんが出演されるという事で観劇へ行ったが、ヒロインの明子さんを喰うくらいにインパクトのあった三姫奈々さんを知るきっかけにもなった。正確には、前から名前は覚えていたけど、ここで一気に印象づいた作品。

今回は、大澤実環さんが出演、それも立ち呑みパラダイスと知り、ワクワクながら待った。
それはつまり、昨年観た作品の中でも、印象に残っていたから。
祝日の移動で19日が休日じゃなくなったため、一回しか観に行けなかったけど、この作品は全く飽きないで観ることができる。

冒頭。バーのシーン。相変わらず、バーのおやっさんが渋くてカッコいい。正直、別の方かと思ったくらい。それだけ、あの教授とのギャップがある。
昨年と違い、コロナの話が出てきた。ワクチン打った?という会話とあの服装からすると、ほんの少し先の話かな、と推測してしまう。
去年のDVDを見たら、「携帯電話禁止」の貼り紙がなかった。そして大阪のシーンには、懐かしさを感じる「塩」の看板や、今ではさび付いた看板のイメージのフコク生命の看板。不思議なもので、あれらのアイテムがあると、昭和レトロ感がグッと出る。オロナミンCの看板があったら最高だったかも。

自分も知らない時代の話。今のような便利さはないけど、活気のある時代だったというイメージがある。今の日本が失ったものではないか、今、必要なのではないかと思ってしまうもの。
それが描かれるからこそ、この作品は魅力的なのではないかと思う。
少なくとも、あの時代を知らない人間にも、あの時代と思われる熱量が伝わってくる。

まあ、はっきり言って、バカな男たちを中心に、バカなことをしている。でも、それがいい。気持ちをぶつけて、時には駆け引きもするけど、ケンカもするし、男も女もなく、強いものは強い。色々な意味で。
今みたいに、思うことがあってもその場では言わず、ネット上で吐き出してそれが変に拡散されて人間関係こじれて…。少なくとも隣にいて、相手の顔も見ないでスマホの画面を見てるということはない。あの時代の人からしたら、頭をどつかれるかもしれない。

そして思うのが、これを映像作品にしたらもったいないと思えること。これぞ、舞台の醍醐味という要素が詰まっている。初観劇作品がこの作品だったら、きっと舞台って楽しいな、また行きたいなって思うんじゃないかと思う。それだけの熱量を、この作品は見ている人に与えてくれる。そしてそれは、創り手にその熱量があり、そして全員が同じベクトルを向いているからこそ、それは何倍にもなり、ユニゾンとなって劇場全体を包むと思う。

今回は大澤実環さん出演で観に行ったわけだけだが、やっぱり彼女の演技には見入ってしまう。演じていた秋山文子という役。19歳ということで、実環さんの実年齢と同じ。
まだまだ新人。仕事の事しか考えていない先輩について覚えている。
とにかく真面目で、素直。熱意もある。でも、仕事から一歩引くと、少しおとなしく、後ろの方にいるタイプ。
そんなイメージの文子を、実環さんはどう演じるのだろうと観ていた。
前半、まず感じたのが、笑顔のバリエーションの豊富さ。
笑顔にも当然色々な種類があるけれど、実環さんの笑顔、一つ一つに言葉がついてくるような印象。とにかく、笑顔がしゃべる。言葉を発する。
だから感情がすーっと伝わってくる。
そしてお決まりのドダバタシーン。成田が倒れるなど激しい場面。全員、カウンターの向こうにいる人たちは面白おかしく笑っているのに、文子だけは違う表情を見せていた。それこそ、心配そうにしている姿は、成田のことをまんざらでもないんじゃない?と思わせる表情もあった。

舞台は観る側が好きなところを観られる。中心でない部分も観られる。映像作品では、カメラ映した範囲内では自由だが、カメラの外は観ることができない。
だから舞台だと、どの位置にいても演技をしないといけない。でも、必ずしもそれを観ている人がいるとは限らない。それでもやらないといけない。
全てが必要なピースで、一つでも欠けたら全部が崩れる。
そんな中で、実環さんは目をひく演技をしている。

だからこそ、スポットライトが当たるシーンだと、よりその表情が引き立つ。
結婚式のシーン。成田は緊張して目の焦点が合っていないのだが、隣にいて同じ方向を見ていて、それは同じように緊張しているかのようにも見える。でも、よく見ると、少し違和感がある目。そして三々九度のシーン。盃をみるのではなく、ついでいる山下の顔を凝視している。当然、後から考えればなんでこんなことになっているんだ、契約のためとはいえこれでいいのかという葛藤をしながらだけど、作品的にはそれを感じさせてはいけない表情が必要。その絶妙なバランスの表情・仕草だったなあと思う。

今回、実環さんが出演ということで、チケットも即購入。おかげで、実質、最前列。そして色々なシーンや、カーテンコールの時に、実環さんを撮るためには絶好の席。
あえてそこに配席してくれたのかと思うほど。
昨年も前説とカーテンコールは撮影OKで、今年もとれると聞いていたのでカメラを用意。スマホを立ち上げている間に撮影タイムが終わるのが目に見えていたので、今回は用意した。良い画質で撮ったら、後処理をその場でするので枚数撮れず残念。でも、かなり質はいい写真が撮れた。目線も何度も戴いた。
思わず、最後、はけていくときに、普段やったことないのに手まで振ってしまった。

しかしこのカーテンコールの時も暖かい雰囲気。劇場の規模も、ファミリー感を出すにはちょうどよかったのかもしれない。これからグッズは買うけど、今年も、本当に楽しませてもらった。力を貰ったおかげで、また前に進む力を貰った。
これから少し疲れた時、落ち込んだ時は、この作品を観て力を貰うことにしよう。


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