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毒親本の盲点〜真の癒しはどこにある?

親=加害者、子供=被害者?

親子問題に関する本やアドバイスが溢れる現代。
特に心理学や精神医学の分野で人気のあるのが、「一方的に親を悪と断罪する」ようなアプローチです。
このような本は売れ行きが良く、多くの人がこれに共感を感じています。
これらは短期間で「自分は被害者であり、正しい」という感覚を与えてくれます。
かくいう私もそういった本をたくさん読んでいたので、気持ちはよくわかります。
実際に、表に出すことすら憚られるような苦しみを吐き出すことができるようになった部分もあり、その点に関しては感謝しています。

しかし一方で、この風潮が持つ危険性についてはほとんど議論されていないように見えます。
親を悪することで得られる安堵感は一時的であり、長期的な解決には至りません。
むしろ、親子の溝がさらに深まる可能性が高いです。

もちろん、歴史的に親が強い立場にあり、子供が弱い立場にあったことは事実なので、このような風潮は一定程度仕方のないところはあるのかもしれません。
しかし、その一方で、親子の問題が単純な善悪の問題でないことは、冷静に考えてみれば誰でもわかるはずです。
本記事では、この問題の背景と、私なりの解決方法について考えてみたいと思います。

なぜ毒親本は売れるのか?

近年、「毒親」をテーマにした本が人気なのは、社会の親子関係に対する認識が変わってきたからでしょう。
歴史的に、親は強い立場にあり、ある面で子供はその言いなりになるのが「当然」とされてきたところがあります。

しかし、現代になって、メンタルヘルス意識の高まりや個人の権利意識が増してきたことで、親が持つ「無条件の権威」が問われるようになりました。
これにより、親による精神的、肉体的虐待やネグレクトが明るみに出る機会が増え、その改善を求める人々が増えたのです。
その結果、「毒親問題」は社会問題として認識され、それを解決する手段としていわゆる毒親本が注目されています。
ただ、この一見すると全く問題のない動きの中に、大きな盲点があったように思います。

一方的に親を断罪する事の問題点

「一方的に親を断罪する」アプローチが持つ最大の問題点は、それが短期的な感情の解放はもたらしても、長期的な解決には繋がらないことです。
毒親本などが提供する「親を責める」スタンスは、読者に一時的な安堵感や優越感を与えるかもしれませんが、それはあくまでも表面的な解決に過ぎません。

また、一方的に断罪するデメリットとして、その過程で子供自身が「被害者」であるという自我に固執し、精神的な成長が停滞する危険性があげられます。
親を悪と決めつけ、自分は正しいと信じることで、客観性を失い、他の解決法や視点が見えにくくなるのです。
その結果、子供は真の意味での自立や成長を阻害され、人間関係全般においても敵対的な態度を取りがちになり、健全なコミュニケーションが難しくなってしまいます。
結局、子供は何歳になっても親というフィルタを通して社会を見るのです。

理不尽な親に苦しんできた人達には、厳しく聞こえるかもしれません。
しかし、そういった人も、かつての私がそうだったように、内心では親を断罪するアプローチに、限界を感じている部分もあるのではないでしょうか?

憎しみへの同調ではなく共感が大事

次に自分自身の経験を語ってみたいと思います。
今振り返ってみると、自分がこの負のスパイラルから抜け出せたのは、同じような親子問題を抱えていたが、それを克服した経験のあるコーチに出会ったことでした。
それまでは、自分の抱える憎しみに同調してくれる人や、元々親子関係が良い人は周りに結構いたのですが、自分と同じような感情をもち、かつそれを克服した人というのはいなかったのです。

その人と出会って、話を聞いてもらっているうちに、自分が抱える人間関係の不安や、親への怒りも克服できそうな気がしてきたのです。
何より驚いたのは、自分が発する親への怒りに共感してくれているのにも関わらず、親のことが大好きで、誰よりも大切な存在だと言っていたことです。
それは、どう考えても本心から言っているようでした。
あの言葉を聞いたときに、自分が長年抱えてきた悩みが解決するのではないかという希望を抱いたことを思い出します。
やはり、自分が進むべき道の先を言ってくれている人がいるというのは大きな安心感になるのだなと思います。

また、精神科医の高橋和巳さんは、クライアントの苦しみをただ聴いて、受け止めることで、問題が解決していくのだということを教えてくれました。
彼の著書、「子は親を救うために心の病になる」や「消えたい」には、そのエッセンスが描かれています。
自分なりにまとめると、高橋さんのアプローチは、以下のポイントが有るように見えました。

  • クライアントに境遇をひたすら語ってもらう

  • クライアントの苦労、親の苦労の両方に深く共感する

  • 誰も断罪しない

  • クライアントが悲惨な境遇を耐えてきたことに敬意を持つ

言葉にすると、シンプルで、凄さがあまり伝わらないかもしれませんが、本を読んでいただくと、悲惨な家庭環境を生きてきたクライアントが変わっていく様子が、リアルにわかります。
自分自身の人生や課題を振り返る機会にもなり、とても良い本でした。

親子関係は一生をかけたテーマ

親との関係性に関しては、自分自身も毎日行ったり来たりして、悩んでいます。
そういう意味で、親との関係というのは、私にとっては一生のテーマなのかもしれません。
今も、ふとしたことで怒りや恨みが湧いてきて、誰かに愚痴を言ったりすることもあります。
ただ、以前のように一方的に親を悪として捉えて、自己正当化をするようなことはだいぶ減りました。
また、それに伴って、人間関係もかなり改善されてきて、人と接するのがだいぶ楽になりました。

前述した通り、人間というのは親というフィルターを通して、世界を見ているように思います。
だから、親を憎めば憎むほど、社会を憎むようになり、結果人間を憎むようになってしまうのです。
だから、もし一方的な断罪をしてしまっている場合、一度踏みとどまって考えてみて欲しいのです。
自分と同じように、親子関係で悩んでいる人に、この記事が何らかの参考になれば幸いです。


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