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演劇「フェザーズ ~ショートストーリーズ~」感想

初日と翌週の土曜日、それぞれA・Bチームで観劇。
各チーム、1/3くらいの人は名前も顔も知っているというところ。事情があって各チーム1回ずつは確約できて行けたら増やす予定だった。結果、行くことは叶わなかったけど、行けなかったのが、本当に悔しい。これが、全体を観て言える素直な感想。
とても気持ちのいいノンストップコメディ。それだけのスピード感が心地よい。

バスケットボールダイアリーズ
ハーフタイムで起こるいざこざを描いたコメディ。お遊びチームと言われても仕方のない弱小チームの中で、エースは一人、真剣にバスケに向き合っている。
最初に観劇したAチームで、そのエースを演じていたのが三姫奈々さんだった。
バスケをしたい、きちんと勝負して勝ちたい、結果にこだわるエース。勝利への執着心が見えないチームメイトに苛立ちを誰よりも感じている。
口調も荒くなり、その表情は険しい。
奈々さんの演技を観て、名前を初めて覚えた時は、片思いをする控えめな女子だった。確かに、人懐っこい笑顔は可愛らしく、そういう役が合うだろうと思えてしまう。
しかし彼女の真骨頂は、強い口調でどんどんとものを言うような強い女性。そのギャップはとても大きな魅力だと思っている。彼女を台詞の少ない役で使うのは勿体ないなあって思うくらい、たくさんの台詞量で捲し立てるような役。この魅力は、一度観るとトリコになってしまうくらい癖になる。迫力ある演技は素晴らしい。
普段は、「にゃん」とポーズをとる方が似合うくらいなのだが。

このチームは企業の実業団。途中で、見積の修正の電話がかかってくる。差し入れは、得意先に持って行くような最中。取引先から貰ったカキも出てくる。壊れた副キャプテンが、パワポの話をしたり、Excel関数・VBAの事もブツブツと言い出す。

後から思い返すと、なんとなく、会社のオフィスの縮図に見えなくもない。仕事に全てを掛けている人間、仕事よりも社内でもてはやされる事の方が大事な人間、リーダーとして皆をまとめたい人間、あまり喋らずコミュニケーションもとらないけど、いざという時に頼りになる人間、皆が仕事をしやすいようにサポートすることに誇りを持っている人間。後から考えた時、そんなことをふと思ってしまった。

もっとも、観劇しているときは、そんなことを考えている余裕などないくらいに、スピード感あふれて進む。テンポの良さは、それこそ、チームワークが必要で、A・Bともに、とても良いチームワークだったと感じた。

実業団は、決して勝つことが目的ではないともいえる。少なくとも、このチームはそこまでのものを感じない。企業の看板を背負った広告塔。話題になれば、企業の名前が売れればそれでいい。そんな感じ。
だからこそ、輝という存在が出てくる。ソフトボールであれば、汚れたくないからスライディングやダイビングキャッチなどしない。そんな感じ。ロッカーを蹴る音は1人だけ軽く、スポーツしてるの?と思わせる。

Aチームは菜乃華れみさん。れみさんの笑顔にやられた身としては、納得の行く配役。ここで求められているのは、綺麗だけじゃない、可愛いだけじゃない、愛くるしさを持つ姿。言い方悪いが、マスコットキャラ的なキュートさが必要。
ウェーブをしていたのはオタクたちという表現があったが、それが一番的確に輝という存在を表しているように見えた。
そして、れみさんはというと、その役を愛らしく演じていた。彼女の特徴でもある表情の変化をうまく使っていた。それが試合でも見せているのだろうと思うと、ファンが付くのも分かる。一方で、彼女は彼女なりに、どうしたらファンをもっと増やせるかを真剣に考えている。それはバスケの勝利とはかけ離れているし、むしろマイナスかもしれないが、企業名を売りたいと思われる会社の意向とは一致する。だから、このチームには欠かせずいるのだろう。
そんな役を、Bチームは神田緋那さんが演じていた。神田さんは、もしかしたら、初めて演技を観たかも。名前は、配信のアイガクで知って、その時の感想を書いた時などにこまめにいいねをもらっていて、それもあり名前を完全に覚えていた。
ちなみに、菜乃華れみさんの笑顔にやられたのもアイガクだった。れみさんはアイガク以前にも出演舞台を観ていたけど、あまり覚えておらず‥。最近、舞台や撮影会で接する機会があったけど、神田さんはそういうこともなく初めて。実は、楽しみの一つだった。
れみさんの創り上げた輝という人物が自分の中にある中での観劇。
前半は少し台詞が少なく、動きで見せることが必要な輝。そして時々、毒を吐くこともあり、実はそこに少し強い我があることが感じ取れる。
そのあたり、表情が変わると印象が変わるんだなと改めて感じた。もう一度観劇したかった理由は多々あるが、その中の一つが、初めて神田さんの演技に注目して観たかったから。
もう少し、他の役を演じるところを観てみたいと思った。彼女の本当の魅力、武器に気が付くのは、もう少し先かもしれない。
れみさんは、もう何回も観ているからか、会って話もしてその芯のしっかりとしたところも知っているからか、安定感すら感じた。彼女自身は、お腹が痛くなるくらい緊張をしているのかもしれないが、一つ一つの経験が大きな力となり、その少し特異な役を魅力的に仕上げてくるその姿は、今回はどう仕上げてきたかという楽しみがあり、彼女もまた、追いかけたくなる1人である。

