夜に駈ける

夜のドライブが好きなのである。
それはもう昔からだ。
ドライブ自体が好きなのはもちろんなのだけど、さらに夜、と言うのが好きなのである。


何か悩んだり思い詰めたりする時、あてもなく車を走らせる事が多い。
車の中というのは完全な自分の空間なのに、外の景色も匂いもぐんぐん変わっていく。

見知らぬ風景、
見知らぬ街並み、
見知らぬ香り、
そんなものをただただ、味わいたい時がある。

昼間も景色良好で良いが、夜に一人でドライブする物悲しさは格別なのだ。
走った道、走った場所、走った季節、その時の状況は違えども、夜のドライブを思い出すたび、いつでもちょっと物悲しい思い出がよみがえる。
あの時はああだった、あの時はああだった、そしてそういう時、たまに泣きながら、あてもなく夜道に車を走らせたな、と、過去の自分を物悲しく思い出す。
それでもここにいて、こうして車を走らせている。
人はもろく弱いけれど、それでも何か得体の知れない強い光があるのだ。
夜道を悲しく走っていた昔の自分に、いつでも偉かったねと頑張ったねを言いたくなる、だって自分はそれでもここに居る。

つまづく時もある、それでもいつも、心は夜に駈けていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?