砂の王(詩集 届かない手紙)
別れてからあなたは砂になる
わたしは砂漠の王になり
月の明るい夜は
ひとり
呪われた夢に魘され続ける
なぜまだ生きて召命にあずかることもなくみわざのかけらうつくしいものただしいものきよらかなるものをさし示すこともなくなぜここにこのままで永遠のごときこのすがたこのこころこのたましいをしばられてつながれてここにつながれたままそのとき死すべき器を抱いてすこしも祈りたくないいやされてはならないつぐなふべきにはあらずとうそぶいてゐるひとりのをとこをつづけねばならぬのか
なにかしらそのために祈ることは祈りを美しいかたちから遠ざけるのです
醜いかたちで祈りつづけることははたして祈りのうちに属するのかと問うてゐるのです
単身者=生物誌に記されざる者
悲しみの連鎖が永遠の傍らに横たはる
ここにはない あなたの不在を確かめる肉体といふ囲い
欲望の美しい囲いを抜けて自由にはばたくことをひそかに約し約された
こころが凍みる
光は天使たちのいばりのやうにほとばしる
(以下略)
※ 全文は、「詩集 届かない手紙(有料記事)」に所収
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