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フリーライティング#8 シャーデンフロイデ

【フリーライティング#8】
 2023/5/9 p.m. 10 min.

先日『Village』という映画を観てきた。藤井道人監督、主演は横浜流星。大規模ゴミ処理場を有する閉鎖的な村に住む者たちの人間ドラマで、メタファーとして能の舞台を重ねながら描かれていた。

【ネタバレ注意】なのだが、主人公である悲運の青年は、罪人である父親の亡霊から解き放たれようと努力し、一時的には社会的成功をおさめるものの、最終的には父親と同じ罪を繰り返すことになる。人生の無慈悲さをとことん味わわされる作品だった。

これを観た人たちはいったい何を思っただろうか? 横浜流星は普段のような清潔感バリバリのイケメンではなかったがそれもまた良かった。黒木華はなんかエロかった。……いや、そうじゃなくて人生の無慈悲さを味わった経験のある人ってどれくらいいるのだろうか? またそれはどれほどの深さでどれほどの時間だったのか。僕は割と絶望しながら生きてきたつもりだが、正直この映画ほど救いがないわけではなかった。

不幸を比較するな!、と怒っている人たちをよく見かけるが、僕はそのためにフィクションがあるのではないかと思う。つまりシャーデンフロイデ(他者の不幸を喜ぶこと)を現実の人間に向けるのは良くないが、フィクションの人物に対してなら構わないだろう、ということだ。
「スケープゴートを立てるのも創作の役所なのだ」と、この映画は無慈悲かつ慈悲深く説いているように思えた。


#フリーライティング #日記 #エッセイ

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