そして個人的には寧々の存在が気になる。実は、Aチームで観ていた時にはそんなに気にならなかった。でも、Bチームを観た時、演じていた花沢詩織さんを観た時、その姿がより献身的に見えてしまった。身長もあるかもしれない。Aチームの寧々より、Bチームの寧々の方が、周りに可愛がられているようにさえ見えてしまった。花沢さんは、これまで身長が特徴的となる役はなかった気がするが、今回は結果的にプラスになった気がする。
食べ物に飛びついたり、パクパク食べる演技は、メインとは離れたところで演じられていたが、まるで小動物のような可愛さがある。
一方で、これは計算なのかと思わせるところが。

寧々という役は、スーパーサブだと自分の事を思っているが、控えということに誇りを持っている。ドリンクを配ることもして、献身的な姿も見せる。
彼女はバスケにそこまで本気ではない。どうしてもレギュラーとりたい、そんな野心は見えない。控えということにはあれだけ誇りを持っているのに。
そんな彼女の指はしっかりとネイルが。バスケするのに邪魔じゃない?って一瞬思った。他の選手の手はほぼついていない。Bチームの多摩はついているのに気が付いたけど、それは一度辞めた時の手。前半は分からない。
実は、このネイルが、寧々という人物をよく現しているなと感じた。
バスケの試合はあるけど、控えでみんなを鼓舞するのが仕事。応援という仕事は、バスケに限ったことではなく、色々なところにある。そして、その応援という仕事の方が合っているという人間もいる。
決して、試合にたくさん出たいわけではない。誰かが怪我でもしたらなど、緊急時には仕方がないが、基本は出ない前提。試合が終われば、デートに行くことも考えているかもしれない。彼女の役割はボールを使う事ではない。彼女自身もそれを望んでいない。
そんなことを一発で観ているものに気が付かせる。それがあのネイルだったと感じた。

そして花沢さんは、毎回、細かい役でも話題になることが少なくない。前回、RAVE塾に出演された時は、その歌声だった。
でも、今回、ホームセンターピリオドの貞子は盛り上がっていたが、こちらではそこまでの特徴的なものはない。まあ、撫でられる貞子も初めて見たが。
だが、やはり目をパチクリとさせる姿は、凄く印象に残る。なぜだろう、あの表情は脳裏に残る。
花沢さんの出演作品、振り返るとあまり完全なコメディ作品はなかった。直近のRAVE塾はコメディだが、優等生役で笑に直結する場面は少なかった。アイス屋が印象深いレイザーマーガレットも、本来はコメディではない。
そして今回、コメディという作品枠の中だと、今までとはまた印象が違う。今回は特に愛らしく演じていた気がするが、スポットライトの外で見せるその姿は、気が付いたものだけ微笑んでしまう、そんなところも多かった。その一方で、真剣な表情を見せる時があるから、その対比でどちらも活き活きとしてくる。
もっと自由な役をコメディという枠で与えたら、どんな演技をしてくれるのだろう。
コメディ作品で、低身長を武器にする人たちも観てきた。子供から大人の役まで、幅広い役が回ってきていたのを観ている。そしてシリアスな展開の舞台に戻った時、明らかにそれまでとは違う雰囲気をまとっている。今では、主演を張る人もいる。
花沢さんは、まだ舞台作品での歴が浅いとのことなので、ここから色々な作品に出ることで、きっと飛躍していく。そんな期待感を持たせてくれる人に感じた。多くの作品に出て行ってほしい。

ホームセンターピリオドの事も書きたかったけど、ここまででずいぶん書いてしまったので、ここで一端終了。また時間をみて書こう。

しかし、今回は台本買わないぞーって思ってたのに、観劇してしまうと買ってしまう。
松本さんの作品は、どうしてもそうなってしまう。
だからまた観に行ってしまうんだろうなあ。
また次回が楽しみ。


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