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Heliar 40mm f2.8試写

薄いレンズが好きだ。

どれだけカメラがコンパクトになっても、写りの良さを優先すれば、レンズは大きくなる。ITジャイアントたちが力を入れている「コンピュテーショナル・フォトグラフィー」の発展は喜ばしいし、どんどんイノベーションが進めばいいなと思うが、光学はコンピュータ科学に比べると古い技術なので(古代ギリシャにはすでに研究が始まっている。アルキメデスとか)、飛躍的発展があまり望めない分野なのだ。

だからこそというべきか、逆にいえば、というか。薄いレンズというのは一定のニーズがあるので、各社少しずつは作っている。いわゆるパンケーキレンズというやつ。

今回購入したのはフォクトレンダーのHeliar 40mm f2.8。ぼくはマニュアル・フォーカスが全然苦にならないし、オート・フォーカスを諦めれば、必然小さくて薄いレンズを選ぶことができる。もちろんカバンでの収まりもいい。Heliar 40mm f2.8はまさにそういうレンズで、3群5枚だけのレンズで構成されている。いわゆるトリプレット構成。とにかく小さい。ちょっとだけ沈胴もする。最高。そういうの好き。値頃なものを見つけたので、すかさず保護した。小さいので家族にも見とがめられにくいのも、いい。

(ちなみにこのレンズを買う前は、ライカがミノルタと共同開発したSummicron-C 40mm f2を常用レンズとして使っていた(Leitz Minolta CLの標準レンズ)。常用というか、平日にカバンに入れて持ち運ぶ際につけっぱなしにするレンズのことね)

このHeliar 40mm f2.8はものすごく変わったレンズで、沈胴するくせに、なんとヘリコイドがない。つまり、前にも後ろにも繰り出せないのだ。よってピント合わせという概念がない。マウントはMマウントなので、退役して防湿庫で余生を送っているライカM6とはに嵌めることはできるが、ピント合わせができない。f16くらいまで絞ってスナップ的に使うくらいしかできないのだ(そのうち一回使ってみようと思うが)。

フランジバックが短いミラーレスカメラが出てきた頃から、「マウントアダプター」というのが流行りだした(フィルム時代もあったけど)。結果オールドレンズ市場に注目が集まり、特にライカのレンズの価格が暴騰したりした。ぼくもA7IIを使っていた頃、Hawk's Factoryという台湾のメーカーのアダプターを買って、Mマウントとか、新宿中古カメラ市場あたりで拾ったライカマウント(シグマとライカとパナ三社連合のLマウントとは別ものね)、M42マウントのレンズで遊んでいたのだが、このアダプターが素晴らしいのは、なんといってもヘリコイドを内蔵しているところ。たぶん、ヘリコイド付きマウントアダプターのメーカーとしては老舗だと思う。いまは焦点工房なども作っているようだが、当時はほかに選択肢がなかった。

このアダプターはヘリコイドが内蔵されているおかげで、レンズ自身の繰り出し量以上にレンズを前に出せるので、最短合焦距離の長いレンジファインダー用レンズでも寄れるのだ。これは本当にありがたい。レンジファインダーのカメラでテーブルフォトを撮るなんていうことは考えられなかったが、普通は最短距離が1m程度のライカのレンズで、50cmとか40cmくらいまで寄れる。

Heliar 40mm f2.8に話を戻すが、このレンズはヘリコイドつきマウントアダプターで使うことを想定して設計されているのだ。便利そうなので、いい玉があれば買おうと思っていた。

以下、フォクトレンダーのウェブサイトからフィーチャーを拝借。

・トリプレットタイプの発展形である3群5枚の伝統的なレンズ構成を、最新の光学技術で再構築。名作レンズを発展させたレンズ設計により、描写が硬くならず、心地よい写真を生み出します。
・Eマウントボディーに最適化された最新の光学設計で、画質を徹底的に追及。
・ニッケル仕上げのストレート型フード、ブラックのドーム型フードの2種類を同梱。使用目的や気分に合わせてコーディネートできます。
・特別なアダプターなどを必要とせずΦ37mmのフィルター装着が可能。様々なフィルターを取り付けての撮影が楽しめます。
・35ミリ判フルサイズに対応する、余裕のイメージサークルを確保するとともに、一眼レフ用の交換レンズと比較して非常にコンパクトなスタイルを実現。
http://www.cosina.co.jp/seihin/voigtlander/accessory/adapter/40mm-f2_8/index.html

ということで、撮ってきた写真を少しばかり共有します。撮って出しをPhotoshopでリサイズしただけです。さすがに「すみずみまでシャープ!!」と感動するほどではないが、モダンな写り。これまで常用レンズだったSummicron-Cは色収差が気になっていたが、これはほとんどなさそうである。

と、いうわけで、なかなかいいレンズを手に入れた。相変わらずSigma fpちゃんがチラチラしてくるのが困りものだが。

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