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マスクを720時間使用すると『マイクロプラスチックの吸引リスク』はヤバくなるのか?

どうもこんにちは。
マスクオタクです。

前回の記事でマスク着用時のMP(マイクロプラスチック)吸引に関する研究を取り上げました。しかし個人的な感想としては『マスクの漏れ率が大きい条件じゃあまり意味なくない?』という感じでした。

ということで、今回は異なる条件での研究を取り上げてみたいと思います。

ただ、今回もいまいち…。
あまり良い研究ではない気がしますが取り上げておきます。


◆論文引用

対象の論文から概要のみ抜粋引用します。あとで簡単にまとめてますので飛ばしてもOKです。論文のリンクは以下。(本記事における引用部および図表はすべて以下から 2024.04.22 時点のものです。)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389420329460#tbl0005

COVID-19: マスク着用によるマイクロプラスチック吸入リスクの性能調査

Journal of Hazardous Materials
Volume 411, 5 June 2021, 124955
https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2020.124955

概要

コロナウイルス感染症2019の世界的流行により、フェイスマスク着用は世界的に新常識となっている。マスク着用によるマイクロプラスチックの吸入はほとんど報告されていない。本研究では、一般的に使用されている様々な種類のマスクを用いて呼吸シミュレーション実験を行い、マイクロプラスチック吸入リスクを調査した。また、様々な処理工程を経たマスクの再利用によるマイクロプラスチック吸入についても検証した。サージカルマスク、コットンマスク、ファッションマスク、活性炭マスクは繊維状のマイクロプラスチック吸入リスクが高いが、すべてのマスクは想定される使用時間(4時間未満)であれば、一般的に暴露を減少させる。N95は繊維状のマイクロプラスチック吸入リスクが低い。異なる消毒前処理工程を経たマスクの再使用は、粒子状(例えば粒状のマイクロプラスチック)や繊維状のマイクロプラスチックの吸入リスクを高める可能性がある。紫外線消毒は、繊維状のマイクロプラスチックの吸入に対して比較的弱い効果を示すため、微生物学的見地から有効性が証明されれば、マスクを再使用する際の処理工程として推奨できる。N95マスクの着用は、非着用に比べ、球状のマイクロプラスチックの吸入リスクを25.5倍減少させる。

COVID-19_ Performance study of microplastic inhalation risk posed by wearing masks - ScienceDirect.html
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[2024.04.22 引用]
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389420329460#tbl0005

◆まとめ

研究ではマスク使用によるMP(マイクロプラスチック)の蓄積量を調査しています。最大720時間!もちろんヒトではなく実験環境によるものです。対象は『7種類のマスク』と『マスク無し』。結果はなぜか『繊維状のMP』『粒子状のMP』でわけられていました。

使用されたマスクの画像とそれぞれの結果を以下に引用します。
(表中の赤枠は私によるもの。)

試験対象となったマスク7種
繊維状のMPの蓄積量(数値は個数)
赤枠は No mask を上回っている部分
粒子状のMPの蓄積量(数値は個数)

◇◇◇

論文の大雑把な結論としては以下になるかと思います。

・繊維状のMPについては、短時間(4時間未満)の使用ではすべてのマスクでノーマスクよりも吸引数は少ない。ただし、長時間使用の場合はN95を除き多くなる。

・粒子状のMPについては、すべてのマスクでノーマスクよりも吸引数は少ない。特にN95マスクでは大幅な減少を示す。

・総数で見た場合、720時間使用でもマスク着用のほうがMP吸引リスクは低い。


◆所感

以上の結果をどう解釈するべきか。

素直に『繊維状のMPはマスクから分離したやつで、粒子状のMPは環境中の濾過できなかったやつ』と考えればいいのかもしれないですが、なんとなく引っかかる部分がある。

◇◇◇

たとえば、以下は捕捉したMPの素材(a)と大きさ(b)の内訳ですが。

素材の『Unknown(不明)』が多すぎる気がする。それはまあ環境中の謎なやつだとしてもサイズが大きすぎる。

サイズについては最小でも20μmからとなっていますが、花粉が30μm程度であることを考えると流石に不織布マスクだったら大部分が濾過出来てるんじゃねえの?という疑問。

ちなみに、メルトブローンやスパンボンドの繊維径を考えると、小さいもの(20μm以下)でかなり捕捉漏れがあるんじゃないかと思いますね。

◇◇◇

あと実験装置。
こんなやつを使用しています。

なんか雑じゃないですかねコレ。

パッと見で気密性が怪しいですが漏れ率の確認はされてないようです。隙間が生じていて普通に外気を何%かそのまま取り込んでた可能性は否定できないでしょう。

また、マスクに締め付けの力が加わっているように見えますが、これにより繊維にダメージを与えている(分離しやすくなっている)可能性もありそう。

◇◇◇

ちなみに、比較対象となっている『No mask』の環境が一般的なものなのか不明なので結果の解釈も難しい。もっと汚染された環境でやればマスク有利になるだろうし、逆であればマスク不利になる。おそらく。

そんな中途半端な事をするくらいならクリーンルームでやってマスクのみの影響を調査するか、環境中のMP分析(素材、大きさ、濃度)をやって、それと比較するべきではなかろうか。


◆おわりに

ということで、取り上げた研究はいまいちな内容に思える。特に一般的な環境と比較出来ているのか謎なのが残念。

『有害物質が含まれる(ゼロではない)』という点でマスクが危険だという意見を見ることがありますが、通常環境との比較があってこそでしょう。

◇◇◇

以上、今回の結果は色々と怪しい点はありながらもN95マスクはかなり良い成績なので『良いマスクを適切に着ければ環境からのMP吸引リスクを下げる』という可能性は高そうです。

ただし、マスクからのMP分離が疑われる結果ではありますので、20μm以下の影響が知りたいところですね。それによってはマスクを着けたほうが有害という可能性もあるかと思います。サイズが小さいほうが影響は大きそうなので。

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