【短編小説】水面に触れてべからず(前編)
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「祖父に仕事のことを訊ねると、いつも「オレは迷宮の番人だよ」と微笑まれる。そして横にいる両親は複雑な顔をして、話題をそらしていく。当たり前だけど祖父は別にファンタジー世界の住人でなければ、牛頭の化け物でもないが、やはり伝説の中にはいた」
「彼は中央人工知能犯罪予防対策部の刑事だった。いまでこそAI管理時代の黎明期を縁の下で支えた名も知らぬ功労者だと再評価されてるが、当時では彼女の父親にそう自己紹介したら「税金ドロボウめ!」と怒鳴られては塩まで撒かれるほどのハズレくじ部