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舞台「スペースデブリっ娘」感想

劇場と配信で観劇。
まず、配信のクオリティが高くて驚いた。去年から、劇場と配信で見比べる機会も多かったけど、画質も良く、定点でもなく、すでに商品化されているのかって思ったほど。
定点でも十分満足なのに、しっかりしたカメラワークと画質の良さには本当に頭が下がった。

劇場では最前列だった。最前列ということで、フェイスシールドをつけての観劇。前にも合ったけど、マスクしてて眼鏡が曇った時、フェイスシールドしてると本当に大変。配信が合って良かった。全体図も観ることができた。

スペースデブリは知っていた。そこからすると、宇宙ゴミの女の子になる。
なんか、物凄いタイトル。いつもだけど、あまりストーリーは読まずに行くので、どんな展開になるのか楽しみだった。

元々、今回観劇に行ったのは、石川凜果さんが出演されるからだった。
凜果さんは見た目の可愛さと裏腹に、というか、見た目からは想像が付かないからか、ラスボス的な役が多い。それを知っていると、またそうじゃないかと思うけど、知らないとその意外性に驚くと思う。
今回もその”疑い”を持ちつつ、観劇へ。

物語はスペースデブリの回収業者から始まる。
設定が2076年。近いようで遠い未来。現実からギリギリ想像できる範囲の未来。
それでもファンタジーにならないように感じさせるため、その時代の人間にも親近感を持たせるため、ここから始まったのかと思った。
今は地球のごみが問題。場所を宇宙に変えても、人は同じことをしてしまう。
用が済んだら放り捨ててそのまま。
宇宙は広い。ごみなんか捨てても大丈夫。スペースデブリなんて、別にいいんじゃないかって声も出てきそうな未来。海よりはいいでしょって。
でも、それじゃダメだと警鐘を鳴らし、あまり自分たちと変わらないんだと思わせ、ぐっと身近に感じさせたうえで、ラストへ問題を展開していく始まり。

この話では、アンドロイドと人間の共存が描かれている。アンドロイドも、より完成度の高い、超能力を持った人間という感じ。
アンドロイドと言えば、AIがあっても、人間の感情は持たせられない、持たせることが課題などとよく聞く。
この物語に出るアンドロイド、アイとユウは人間の様に動き、話し、行動する。
失敗をするアイと、優秀なユウ、2人(2体?)だけが出ることで、お互いが際立つ。ミスばかりするけど、憎めないアイ。優秀で文句のつけようのないユウ。
他に普通のアンドロイドは出ないことで、この2人の違いが明確に、より浮き彫りになる。

実社会には色々な人がいて、ここまではっきりと違う人が同時にいて対比される機会は少ないかもしれない。でも、これが人間の縮図。
人間の縮図を、アンドロイドで表現するというところが面白く、アンドロイドが人間に近づいているということを表現しているのが物凄く巧い。

ランクの違いから、ユウは自分がアイに、顧客満足度で負けるわけがないと思っていた。ところが、蓋を開けてみれば、同評価。
ここに腹を立てることが、アンドロイドが感情、特にプライドというものを持っているんだと我々に理解させる。
今の現代でも、同じような事は起こってきた。例えば、学歴だろうか。
優秀な経歴の人と、そうでない人が同期で入社したものの、成績や周りの評価が同じだったり逆転することもある。
特に、対人関係だとそれが出る。優秀で頭が良くて何をやらせてもできる。でも、気を遣えるかというと別だったりする。そしてなにより、人に好かれるかどうか。ダメでも、あいつはしょうがないなあと、周りに思ってもらえたら、それでその人は対人関係がうまくいくことが多い。度を行き過ぎないということもあるけど。

凜果さん演じるユウの難しいところは、ユウが行なっていることは、人の「気遣い」というべきところか、それともそうでないかの線引きを、観る側にどこで引かせるか。
ユウの行なってきたことは、主人を分析し、出てきたデータを元に、マニュアル通りに優しい言葉をかけたり、助言をすること。
人間らしさを見せない優しさ。
徹底的に、機械的に優秀だからこそ、プライドが傷ついた時の人間らしさが引き立つ。

そしてユウがそういう姿を見せれば見せるほど、逆に、アイは人間らしさが引き立っていく。最終的に、アイは宇宙に放り出させる。スペースデブリになる。
そう。
使用済みの機械だから、ごみになる。たくさんの機械と一緒。それなのに、人間らしさが引き立っているから、心が揺さぶられる。
これがもしユウなら・・・使命感溢れるアンドロイドで終わる。
そう思わせるものを、上田さんと凜果さんは創り上げていたし、さすがとしか言いようがない。

上田操さんは、以前、劇団時間制作さんに出演されるということで観に行きたかったけど、都合が合わずに観に行けなかった。でもこれを観て納得。
個人的にはいつか、凜果さんにも時間制作さんの作品に出てほしい…。

アンドロイドを通した人の在り方を描いている。記憶違いなら申し訳ないけど、ユウは劇中で、自分は人形だとはっきり言っている。でも、アイにはそれがなかった気がする。
事実であり、ユウは正しい。ユウが可愛くて、好きになるのも分かる。でも、自分は人形だとあっさり言われる。ここもアイとユウを分ける大きな分岐点だった。

展開的には、デブリっ娘モードを含め、ドタバタと笑うシーンも多く、楽しい雰囲気なのだけど、その裏にあるテーマは大きく、考えさせられる。
でも、これも、配信で再度観たからかもしれない。1度目だと、面白くて可愛くてカッコいい舞台。もう一度観たいなあという気になる作品。
そして2回目を観ると、その意味合いが変わってくる。

楽しみにしていた凜果さんの殺陣シーン。武器を使っての殺陣シーンかと思っていたら、体技による殺陣。この作品で、唯一といえる激しい格闘シーン。無双状態。
それまで笑顔だったユウが無表情になる。淡々と仕事をこなしていただけに、今は全員を倒すことが仕事だと思わせる。
力の入るシーンも、表情を変えずに闘うのがまた怖さを感じさせる。そしてそこに、アンドロイド、人形なんだと思わせるものがあり、ここはやっぱり上手だなと思った。
そして途中、自我を失っているのに、プライドを傷つけられたアイを批判する。深層心理に突き刺さる人間の心理と全く変わらないことも伺わせる。
殺陣シーン、また観たいと思わせるくらいの動き、迫力でした。
個人的には、デブリっ娘モードでの凜果さんも観てみたかった…。

今回、チケットはすぐにとったけど、近くなって来た時に長濱さんの名前に気が付いた。どこかで観たことある。あ、トッキュウジャーかと。
それを意識してなのか、衣装が何回か変わるけど、全部にオレンジ色のものが入っているのは、なんだか少し粋に感じたし、ファンとしては嬉しかった。

今回、応援グッズで「スター」というのも面白かった。メッセージを書けるというのも嬉しかった。応援花とか慣れてないとなかなかためらうけど、こういう形なら頼みやすいし、最後に手元にも送られてきて最高だった。意外に大きくて驚いたけど。

2076年。自分はもう生きていないだろうけど、人は変わらず、アンドロイドと共存している未来が来ていたらいいなあ。ユウがいたら買ってしまうかもしれない。
最後は、そんな未来を夢見ることができた作品でした。


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