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星ひとつの長文レビュー 【エッセイ】

昨年9月、総合BL情報サイトちるちるにて「不朽の名作BL2022」の読者投票が開始された。コミック部門、小説部門に分かれており、それぞれ50作以上の名作の更に頂きに立つ名作を決めようという、なんとも血のたぎる祭りだ。
「不朽の名作」と銘打つだけあって、ノミネート作品のどれもが有名で、半分程度は履修済みだった。
溺愛する作品をもっと多くの人に知ってもらいたい、敬愛する先生方を少しでも上の順位に押し上げたい。そんな気持ちから、僕もそれぞれ2票ずつ投じさせていただいた。

年末にその結果が発表され、僕が特に推したかった作品、日高ショーコ先生の『憂鬱な朝』はコミック部門第3位にランクイン。素晴らしい、おめでとう!!と心から拍手を送りたい気持ちと、もう1個、さらに1個順位を上げてあげたかった!!という悔しさとが入り混じる。
いやそもそもが錚々たる作品の並ぶ企画だった。全ての作品に1位をあげたい!!と偽善者の皮を被って、順位についての話を終えたいと思う。

先に、ノミネート作の半分程度は履修済みと書いたが、それはつまり半分程度は未履修ということだ。よってこのお祭りは「自分は知らないけれど界隈で名作と呼ばれている作品」を検索するツールにもなるわけだ。
対象は商業BLなので、当然、売上アップが目的とされているのだろう。僕のような男は飛んで火に入る夏の虫。いやしかし、そこはただの火中ではない、光り輝く素晴らしき世界のはずだ。というわけで、ノミネート未履修の中からいくつかピックアップして、年末年始の楽しみにしていた(ちょろい)

その中から、今日の話題にしたいのは、みやしろちうこ先生『緑土なす』(リブレ)
小説部門の7位にランクインした作品だ。

イラスト:user先生

現在、第5巻まで販売されているが、メインストーリーは上の画像の2巻で完結している。
……ということを先に知っていれば良かったのだが、僕は勝手に1巻完結のシリーズと勘違いしていた。だってだって、第1巻は594頁、第2巻は584頁もあるんだもの! 現代のBL小説で、まさか1200頁でひと続きの作品があるなんて、まったく想像していなかった。

感想文でも書評ではないので詳細は控えるが、簡単にあらすじを述べると、世紀最後の王族と、何も知らず世間から隠れて生きてきた王族庶子の、禁忌とも言える血族間ラブストーリーだ。
非常にスローペースで愛を育んでいく2人を見守っていく第1巻。しかし唐突に佳境が訪れ、怒涛の展開を見せ始めたところで「第2巻へ続く」の一文を目の当たりにした。お優しい方、その時の僕の気持ちをどうぞご想像ください。そこまでも充分面白かったので倦む気持ちはなかったけど、なけなしの時間を読書にあてている身としてはまあまあキツかった。笑
第1巻とは打って変わって、ダイナミックな展開で読者を惹きつける第2巻。こんな大長編と知っていたら読み方も多少変わっていたかも、と残念に思いつつ、全編通して作品の世界観に浸り、その筆力と構成力に舌を巻きました。大満足です。

読み終わってから、帯の一文に気付いた。
「誰もが認めるWEB発BLノベル屈指の傑作がついに書籍化!」
なんと! WEB発だったのか!! どこまでも鈍くてアンテナの低い自分……はさておき、どのサイトで連載されていたかを確認したところ「小説家になろう」だった。
正直「なろう」で作品を読んだことはあまりなく、異世界転生モノが多くて漫画化・アニメ化しやすく現代ウケするものが多いくらいの知識しかない。
BLのこんな良作が輩出されているとは思いもよらなかった。さらに言えば、WEB小説では好かれにくい、序盤の展開がスローな作品がこうして人気を博したことにも驚きだった。
連載当時にどんな反響があったのかは分からないが、WEB上でずっと応援し続けたファンはきっと慧眼の持ち主だったのだろう。

読後に密林のレビューを見たところ平均星4.7で納得。その中に星1をつけている長文のレビューがあったが、「登場人物のあいつがキライ」とか「ここのこの展開がツライ」とか詳細に書かれていて、低評価を付けつつもすっかり物語に没入させられてることに笑ってしまった。

WEB小説、特に連載作品は、読者との距離が非常に近い。反響は目に見えて分かるし、少しでも冗長になり退屈しようものなら、読者はあっという間に離れていってしまう。書き手はそれが恐ろしい。
だからか小手先のテクニックが跋扈しやすい業界だと思い込んでいた。しかし必ずしもそうではなかった。そしてBLには構成において決められた型もあるものだが、遵守しなければ読まれないわけでもないことも知れた。

『緑土なす』著者のみやしろ先生、イラストレーター、出版社に感謝。良作を世に顕してくれて、掬い取って世に出してくれてありがとうございます。存在を知るきっかけを作ってくれたちるちるの企画にも感謝。参加するきっかけを作ってくれた『憂鬱な朝』著者の日高ショーコ先生にも大感謝!!!

と、妙なハイテンション。人類愛を謳い出す前に締めたいところだが、とにもかくにも、この話題で最もほほえましかったのは、本当は作品大好きなクセに星1つしか付けなかった長文レビュアーである。もう、素直じゃないんだから♡

書き殴っただけの雑文で失礼しました。

#エッセイ  #BL #小説

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