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#私の最愛海外文学10選

X(旧Twitter)で #私の最愛海外文学10選 のタグがあったので遊んでみたら、小さな反響をいただいた。作品と自分との関係について、つれづれなるままに書いてみようと思う。

『シッダールタ』ヘルマン・ヘッセ

おそらく『車輪の下』でヘッセに興味を抱いて、2作目に手に取ったのがこれだった。手塚富雄訳を3冊、高橋健二訳を2冊、もしくはそれ以上持っている、揺るがぬマイ・ブック。単純にいつも物忘れがひどいだけかもしれない。

『ガラス玉演戯』ヘルマン・ヘッセ

牧歌的理想郷を描いた最高峰の作品だと思っている。主人公ヨーゼフ・クネヒトは「ガラス玉演戯」のエリートで名人なわけだが、これがいったいどんな演戯なのか、どんな芸術なのか、分かりそうで分からない。そのもどかしさがまた面白い。

『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ

長年ロシア文豪の大長編に苦手意識を持っていたが、なんとか読破できた記念の作品。新潮文庫上中下巻のうち、実際にしんどかったのは上の半分くらいまでで、その後は一気読み。リョーヴィンの農業生活はひたすら推せる。

『ヴェニスに死す』トマス・マン

ご時世的に良くないかもしれない。ただアッシェンバッハが旅先で少年に掻き立てられたのは、単なる劣情や美への陶酔だけではないと思っている。もっと呪術的で、非合理的な何か。とはいえキモいジジイの話であることに違いはない。

『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド

文学の力に触れた、という点においてもっとも衝撃的な作品だったかもしれない。ラスト、放埒とナルシシズムの末路なんてこんなものか、と納得しかないのだが、ドリアンはこれで良かったのだと憧れの残り香が立ち上る。

『ファウスト』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

あらすじを振り返っていて、今こそアニメ化じゃない?って思った。全能感をこじらせた男が異世界転生して快楽をむさぼった挙句、悪魔との賭けに負けてかつての恋人に救われる、う〜ん、さすがにちょっと古いか。

『ナラ王物語』

インドの神話『マハーバーラタ』の挿話のひとつ。タイトルとは裏腹に主役は王妃ダマヤンティーである。ここで描かれる妃は、美しく聡明で果敢であり、加えて「主体的」な存在である。近現代のインドの女性観を覆す、最古の物語をぜひお勧めしたい。

『ルークリース陵辱』ウィリアム・シェイクスピア

シェイクスピアの物語詩のひとつ。戯曲やソネットとは違い、言葉とレトリックが畳み掛けるように重々しく胸を押し沈めてくる。男の性欲の背景に、男の(つまらない)矜持や(つまらない)嫉妬が隠れていることが巧みに描かれている。

『草の葉』ウォルト・ホイットマン


作者が42年の間に10回も改訂増補を行なった詩集。その激しい妄執には、僕も詩人の端くれとして尊敬せざるを得ない。ポリフォニックな詩藻が、読むたびに違った心の掴み方をしてくる。

『ルバイヤート』ウマル・ハイヤーム

不遇な人々にやたら飲酒を勧めるペルシア語の四行詩集。さして呑べえでもない自分に響いてくるのを不思議に思っていたら、ここでの飲酒は信仰の暗喩とのこと。いわゆる神秘主義。いや別に信仰心があるわけでもないのだが。


#文学 #小説

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