おかえり【詩】
「おかえり」
はじまりの茶畑に
遊具の錆びた公園に
校舎へと続く上り坂に
朝霧よ あなたは
何度でも立ち現れた
遠く後ろにいるようで
いつの間に先回りしたのか
往こうとするわたしの手を引き
また連れさらっていく
幼さの生きていた場所へ
ひとたび白霧に包まれたなら
その足を止めざるを得ない
往くことと生きることを
取り違えた迷い子よ
立ち止まることは怖いだろうか
たたずむことは悪なのだろうか
ここではもっと
やさしい言葉が聞こえてこないか
茶の木はどこへも往けないが
往かないが 人より
多くを見てきたはずだ
往くばかりで見ることを忘れ
孤独になった丈夫の替わりに
朝霧のひと粒ひと粒を
友として迎え
友として送り出し
ささやきを世の灯し火として
今もこの胸に息づいている
*
#詩 #ポエム #創作
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